眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

眠り

2020-02-27 | 
「愚痴になるけど・・・。」
少女が空の雲を眺めながら呟いた。
白い雲が流れる。世界は球体で回り続けているのだ。夏の日の朝は素敵だ。朝の弱い僕だってそう感じる。
「・・・あのとき、ああしていればよかったって想うことある?」
じっと空を眺めて視線は宙空をまった。
しょっちゅう、そう想っている。
それで。
あなたは罪悪感を感じないの?
 多少、時分が嫌になるね
  どうして、あたしはあんなこと言っちゃったんだろう?

僕は煙草をひっぱり出そうとして、一本も持っていないことに気付く。少女が黙って、銀のシガレットケースのはっか煙草をさしだした。礼をいって煙草に火を点け、深く吸い込んだ。まるで深呼吸をするように。
  君は
   後悔しているの?
  分からないけれど、あんな言葉、口にした自分自身が嫌いなの。
煙草をくわえた少女に僕はマッチで火をつける。
   疲れていたの?
    多分ね。
   疲れていると、ひとは思ってもいない言葉が出るときだってあるさ。
    でも、あたしは思ってるほど優しくなかったの。
    優しくしたいって、こころの底から思ってたのに・・・。
     優しくできなかったの

僕はギターケースからギターを引っ張り出して調弦した。そうして、ヘンツェの「緑の木陰にて」の出だしを弾いた。切ないような優しい、美しい曲だ。

   眠るんだ
    眠る?
   少女は顔をしかめた。
   眠ってどうするの。あたしがあのひとに言った言葉はきえないわ。
    眠りには、

 僕は二本目の煙草に火を点け、ペグの方に差し込んだ。
    眠りにはちからがあるんだ。
    起きたときなは、あたらしい自分に生まれ変わる。疲れがとれれば優しい気持ちも自然とでてくる。

    ほんとうに?
     嘘じゃないよ。問題はただ疲れていることにあるんだ
    少女は僕の方をみて、うさんくさそうに僕の瞳を覗きこんだ。
     よくある宗教みたい
    優しさ教。
   僕はギターを置いて、ソファーを指差した。
  眠ってごらん。疲れをとるんだ。いまの君は脳みそから煙がでてるよ。

 いつもはあなたの頭のほうがけむりだしているくせに
  それから、めずらしく素直に僕のいうことをきいてソファーに寝転んだ。
 僕はもう一度、ギターを弾いて「緑の木陰にて」を思い出そうとした。

    眠りには不思議なちからがある
   
     まどろみから醒めた瞬間

     少女は少女であり少女でなくなるだろう

      生まれ変わるんだ



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