CINEMAとMOVIE?

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映画大好き、ごきげんな毎日・・・そして、やってきた猫の話

浅田次郎・著「終わらざる夏 上 中 下」

2014-03-05 14:58:21 | 読書


終わらざる夏・・・ポツダム宣言受諾、無条件降伏の玉音放送の後、千島列島の最北端、占守島での出来事にまつわるストーリーでした

なぜ北方領土がこうなってるのかなるほどと思いましたね
日ソ不可侵条約があったにもかかわらず、8月8日に満州を、そして8月18日に占守島を攻め、ソ連が日本の領土を手に入れんがための戦いだったんですか

今またロシアがウクライナと不穏な動きがあって、冷戦再来なんて言われてるけど、
どこも自国の有利なことを推し進めていくんだね

さて
≪あらすじ≫
終戦も間近い1945年夏、東京の出版社に勤める45歳の片岡の元へ召集令状が届きます
彼は好きな英語を精通し、いつかはアメリカへ、と思ってる
妻と10歳の息子がいる
一兵卒としてはあまりに老兵(だそうです)、しかし、司令部側にとって、終戦後千島へやってくるであろうアメリカとの交渉の通訳に彼は応召されたのでした、このとき、日本にはすでに人材は底をついていて、


また富永は、かつて戦地で負傷し指を無くしているにもかかわらず、車の運転の技能のため、本籍地が岩手県の片岡に呼応されるように、4度目の招集を受けます

そして、年若い医専卒の菊池も軍医として片岡と共に最果ての島の任務に就きます


片岡の息子は学童疎開していましたが、父親の出征を聞き矢も楯もたまらず東京の家へ帰ろうとお寺から脱走します
おりしも、2歳年上の女児と共に・・途中さまざまな人に出会い、東京まで


終戦の放送と共に、それぞれが家族のもとへ帰れると明るい将来を夢見ながら、
でも、運命は残酷なものでした


ロシア兵の語りもあって、よもや敗戦宣言したヤポンスキーと戦うとは、一体何がどうなってるの?って
結局、その兵と片岡は戦死してしまうんですね
残ったのは富永軍曹と菊池医師
それも、シベリアに抑留されて、またまた過酷な処遇に絶望します


・.・*・.・*・.・*・.・*・.・*

ケンカして仲裁人が入っても終わらないことはあるけど、
「降参、まいりました、」って言ってからぼこぼこにするのとは、わけが違います

ってなことが文中にあったけど、まさにその通りですよ、
死ななくていい人が亡くなって、結局国益のために民は振り回されるんですよ、ね  

とっても重厚な作品でした
スケールもデカかったし、なんと言っても占守島とか幌延島とかどの辺にあるのかも知らんかったし、
その先住民族の生活とかも書かれてて、なんとも深い
「カムイ・ウン・クレ」=神、われを造りたもう

島には日本の缶詰工場もあったらしい、北海道から学徒動員された女生徒がここで食糧確保のために働いてたのも事実らしい
もっとも、最後は流通が悪くなってたから缶が山積みだったらしい

島にやってきた吉江参謀の胸中やら、
大屋准尉の妻の話、
召集人員を決定し赤紙を配った人の話・・・とか諸々・・・

感動じゃなく辛くて涙が出ました、

シベリア抑留って山崎豊子さんの「不毛地帯」とか、想像を絶するよ


戦争ものって本来好きじゃないんですけど、百田さんの「永遠の0」が良かったもんで
浅田次郎さんの「蒼穹の昴」の後ともあってピックアップしましたが、
う~ん、つらい

本自体は良かったですよ、
ただ戦車とか砲とかの説明は飛ばしましたけど

あと、この前見た高倉健さんの「あなたへ」の挿入歌「星めぐりの歌」が奇しくも疎開した女の子が歌うところがあって、


宮沢賢治さんの詩だったんですね

あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の  つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。

オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。

大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。