ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 138ページ目 第四話 人型ソムリエロボットの実力は? 

2012-06-29 22:48:09 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【138ページ】


 味川は、和音と深川博士のグラスにシャトー・マルゴーを注いで、話を続けた。


「この新しい所有者は、莫大な資財を投入して、畑から醸造設備、貯蔵設備、さらにシャトーにいたるまで

徹底的に改造していったそうです。その結果1978年以降再びメドックのトップに返り咲いたのです。」


「今飲んでいるシャトー・マルゴーはその1978年なのです。」と深川博士が言った。

「和音さん、実は1978年のヴィンテージを見抜いていたのでは?」


 味川は、和音の目をじっと見つめた。そして話を続けた。


「このワインの感想を述べた時、名は知らなくてもと言っていましたね? 『名は』は78では?」

「それは偶然です。」そう言いながら和音は笑った。

「和音さん、それではソムリエロボットのアジミーを呼びます。

味川さん、アジミーにシャトー・マルゴーの2000年を持って来させてください。」


 味川は、「失礼します!」と言って別室に行った。

そして、しばらくすると味川ともう一人の女性が出てきた。

和音は、彼女がアジミーか?と思った。

彼女はワインセラーの前に立つと、扉を開け、ワインを一本取り出した。


「アジミー、シャトー・マルゴー2000年を深川博士とお客様の所に持って行き、二人に注ぎなさい」

「承知しました。」


アジミーが二人の前に立つと、和音に挨拶した。

「いらっしゃいませ! 深川博士、ワインを注ぎましょうか?」

「ええ!」


深川博士は、テーブルのワイングラスを指さし、


「あのグラスに私とお客様の分を注いでください」