地方が人口減少、疲弊し、限界集落などに陥り、自治体としての機能も維持できなくなったのは、誰のせいか。また、どうしてそうなったのか。その点を全く抜きにした、一斉地方選挙対策としての地方創生法案などは笑ってしまうような話です。
製造業が海外に移転し、海外での生産比率が40%に迫ろうとする中で、地方における雇用は危機的な状況に追い込まれています。製造業が持っていた労働者数はそっくり海外に、海外労働者に置きかえられました。しかも、巨大都市への人口集中により、地方都市、市町村での働く場所の確保は、自治体にとって確保することは至難の業です。このような現実を無視した選挙対策としての地方創生などはできるはずがありません。
2つ目は、少子化対策です。少子化の最大の理由は、低所得家庭の爆発的な増加です。子供を生みたくても経済的な理由から生むことが出来ない。また、子供が生まれたとして、巨額の教育費、保育料が支払えない。しかも、保育所は完備されていない。これらを克服する少子化対策が彼らに起案することができるのでしょうか。すべて、安倍、自民党政権が今まで進めてきた政策の結果として現れている社会状況です。
<北海道新聞社説>地方創生法案 掛け声よりも具体策だ
安倍晋三首相肝いりの「地方創生法案」が衆参両院予算委員会で議論されている。法案を集中審議する特別委も近く設置される。
少子高齢化に対応し、人口減少に歯止めをかけ、東京への一極集中を是正し、活力ある日本社会を維持していく―。法案は冒頭、そううたう。方向性に異論はない。
だが問題は実現への具体策だ。
公共事業をはじめとした従来型対策では、地域の将来につながらないことは既に実証されている。
地方が豊かさを実感できるようになるには時間がかかる。息の長い対策が必要だ。何が有効か、議論を深めたい。
首相は予算委で地方創生について「地域の良さを生かし、地域の未来を描いていく」と推進する考えを強調した。地域の声を聞くのが重要だとも語った。
実際、政府は地方からの意見聴取を始めた。大事なのはその声を政策に反映させることである。法案は国だけでなく地方自治体にも努力義務として、地域の実情に応じた「総合戦略」を策定するよう求めている。
地域が主体的に取り組むのは間違っていない。そのためには、自治体が自らの置かれている状況を把握することが欠かせない。そのうえで地域の将来像を描く。それが当然の流れである。
ただ簡単でない。人材や財政に余裕のない自治体が多いからだ。国が後押しする必要がある。
将来的には市町村が自由に決め、実行できるよう権限や財源の移譲も検討課題だろうが、まずは総合戦略を練るために緊急的に官僚派遣や予算配分を考えたい。
地方創生と人口減対策は表裏一体の関係にある。政府は年内に、今後5年間の「総合戦略」と50年後に人口1億人を維持するための「長期ビジョン」を策定する。
出生率が低いのは子供を持ちたくても持てないという貧困も背景にある。地方から都市への人口流出は、一定程度の賃金を保証する働き口が地方に少ないからだ。
宗谷管内猿払村や日高管内えりも町では、少子化に歯止めがかかりつつある。そこに人口減対策のヒントは見えないか。
霞が関の発想だけに頼らず、地方の視点を忘れずに、安定雇用や子育て支援に知恵を絞るべきだ。
地方活性化はこれまで何度も語られては掛け声倒れに終わった。「地方創生」と大上段に構えるなら、その轍(てつ)を踏んではならない。ましてや、来年春の統一地方選をにらんだ取り組みなら論外だ。