星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

「猫とともに去りぬ」

2007-04-01 | ネコの本
ジャンニ・ロダーリ著 関口英子訳(光文社古典新訳文庫)2006刊

イタリアの児童文学者ジャンニ・ロダーリ(1920~80)の父は、彼が9歳の時、嵐の中仔猫を助けるために全身ずぶ濡れになり肺炎を起こして亡くなった。本書は、彼が書いた短編ファンタジー集だ。

「猫とともに去りぬ」…家族のみんなから邪魔者扱いされた年金生活者のアントニオ氏が、猫と暮らす決意をして家を出て、古代ローマの遺跡に住み着く猫になる話。自分だけだと思ったら広場の猫の半数は人間業を辞めて猫になった人達だった。…結局孫娘のダニエラが「じーじ」を見つけて…という話。(ありそうな気がするのだ)ロダーリさんの手にかかると、遺跡の柵を越えるだけで人間は猫になれる。しかし猫に生まれた者でこの柵を越えて人間になりたがる猫はいないらしい。

「恋するバイカー」…日本製のバイク「ミーチャ」と結婚したがる馬鹿息子の話。(これもありそうな気がする)

「ピアノ・ビルと消えたかかし」…相棒のピアノを奏でながら、イタリア半島をさまよい続ける孤高のカウボーイの話。村外れの夜のとばりの中でバッハの「フーガの技法」を弾く彼はカッコイイのだ。

「ガリバルディ橋の釣り人」…どうしても釣れない糸をテヴェレ川にたれてる男が、釣れるまじないの言葉を探して何度も同じ人生を生き続ける話。

「箱入りの世界」…人間が捨てたビンや缶やボール箱が、どんどん膨張していって、やがてボトルシップのように人が暮らすようになる怖い話。

訳者の関口さんが解説で、ロダーリさんの「覚書」という詩を紹介している。

 毎日、昼間やらないといけないことがある。
 身体を洗う、勉強する、遊ぶ、おひるになったら、テーブルのしたくをする。
 
 夜やらないといけないことがある。
 目を閉じる、眠る、夢に見るべき夢を持ち、耳は聞こえないようにする。
 
 ぜったいにやってはいけないことがある。
 昼間だろうが、夜だろうが、
 海の上だろうが、陸のうえだろうが、
 それはたとえば、戦争。    

 
これを読んで、物語とは、そう、何でもありの書いた者勝ち、であることを久しぶりに実感した。
ファンタジーは、読んでる者が、その世界にどう自然に入っていけるかが、ポイントだと思う。ロダーリさんのイタリアン・ファンタジーは、実に自然に、時に笑いながら、境目の向こうに私を連れて行ってくれる。そして、伝えたいことがあるんだ、という希望のメッセージがそこにはある。

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2 コメント

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はじめまして。 (suzusiro)
2007-04-02 14:59:07
はじめまして。フジマル君のところから、遊びに来ました。
 面白そうな本がいっぱいで、そそられました。
最近、ビジネス本ばかり読んでいるからな~。

 ローマの遺跡には、確かに猫がいっぱい住んでました。猫と遺跡って、あうな~。日本の宮内庁だったら、怒るだろうな~と思ってみておりました。
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ようこそ、ここへ (ラミーチョコ)
2007-04-02 22:34:49
suzusiroさん、はじめまして。

ローマの遺跡で開かれるネコ集会
…そこでは、
とても大事なことが決められてる気がしますね。
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