ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 4ページ目 美しい切子のワイングラス

2012-08-22 23:10:15 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【4ページ】


「私はワイン通倶楽部のメンバーなのだが、その仲間の何人かが和音 通を

プライベートワイン会に招待し、テイスティング対決を挑んでいる。

彼らの自慢話を聞いていて、自慢話といっても勝ったわけではないのだが、

私が勝てるチャンスがあるのではと思ったのです。」

「トップソムリエも敵わない和音さんに勝てるチャンスとは?」


桐山は、そんな秘策があるのだろうか?と疑問を感じながら訊いた。


「彼のテイスティング力は、神がかり的とか神秘的とか表現されることが多い。

彼には自然の気を感じ取る力が備わっているとうわさされている。

それは子供の頃、熊野古道で遭難にあって、何日か神が宿る自然の中で

過ごすことによってその力を得られたそうである。」


「うーん」


桐山がうなった。


「トップソムリエも敵わないテイスティング力に自然の気を感じる取る力を合わせ持っている・・・・」

「そんな彼にテイスティング対決を挑んだことがワイン通倶楽部ではステータスシンボルに

なっているのです。」

「たとえ負けてもですね?」

「そうだ。 しかし私は勝つ! それには先生の力添えが必要なのです。」

「私の力添えといっても切子しかないですが?」

「和音さんの自然の気を感じ取る力を先生の切子で逆利用できないかと思ったのです。

今日、先生のすばらしい切子のワイングラスを眺めてそれが確信に変わりました。」



ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 3ページ目 美しい切子のワイングラス

2012-08-20 23:07:24 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【3ページ】


「それは、精神を集中させデザインに命を吹き込んでいるからだと思います。」

「うーん」


鯵元は、何か考えごとをしながらうなずいた。


「ところで先生、二ヶ月後にプライベートワイン会を予定しているのですが、

頼みがあるのです。」

「何でしょうか?」


桐山が訊ねた。


「プライベートワイン会用の切子のワイングラスの製作ですか?」

「ワイン会用の切子のワイングラスの製作依頼といえば、そうであるが・・・・・」


鯵元は、そのワイングラスが実際にできるものだろうかと思い悩んでいた。


「もうすこし詳しくお話しして頂けないでしょうか?」

「プライベートワイン会に招待する方は一名で、和音 通という人物です。

彼は、テイスティングにかけてはトップソムリエを敵わないとうわさされているのです。」

「そんなにすごい方なのですか?」

「そうだ!」


鯵元は、桐山を見つめながら話を続けた。


「そんな彼に無謀にもテイスティング対決を申し込んだのです。」

「和音さんの相手として、超一流のソムリエに依頼されたのですか?」

「いや!」

「ええ? 社長自身で?」桐山は驚いたように叫んだ。




ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 2ページ目 美しい切子のワイングラス

2012-08-14 20:26:58 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【2ページ目】


「こちらのワイングラスは、サッカーと卓球の女子選手のデザインですね?

すばらしい!・・・・・・」


鯵元が賞賛の言葉を発した後、しばらく沈黙が続いた。


「どうかされましたか?」切子職人の桐山が訊いた。


「先生は、こんなにすばらしい切子のワイングラスを製作しているのに、

世間に知られていない。」


赤色のワイングラスをテーブルに置き、青色のワイングラスをもう一度手に持った。


「先生は、伝統的な切子グラスを凌駕する新しい切子グラスを作り出した!

しかしそれらをすべて私がコレクションとして持っている。

先生が、無名なのは私の責任である。」


鯵元は、青色のワイングラスをテーブルに戻し、二つのワイングラスを並べた。


「いえ、最初新しい切子グラスに挑戦した時、職人仲間からまったく受け入れられませんでした。

そんな私を支援していただき、理解していただいたのが鯵元社長です。

こうして新しい切子グラスの製作に打ち込めるだけで幸せです。」

「先生にそう言ってもらえると少し気が楽になります。」


鯵元は、テーブルに並べられた二つのワイングラスを眺めた。


「二つの切子のワイングラスのデザインには、魂が宿っている気がするのです。 

柔道やレスリングやサッカーや卓球の女子選手がオリンピックの会場で闘っている

ようなイメージを受けるのですが?」

切子グラスのイメージ

2012-08-14 20:06:21 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
 家に切子グラスがありますので、画像を掲載させていただきます。





 切子教室の生徒さんが、製作した切子グラスをいただいた物です。






 最後の仕上げは、先生がやってくれたそうで、素敵な切子のグラスです。


 
 切子グラスのデザインは、伝統的なものが多いのですが、人物や風景やぶどう等のデザインの切子ワイングラス

をストーリーに登場させますが、それらに似た切子は実際あるのでしょうか?



 ネットで切子のデザインを見ていて、ひとつ見つけました!

それは、ふくろうのデザインでした。


 

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 1ページ目 美しい切子のワイングラス

2012-08-13 19:45:21 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【1ページ目】     第一話  美しい切子のワイングラス


 食品総合メーカー社長の鯵元は、切子職人の桐山が来るのを待ちわびていた。

鯵元は立ち上がって、切子のワイングラスが並べられているボードのところに行った。


「なんてすばらしい切子のワイングラスだ!」


鯵元は、つぶやいた。


ボードに並べられた切子のワイングラスは、すべて切子職人の桐山が製作したものだ。

桐山は、切子職人として全国的には名が知られていない。

なぜなら彼の製作した切子のワイングラスはすべて鯵元が独占し、世に出回っていないからである。


 そして今日が、桐山が新作の切子のワイングラスを持ってくる日であった。

「旦那様、桐山さんがお越しになりました。」


メイドが桐山の到着を知らせた。


「こちらにお通ししてください。」

しばらくすると、桐山が通されて、部屋に入ってきた。


「先生、お待ちしていました。 どうぞおかけください。」

「失礼します。」


桐山がソファに座ると、早速切子を取り出した。


「おっ・・・・」


鯵元は感嘆の声をあげた。


「今回は、オリンピックをイメージして、闘う女性を描いています。」

「こちらのワイングラスには、レスリングと柔道の女性のデザインですね?」


鯵元は、もう一方のワイングラスを手に取った。