ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 125ページ目 ロワール川巡り① 

2012-06-06 23:14:12 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【125ページ】


「これマスターから馴染みのお客様にサービスです。 ポムロールのおいしいグラスワインをどうぞ。」


美紀が丸山の前にグラスワインを置いた。


「ありがとう!」


 丸山はお礼の返事をしたが、ワインを手に取らず、カウンター席の二人の会話に気を取られていた。

酸化防止剤無添加ワインについては、ワイン愛好家の丸山にとっても関心事だった。

だから仲間との会話の中で話題に出そうと思っていたのである。

しかし先を越されたようである。


「ところで話題を替えるが、先日新人の女性の営業担当と同行したのだが、彼女がふと漏らした言葉がずっと

気にかかっているんだ。」

「丸山さん、どんな言葉だったの?」


仲間の一人が訊いた。


「彼女は『私、最近何を食べてもおいしく感じるの! 私ひょっとして味オンチ?』と私に訊くともなく言った。」

「その言葉がどうして気にかかる?」

「最近、濃い○○○といった濃い味ブームだよね?例えば、マヨネーズの大好きな人が、マグロの赤身と中トロにたっぷり

マヨネーズをかけて食べたら赤身と中トロの素材の違いが分からなくなるよね」


丸山の例え話に仲間はうなずいた。


「でもマヨネーズ好きだから素材に関係なくおいしく感じる。さらにまったく別の素材でも、マグロとサーモンにたっぷり

マヨネーズをかけて食べると、マグロ、サーモンに関係なくおいしく感じてしまう。」


ここまで話をしてから、先ほどのグラスワインを手に取り、一口飲んだ。


「おや?」

「どうしたの?」

「いや何でもない!」


丸山は、グラスをテーブルに置くと、話を続けた。