星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

影が踊る

2009-11-15 | 劇空間
芦屋市立美術博物館にはなぜかベーゼンドルファーのピアノが一台ある。
昨夜は、そのピアノの音が、高いホールの天井にキラキラ光って舞い上がった。
JAZZピアニストの高瀬アキさんと、モダンダンスの岡登志子さんの即興公演。
ベースの井野信義さんも加わった一夜限りのイベント。
 
           

ピアノの蓋は最初からはずされていた。
高瀬さんは、時に凄いスピードで激しく鍵盤を連打する。
そして立ち上がり、ピアノの弦をはじく。太鼓のバチで叩く。
皿のようなものが、弦の上に置かれている。
こんなことさせていいのか、ベーゼンドルファー。と、少し心配になる。
やはり、最高に良かったのは、演奏だけのシーンで、
まるでラヴェルのようなメロディを感じる演奏の時の音。
本当に音がキラキラ舞い上がっている。

エネルギッシュな高瀬さんが、1948年生まれというのを後で知って驚いた。
団塊世代は、元気だ。

井野さんのベースは風の音を出す。井野さんが弓を縦にしてそっとこすると、そこから風が吹いてくる。心の中に吹いている風の音。
後ろの床にむかって放り投げた鈴の、「シャリン」という音が耳に残った。
ピアノに比べて控えめだけど、様々な音を創り出していた。

ダンサーは皆、普段着で、椅子を使った動きが何度も登場した。
彼らは、音に反応して動く。何かの感情がわき上がるように。それは言葉に置き換えたらどんな感情なんだろう。怒り・不安・恐怖・悲しみ・怠惰・もがき・悔しさ…
いや、言葉にはならないものが、人の身体にはいっぱい詰まっているのだ。
それが、高瀬さんのピアノに反応して、湧き出てくる瞬間に立ち会っている。

美術博物館の少し湾曲している白い大きな壁に、ダンサー達の美しい影がうつる。ダンサーの衣装が普段着だからかもしれないが、影の方が格段に美しい。後半はずっと白い壁の影の踊りをみていた。

岩村原太さんの照明が素晴らしかった。
近くからのライトなので大小がはっきりしている。手前にきたらホールの天井まで届くような大きな影になるし、壁に近づくと実物大の小さな影になる。
特に群舞の時は、青と黄の2色のライトで、一人の動きが、黄色と青の二つの影になって、白い壁に舞う。それらが重なり離れ繋がる。
青い影と黄色い影は人とは別の生き物のように白い壁で生きていた。
まるで美術館の白い壁に、動くマティスの絵が描かれたみたい。

ホワイトキューブではなく、カーブが展示の妨げになって使いにくそうな、芦屋市立美術博物館のホールの、空間の新しい可能性を見た気がする。

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