椅子の座り方から

2018年06月10日 | 日記・エッセイ・コラム

 仕事上、いろいろな研修会、講演会、委員会など、人の話を聞いたり自分の意見を述べたりする場に臨むことが少なくありません。そこではいろんな仕草を見せる出席者に出会います。
 例えば、先日のことです。ある会合で、会場の比較的後方に席をとった私の目に入った光景に感心してしまいました。
 出席者は一様に会議机の上に資料を置いて、正面の発言者の発言に目と耳を傾けています。しかし、その後ろ姿はまちまちです。私には、そこには各出席者の各人各様の、それぞれその会に出席する構えの違いがあるように思われてきました。ていねいに発言内容をメモ用紙に書き込んでいると思われる人。発言のポイントと思われることを手短に書き込んでいると思える人。また、発言者が発言するたびに頷いている人。頭も手も動かず、じっと聞いているかのような人。頭や肩が揺れており寝ているかと思われる人。スマートフォンか何かを机の下で操作しているような人などなど。
 そんな出席者の思い思いの仕草の中、ある人の椅子に座った後ろ姿に目が留まりました。
 その人は椅子の背もたれに沿って背筋をすっと伸ばして、両足をきちんと揃えて座っています。メモを取るときにはやや前向きになりますが、書き終わると、元の背筋を伸ばした姿勢に戻ります。その間、揃えた両足は少しも乱れません。私は最初はそんなことを気にすることもなく、見るともなく見ていたのですが、その内、その姿勢が少しも乱れないことに気がつきました。特に両足が常にきちんと揃えられたままであることに気がつきました。驚くべきことです。
 その人のその姿は背後からの視線を気にしているからなのでしょうか。あるいはそれはその人が幼い頃から家庭で躾けられた生活習慣の一つなのでしょうか。それともある時思い立って、自ら努力して身につけた習慣なのでしょうか。そこにはその人の生活振りや生き方が表れているようにも思います。
 椅子に腰かける時は深くすっと背筋を伸ばして、両足はきちんと揃えて座る。
 両足をきちんと揃えて背筋を伸ばして椅子に腰かける姿の何と美しいことか。
 それは私には到底できていないことです。会場の後方から見た多くの出席者の背筋や机の下にあるその足の動きも、誰かから見られていることなど思いもよらぬことで、猫背気味になっていたり、両足をごそごそ動かしてみたり、中には靴を半分脱いでみたりと様々です。それは発言者の話に集中しているからかもしれませんが。
 私たちは自分の後ろ姿を直に自分の目で見ることはできません。また、後ろ姿が他の人からどう見えているのかをさほど気にして生活してはいません。私たちが鏡を見て確認するのは、そこに映っている体の前面の頭、顔、服装の印象が大半です。しかし、他人からは前面だけではなく、常に全身を見られています。
 人の振り見て我が振り直せ。
 人の振り見て自分もそうかもしれないと反省して改める。また、人の振り見て自分もそうありたいと願って改める。
 椅子の座り方に限らず、人の振りから学ぶことはたくさんあります。



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