@人格が読めない変わった一人の女性が三人の男と付き合いを始める。それは心の隙間(寂しさ、不安等)を埋める為、その別れをどうするか。人の出会いには必ず別れがつきものだが、この書にはその二人に大きな心の傷を残し構わず去っていく、と言う小説だ。現代、相手の真意を気にせずドライに別れること、振った振られた未練を残さず安易に去れるのは今風なのだろうか。ネット上に生きる情がない生体者には全く問題ないような気もするが、少々寂しい感がする。(人の心が読めない冷めた人間関係)
『月は怒らない』垣根涼介
「概要」借金取立て屋の梶原、大学生の弘樹、警察官の和田。彼らに共通するのは市役所勤めの女性、恭子と恋仲であること──。一切自己主張をしない彼女に謎を感じつつも、男たちは次第に深みへとはまってゆく。
ー付き合いはしても良いがプライバシーは一才話さないこと、と言う一風変わった女性と付き合い始める。それも女性の方からのアプローチでのめり込んでいく三人の男、合気道を弁える学生、交番の警察官、元ヤクザ上がりの堅気商売人、そのうち二人はセックスもする関係になる。
ーある老人との出会いから自分の立場と相手(三人)との立場を考えることで男女間での深入りする前に早めに結論を出すことが得策だと忠告され行動に移る。
・「何か自分を誤魔化して生きるている、寂しさ、不安さ、それが感情として出ている、ひょっとして、孤独を異性で埋めることも」
ー光のあるところには必ず影がある。明るい場所にこそ、物陰にはくっきりとした影ができる
・「平穏な現実から心が乖離して、内面に沈み込み始めている。そのような状態の陥る人間は、基本的に「欲」に対する自制心に問題がるのだと」(性欲・食欲・物的所有欲・自己顕示欲)
・「人間で一番厄介のことで、かつ始末に負えない部分は、人は自分がこの世に生まれてきたことに、少なくとも生物的には何の意味もないと言うことを、あるいは、そう意味において人生というのは基本的に虚しいものだということをうっすらと自覚している点だ」
・「みんな、大なり小なり、絶えず後悔しながら生きているものじゃないですか」
・「何かを手に入れるときには、犠牲になるものがある。何かを手に入れなければ、他の何かはその指の間からこぼれ落ちる。人生いいとこ取りはできない」
・「自分を愛せない人間は、最終的にはその親しい相手をも愛することができない」