２ ホームレスソムリエ ７５ページ目

【７５ページ】


社長の父　　　　俺も母さんもデュマの大ファンだった！

社長　　　　　　それで家には、デュマの全集があったのだね？

社長の父　　　　お前も、中学生の頃からその全集を読み始めデュマのファンにな

　　　　　　　　った。　

社長　　　　　　デュマとモンラッシェの関わりは？

社長の父　　　　モンラッシェには、デュマが帽子を取って、ひざまづいて飲むべ

　　　　　　　　しと言ったという逸話があるのだよ。

社長　　　　　　モンラッシェがあまりにもおいしかったから？

社長の父　　　　そうだ。

　　　　　　　　それで、デュマの大ファンの俺と母さんは、プロポーズの時、

　　　　　　　　一生で一度でいいからモンラッシェを飲もうと誓いあったのだ！

　　　　　　　　俺は２０年も経って、そのことを忘れていたが、母さんは、その

　　　　　　　　日からモンラッシェ貯金をしていて、お前の就職祝いとして、皆

　　　　　　　　で飲むことにしたのだ。

社長　　　　　　一生に一度と言わずに、俺が何度でも飲ませてあげるよ！　


和音は、モンラッシェをおいしくいただきながら、社長の話を聞いた。


和音　　　　　　モンラッシェは、レストランで何度も飲むには高すぎますね？

社長　　　　　　そうです。後で値段を聞いたら１００万を超えていました。

　　　　　　　　でも両親に約束したからね。

　　　　　　　　とにかくその為に仕事を頑張ったよ。　

２ ホームレスソムリエ ７４ページ目

【７４ページ】


社長　　　　　私が学生の頃、１９世紀のフランスの小説家アレクサンドル・デュ

　　　　　　　マのモンテクリスト伯や三銃士やダルタニヤン物語や王妃の首飾り
　　
　　　　　　　等夢中になって読んでいました。

和音　　　　　私も中学生の頃岩窟王には、夢中でした。

社長　　　　　私の就職が決まった時、両親はフレンチレストランで祝ってくれま

　　　　　　　した。

　　　　　　　その時、父はモンラッシェを注文してくれたのです。

和音　　　　　とても高価なモンラッシェを？


社長は、その時の両親との会話の状況を述べた。


社長　　　　　おやじ、モンラッシェはサラリーマンが注文できるようなワイン

　　　　　　　じゃないよね？

社長の父　　　気にするな、お前の就職祝いだ！

社長　　　　　こんなおいしいワイン初めてだ！

　　　　　　　おやじ、母さんありがとう。

　　　　　　　でも、ほんとうに大丈夫なの？

社長の父　　　今日の食事のワインになぜモンラッシェを選んだと思う？

社長　　　　　就職祝いだけにしては、高価すぎる！

　　　　　　　おやじも母さんもモンラッシェを飲んでみたい訳があるのでは？　

社長の父　　　その通りだ！　　　　　　　

社長　　　　　訳を教えてくれる？

２ ホームレスソムリエ ７３ページ目

【７３ページ】


和音　　　　　　さすが世界最高峰の白ワイン、うまい！

社長　　　　　　デュマが帽子を脱いで、ひざまづいて飲めと言ったのがもわかる

　　　　　　　　気がしますね。

ホームレスＡ　　和音さんは、とてもおいしそうにワインを飲みますね？

　　　　　　　　このモンラッシェのヴィンテージはお判りですか？　

和音　　　　　　ワインを飲む時は、何も考えないのですよ。

　　　　　　　　おいしく、楽しくいただくことを最優先します。

　　　　　　　　まあ、オールドヴィンテージということぐらいは判りますが。

社長　　　　　　中島君、テイスティング対決の時は、別だよ！

和音　　　　　　そうですね。

　　　　　　　　このワイン・は・いつ・つくられたのですか？

社長　　　　　　中島君、ヴィンテージを見せてあげて！

ソムリエＡ　　　このモンラッシェは１９８５年のヴィンテージです。

　　　　　　　　ああ、社長！

社長　　　　　　どうしたのですか？

ソムリエＡ　　　和音さん！　ヴィンテージは判っていたのですか？

　　　　　　　　和音さんの先程の言葉、このワイン・は・いつ・つくられたの

　　　　　　　　ですか？の「は」と「いつ」は８５では？

和音　　　　　　ははは、その語呂合わせは偶然ですよ。

　　　　　　　　ところで社長、モンラッシェがお気に入りの訳は？