星野博美 著 (文藝春秋)2006年刊
生きていたら「いつかむかえる死」を覚悟しなければならない。
ということを、私は実際には、猫から学んだような気がするけど、この本の著者には、猫の潔さ、のようなものがある(最大級の誉め言葉です)。人生の折り返し点あたりで、これからも自分が自分であり続けることを願い、一人であることを恐れない、いや、ちゃんと恐れてなおかつ自分の足でしっっかり立とうとする勇気を感じる。
久しぶりに、一語も飛ばすことなく、著者の言葉に耳を傾けて一気に読んだ。日常自分が感じた違和感みたいなものを、面倒だなぁと思わず、丁寧に正確に言葉で説明しようとするひたむきさに向かいあうのは、楽しい。
『ディープ・インパクト』…自分が旅行中で一度も映像を見ないうちに終わってしまった湾岸戦争については語れないが、9・11の同時中継映像を見たから同時多発テロについては語れると、思うことの危うさを自覚する彼女…これが一番秀逸。
『名前』…訪れるネコに名前を付けた途端一線を越えてしまう事になると、必死で抵抗する彼女…わかるなぁ。
『筋肉老女帯』…「和気あいあい」に憧れているのに、どうしてもそれに背を向け「一人黙々」を目指してしまう彼女が、公立のスポーツセンターには日曜日の午前中に通う理由に納得。図々しいおばさんになりたくないと努力してたらおじんくさくなってしまったというオチがつく。
『過去の残り香』…人々が模型飛行機を飛ばす公園の広い空から、そこが軍需工場→空爆→米軍住宅地→公園の歴史を持つ土地であることを思い起こし、半世紀後のイラクの地に思いを馳せる…風景に感じるちょっとした自分の違和感を信じ、追求する彼女は、きっといい写真を撮るだろう。
『白猫』…地球上に白猫ほど美しい生き物はない、という彼女のしろが死んだ。仔猫の時の写真は多いけど、成猫になってからは、写真がグンと少ないことに気づく。もう遅い、でも、あわてて老いつつある他のネコの写真を撮ろうとすることは、次の別れの準備のような気がする…激しく共感。
こんな60題からなるエッセイ集である。
図書館の本棚で初めて出会った星野さんは40歳。
次は30代前半に書いた「転がる香港に苔は生えない」を読んでみよう。
生きていたら「いつかむかえる死」を覚悟しなければならない。
ということを、私は実際には、猫から学んだような気がするけど、この本の著者には、猫の潔さ、のようなものがある(最大級の誉め言葉です)。人生の折り返し点あたりで、これからも自分が自分であり続けることを願い、一人であることを恐れない、いや、ちゃんと恐れてなおかつ自分の足でしっっかり立とうとする勇気を感じる。
久しぶりに、一語も飛ばすことなく、著者の言葉に耳を傾けて一気に読んだ。日常自分が感じた違和感みたいなものを、面倒だなぁと思わず、丁寧に正確に言葉で説明しようとするひたむきさに向かいあうのは、楽しい。
『ディープ・インパクト』…自分が旅行中で一度も映像を見ないうちに終わってしまった湾岸戦争については語れないが、9・11の同時中継映像を見たから同時多発テロについては語れると、思うことの危うさを自覚する彼女…これが一番秀逸。
『名前』…訪れるネコに名前を付けた途端一線を越えてしまう事になると、必死で抵抗する彼女…わかるなぁ。
『筋肉老女帯』…「和気あいあい」に憧れているのに、どうしてもそれに背を向け「一人黙々」を目指してしまう彼女が、公立のスポーツセンターには日曜日の午前中に通う理由に納得。図々しいおばさんになりたくないと努力してたらおじんくさくなってしまったというオチがつく。
『過去の残り香』…人々が模型飛行機を飛ばす公園の広い空から、そこが軍需工場→空爆→米軍住宅地→公園の歴史を持つ土地であることを思い起こし、半世紀後のイラクの地に思いを馳せる…風景に感じるちょっとした自分の違和感を信じ、追求する彼女は、きっといい写真を撮るだろう。
『白猫』…地球上に白猫ほど美しい生き物はない、という彼女のしろが死んだ。仔猫の時の写真は多いけど、成猫になってからは、写真がグンと少ないことに気づく。もう遅い、でも、あわてて老いつつある他のネコの写真を撮ろうとすることは、次の別れの準備のような気がする…激しく共感。
こんな60題からなるエッセイ集である。
図書館の本棚で初めて出会った星野さんは40歳。
次は30代前半に書いた「転がる香港に苔は生えない」を読んでみよう。