星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

春山ワールド「王妃の肖像」

2007-03-31 | 劇空間
JR伊丹駅の近くには、荒木村重が築いた有岡城趾がある。
桜の木が1本だけ、というお城跡にしては少し寂しい風景である。
城跡から見下ろすと、若者達がたくさんいた。
制服の中に、爽やかなチェックのシャツ姿の少年達がいて、春だなぁと思う。
今日は隣のAI・HALLで中学高校演劇フェスティバル2007が開かれているのだ。

     

兵庫県立西宮今津高校「王妃の肖像」を観に行った。
もちろん作・演出・主演は、春山昌紀君。
太陽の箱」ではまった春山ワールド
…今度は、なんと彼が、マリー・アントワネットを演じた。
もう宝塚歌劇に真っ向から挑戦しているわね。
そして、今日は3月31日、ということは、彼の高校演劇最後の舞台である。

前回の「太陽の箱」の音楽は、ルイ14世のお抱え音楽師リュリの宮廷オペラ曲が、ルイルイと流れて南朝の朝廷の雰囲気を盛り上げていた。今回は、バッハである。相変わらず格調高い。

マリー・アントワネットの「家族の肖像」というヴェルサイユにあるあの絵を描いた実在の女流画家、ブジィエ・ルブランを、これまた高校最後の加藤彩香さんが演じる。王妃と同じ年に生まれた彼女の、画家であった父の葬儀の日は、アントワネットがフランスに嫁いできた日だった。彼女は母と弟を、絵筆一本で養っている。
パリ市民の間では、王妃の浪費やフェルゼンとの醜聞のせいで、王妃に対する憎しみが増大しつつある頃、王妃に気に入られたルブランは、ヴェルサイユ宮殿で王妃の肖像を描いている。この動乱の時代を乗り切る女流画家を、加藤さんは凛とした力ある女性として演じた。立ち姿も美しい。

王妃取り巻きの貴族を代表するポリニャック夫人の口癖は「美しい国フランスを守るのが私達貴族の役目」…結局平民を恐れ、一番に逃げ出そうとする彼女にとって「美しい国フランス」の中に貧しい平民は入っていない。(当然、美しい国日本、という言葉を喚起するこのセリフ。春山くんの脚本、素晴らしい。)

アンシャン・レジームは、多くの平民に自由はなかった。「でも、王妃の私にも自由はないわ。」と不幸せな王妃はいう。
背景の赤い薔薇のつたう木枠は、ギロチンだった。

サンキュロットを演じた白井三賀さんの声がいい。あの時代の平民の声を見事に表していた。
劇の最後は、フランス人権宣言の朗誦。「自由とは?」で終わった。

舞台は終始、絵のような構図に人物が配置され、動きは優雅な踊りを伴う。
高校演劇の枠を越えた春山ワールドは、これからはどこで展開するのだろう。

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