眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

色彩領域

2010-01-16 | 
哀しみの色は?
 君が尋ね僕が答えた草原の緑
  風が吹きぬけ
   そうして世界に色が宿る
    深緑さ
     深遠なる魂の行き場所
      森の中で空気の酸素濃度を計量する
       鉱物や草木にだって意識はあるのさ
        訳知り顔でささやく僕に
         君は皮肉に微笑んだ
          哀しみの色は?

          それは灰色の壁
         殴りつけた意識は分解された
        粗雑な雑穀をついばむ少年
       未だ飛べない小鳥のように
      空を見上げている
     希少価値のあるアンモナイトの化石が笑う
    仮面の独白
   少女は未来を信じている

 ワインが零れた
カーペットに赤いしみが浸透した
 空虚であり続ける深夜
  ただ君の意識を模索し
   記号の在りかを訪ね歩く
    深夜午前二時
     空間の浸透圧にしたがって
      記憶の断片とアリバイの序曲に身をゆだねる
       僕たちの将来
        意外と不穏さ
         徘徊する偶像
          拘束するあらゆる物を侮蔑した
           ワインが零れる
            どうやらこの染みは消えそうもない
             痛みと君が諦めた
              右肩の関節可動域をさぐる
               模索する範疇に疑念の余地はない

               クリスマスには
              クリスマスにはレノンの詩を聴く
             寒い夜だから
            ロウソクに灯りを灯し
           君の幸せを祈らずにはいられないんだ
          街中の明かりが消えた
         パレードがいなくなる
        あの出店も公園の雑踏も消えてなくなる
       まるで今まで存在しなかったかのように
      色褪せ灰色に幻滅した
     空気の色は?
    仮面の君が尋ねる
   深い森の中
  君の存在が消え去るならいっそ
 白
白銀の障害
 愚かさの無効
  メジャーでひっぱってから白線を流すの
   少女が振り向きもせず孤独を愛した夕刻
    やがて世界が消え去るのだ
     モノクロームの白黒フィルムの擬音で
      哀しき口笛
       駱駝があくびして世界が神経質さでひび割れる
        月の砂漠の夜
         ノスタルジックな幻想は君の長い影
          会いたくて
           会いたくて
            ジョルジョデ・キリコの哀しみの刻印は
             長い影に封印さる
              
              どうして?

               ただ君に会いたいだけなのに

                脳挫傷した交通事故の現場

                 鑑識が回る

                 巡査だ

                逃げろ

               其れが最後の抵抗

              どうして?
             君に会いたくて呼吸を忘れる白
            酸素ボンベに残された表示
           時間の無い世界を
          モールス信号で打電する

         アイシテイル

        ぴーぴー

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メルセデスベンツ

2010-01-14 | 
清潔な眠りのまどろみの中
 虚空を眺め光に手のひらを伸ばす
  まるでストレッチ体操の様に
   筋肉をほぐすのだ
    同様に意識は酒で弛緩させた
     柔らかな月光
      青い色に染め上げられた意味の横顔
       君はまだ17歳で
        とめどない夢に溢れた
         まだ少女の時代

         白濁した蒸気機関の煙突の煙が
          アスファルトの地面と交錯する
           非暴力主義を唱えた世界が
            金と権力にひれ伏した
             金の指輪
              プラチナの首輪の余韻
        
              月の青

             咀嚼しきれない
            唾液を出そうと嚥下体操に余念がない
           螺旋階段の午後
          パンを齧りながら手紙を読む
         メセージは最後通告だ
        ようやく意味を理解したのは15年後
       いろんなパッセージを弾き比べてみた
      スタッカート気味の主旋律
     誰かが笑った
    どうしてそんなにヴィブラートをかけるのさ?

   青い月

  大きなラジカセでハードロックを流した海辺の砂浜

 君の伸ばし始めた黒い髪が風にたなびいた

車に乗り込んだ瞬間
 

 ジャニス・ジョプリンが叫んだ
  メルセデスベンツを下さい。ね、神様。

   僕のおんぼろの車が記憶の残像を走る
    ただひたすらに走る
     追いつけない記憶
      追いつけない影
       君は17歳だった
        僕らははっか煙草を吹かしながら
         ならんで口笛を吹いた
          草原

           木々がざわめく頃合
            いつか大人と呼ばれた

             愚らない

            ささやいた君の世界へのアンチテーゼ
           また電話するよ
          最後の言葉
         虚脱した意識の虚構
        ストレッチをし過ぎたらしい
       筋肉が悲鳴をあげた運動会
      果てしない運動場に引かれた白線は
     いつか化石の標本として博物館に陳列される

    清潔な眠り

   消毒された無害な嘘

 風が今夜は強いから

意識がたなびくのには絶好な機会

 

          ベンツが欲しい

           ジャニスが歌い続ける



 
    
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マイヤーズ・ラム

2010-01-04 | 日記
弟というのは不思議な生物だ。
横浜の弟に電話で
  「煙草買ってきて。」
と云うと、間髪いれず
  「小銭切れてる、100円もってきて。」
と返された。
う~ん。

奴と一年位だけ一緒に暮らしたことがある。
もちろん酒浸りの日々だった。
我々は平日の昼間から、300円払って美術館の常設を眺め(夏の美術館はクーラーが効いている)
公園でホットドックをかじりながらビールを飲んだ。

  空は晴れている。

「兄ちゃん、みんなしあわせそうだね~。」
「おお、あっちでボール遊びしてるぞ!」
「なんかウッドストックってこんな感じだったのかな~?」
「あの犬の散歩している奥様がいいね~。」
「兄ちゃん、酒飲んでるの俺たちだけじゃん。」

家族連れやらカップルやら学生なのか何なのかわからない人々が、思い思いに人生を謳歌している。暑い夏の日、幻想のように世界が回った。たぶん、酔いのせいだろう。
生ぬるいビールはそれでも美味かった。
弟の得意料理は、パンにソーセージをはさみレンジで一分間温めた、名付けて「スペシャル・ドック」だ。ある珈琲ショップのサンドウィチを真似したらしい。
スパゲッティーをフライパンで味ぽんのみで味付けする、僕にはなんともいえないがこれがわりと美味かった。

弟はお洒落に気を使うほうだったし、スポーツもしていたので女の子受けは良かった。
まあ、違いはそんなもんで、やっぱり我が弟よ、お前も変な奴だった。

島から出る時、彼の友人一同は奴の首に派手なレイを巻きつけ、麦藁帽子をかぶせ、泡盛の一升瓶を抱かせとどめに椰子の実を持たせた。
空港で待っていた僕は、ゲートからでてきた奴の格好を見て呆然とした。
     「椰子の実って、お前それどうすんの?」
     「俺が知るか、くれた奴は部屋で育てろって云ってた。」
     「・・・。」

それでしばらく、僕らの部屋には椰子のみが泡盛の一升瓶と共に並べられていた。

酒はなんでも好きだったが、弟はマイヤーズ・ラムをこよなく愛した。
 理由は安くて、しかも効き目がはやい。
  どっかの風邪薬のCMみたいだ。

  「100円、探したぞ。」
  「じゃあ、持ってきて。煙草勝手くるから。」
電話のやりとりはいつもこうだ。
馬鹿が二人。
兄ちゃんは、お前が弟でほんとによかったぞ。

  
  あれからどれくらいの年月が流れたのだろう。








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