ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 105ページ目 タブレットを操るソムリエ 80年台の当り年   

2013-12-24 23:21:06 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【105ページ】


 秋月は、和音が87年を示唆する言葉を発した時、トラップに

かかったと思ったが、その時表情に出たのではないかと思った。

それで、80年台の当り年のヴィンテージである82年と89年

を示唆する言葉を付け加えたのだ。


「滝川社長、和音さんはヴィンテージに興味がないのですが、

私はソムリエとして興味があります。これは社長の奥さんが

最初に買い求めた1987年のヴィンテージですが?」


 秋月は冷静さを装って、滝川社長に訊いた。

秋月は、滝川社長との事前の打ち合わせで、和音の言動に動揺しないで、

彼のリードに任せてほしいと伝えていた。


「いや1989年のヴィンテージだ。

1987年も考えたのだが、もし妻にもう少しお金の余裕があれば、

80年台の当り年のシャトー・オー・ブリオンを買っただろうと

思って、今夜の2本目としてそれを選んだ。」


 2本目のシャトー・オー・ブリオンを3人で飲み干し、料理も

楽しんだ後、滝川社長がいよいよテイスティング対決の話を切りだした。


「和さん、ワインを楽しんでいただけたでしょうか?」

「ええ、とても!」

「それでは、秋月さんとのテイスティング対決をお願いします。」

「承知しました」