星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

「君のいる場所」

2006-10-05 | ネコの本
作絵:ジミー 訳:宝迫典子 (小学館)2001年

高校生の時、授業中にぽーっと窓の外に広がる秋の空を見てたら、
カラスと目があった。(ような気がした)。そしてふと思った。
「このカラスに私はどんな風に見えるんだろう?」

カラスにとって、私は四角い箱の中で同じ方向を向いて座ってる制服姿の人間の一人にすぎない。授業中だから私の後ろに5人、そして私のいる7組の後ろの教室にも同じ方向むいて座る6組の生徒、そしてその後ろにも…。同じ格好をして同じ方向むいて座る人間が延々続いてるはず。待てよ、上にもいるわ…ガラスの檻の中…。

ちょうどその頃アンデルセンの「絵のない絵本」を読んだ。
お月様からみた地上の人間達の物語。
いつか出会う私の運命の人もきっと、今同じこの月を見てるかもしれない
って思いながら受験生の私は、ひとりで夜空を見上げてた。

この本読んでたらそんなことを思い出す。
台湾の作家ジミー・リャオの「向左走向右走」は日本では「君のいる場所」になった。
宝迫典子さんの訳もいい。

都会の古いアパート、隣どうしの二人、でも彼女はいつも左に、彼はいつも右に向かって歩き出すから会ったことはない。二人が出会ったのは冬の日、恋におちる。たった1日の出会い、雨に濡れて読めなくなった電話番号。相手からかかってくる電話を、二人は同じ壁にもたれて待つ。互いを探す街の雑踏の中、二人は何度もすれ違う。同じ風景をながめ、同じ香りをかいで同じ音を聞く。でも会えない。隣の部屋で彼が弾く淋しいヴァイオリンの音色を彼女は聴きながら、さらにもっと淋しくなる。
求め合う二人は近くて遠い。季節が過ぎていく。訪れる冬、雪が降ってきた…

まるで素適な映画の絵コンテのような絵本。
「気持ちがどんどん沈んでいく」…こんな言葉を表現する絵。
彼女の想いが、風景にとけて伝わってくる。

ところで、ネコはどこに出てくるって?
彼と出会う前の彼女に喉をなでさせてあげるブチネコさん、
街を彷徨い歩く彼とも、彼女とも遊んであげたトラ猫さん
そして、二人のハッピー・エンドを見届けるホワイト・キャット。

そう、街ネコさんのゴロゴロや、「ニャ~オ~ン」が聞こえてくるようなシーンがあるんです。

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