星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

マチエール事始め

2008-11-18 | 持ち帰り展覧会
芦屋市立美術博物館で、松谷武判さんの作品世界を映像化した短編ドキュメント「MATSUTANI 1」(監督:藤原次郎・奥村恵美子)の上映会と座談会があった。

松谷さんが6Bの鉛筆を動かす「シャラシャラシャラシャラ」という音がいい。
松谷さんは、この音が好きなのに違いない。
この音に耳を傾けながら鉛筆を動かしていると、つい筆が進んで、メタリックな光を放つまでの厚い美しい黒の画面ができてしまうのだ、きっと。
黒の中には、そんな静かな時間が、塗り込まれて入っている。

生まれるのは、そこに何もない黒でなく、そこに在る黒の世界。

「他の人から影響を受けるのではなく、自分から影響を受ける」という言葉に、アーティストの真髄をみたような気がした。
そして、座談会で「マチエール」という言葉を、松谷さん自身が何度か口にするのを聞いて、マチエール(=質感、材質的効果)を制作者はとても大切にすること、それがアーティストの個性が最も現れる部分なんだと理解できたのだった。

今までに、頭の中でこの言葉を使って絵を鑑賞したことはなかった。
それを意識して、2Fの展示作品を見てみると、
松谷作品が、ボンドで膨らんでいる理由や、長い時間が塗り込まれた画面が、金属的な光を放っていることに加えて、力も塗り込まれていることにも、気がついた。
そして、大量の油絵具を使った、蟻田哲さんの大きな作品の、美しさに感動した。

帰り道に出会ったこれらを美しいと感じたのは、マチエールのせいかしら。

          

 ~中に卵が入っているかもしれないっス(巣)  


                    
コメント
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