ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 101ページ目 タブレットを操るソムリエ お気に入りのきっかけ

2013-12-16 22:55:32 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【101ページ】


 滝川社長と秋月は、プライベートワイン会用として、1967年の

シャトー・オー・ブリオンを購入したという偽りの情報を流していた

のだが、和音にうまくヴィンテージをはぐらされてしまった。

和音は、ワインを楽しむ時はヴィンテージを考えないと言っているが、

いつもはそれを示唆する言葉を発しているのだ。


「ところで、滝川社長はグランヴァンの中でも特に、このシャトー・オー・

ブリオンがお気に入りだとお聞きしているのですが、そのお気に入りに

なったきっかけを聞かせていただけませんか?」


 和音は話題を替えて、訊いた。


「それは、私が結婚した頃は、ちょうどこの会社を起業して間もない頃

でした。今でいうアウトレット的な商品を世界中から集めて、販売して

いました。」

「ブランド品を安くということですね?」

「ええ、ブランド名にこだわっていました。

最初の頃は稼ぎも少なく、妻にやりくりで苦労をかけたものです。

しかし少ない稼ぎの中から毎月貯金をしてくれたのです。」

「いい奥さんですね」


 和音の言葉に、秋月も頷く。


「あるクリスマス前の休日に、妻と一緒に買い物に行き、私はワイン売り場で、

ワインを眺めていました。その時の私は、1,000円を超えるワインに対して

買うのを躊躇していました。」