星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

アーバンキャッツ

2007-12-19 | ネコの本
榛野なな恵さんの「Papa told me」の中に、「アーバンキャッツ」という忘れられない作品がある。都会の片隅で、ひとり生きる、誰のものにもならないでいようとする月子さんとノラネコさん。ネコさんはもともと自由だけど、人は、日常生活の中で自由であるために、他人と、自分の弱さと闘ってる。
…獣医さんのソファーに座る月子さんの瞳から一粒の涙が落ちる。
それが、知世ちゃんの手の甲に、そして私の心に着地する…ポタッ。

~「Papa told me」1~27(集英社)

「Papa told me」の主人公である的場知世ちゃんは、この上なく素敵な女の子で、彼女のPapaである足の長い的場信吉さんは、理想の30代。こんなに感情と理性のバランスがとれてる父子は現実には存在しない。普通の人なら、人生に一度だけ、こんな瞬間があったなぁ、という、永遠の瞬間が、ずっと続いているような物語だ。二人が登場したのは1987年だから、もう20年間も続いている。

「Papa told me」149話。
私はその中でも、知世ちゃんが、不思議な世界に通じる扉を開けるシーンのある作品が、好きだ。ドゥードゥー鳥や、古ダンス。彼女は時々異次元の扉を開ける。

知世ちゃんはとても賢い小学生だけどサンタクロースを信じている。
それは、信じてしまう感動的な体験を、自分がいつかどこかでしたから。
幼い頃、一度信じたものは、心の中の核となって存在し続ける。

私にも、サンタクロースを信じたクリスマスの朝がある。
暖かい四国の田舎では珍しく、クリスマスイブの深夜に雪が降った。
朝目覚めると、枕元にはお菓子の銀色ブーツがあった。
もう雪はやんでいて、窓から明るく白い光が入ってきていた。
?才の私は赤い長靴をはいて、戸外に躍り出た。
あたりは一面の銀世界。いつもと違う世界。
私は広い畑の真ん中で、思い切り手を伸ばし、冷たい空気を思いっきり吸った。

お菓子の銀色ブーツが、母からのプレゼントだということはすでに知っていたと思う。
近くの竹虎堂の店先で見たことがあったから。
でもこの雪は違う。
白く輝く世界は、サンタクロースからの贈り物だと思った。
これこそ自分が一番望んでいたものだったような気がしたのだ。
こんなに輝いてる世界、眩しくて、ふかふかで、
それが、突然現れるなんて…
自分が異次元への入り口に立ったような気がした朝だった。

キリスト教徒でもない子供の心の中にも、サンタクロースはやってくる。
人は子ども達のためにサンタクロースになりたいと思った時、大人になる。
そして、キリスト教徒でなくても、サンタクロースになりたいと思った大人の心の中にも、
サンタクロースは訪れているのかもしれない。

           ~文庫本についてる栞です。
コメント (2)
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