どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム137 『ハマナスと恋女房』

2022-07-19 00:22:01 | ポエム

ハマナス ハマナス

 (季節の花300)より

 

おめらおめら ことしもハマナスが咲いたど

なんてきれいなんだ おらが嫁っことドッコイだべ

アハハ こんなこと嫁がきいたら

おど ばかいうでねえと顔赤くすっぺなあ

 

ハマナスは一重瞼のおなごのように美しか

細めた瞳からは潮騒の音が聴こえてくる

浜辺でのんびりと昼寝も似合いそうで

ハハ おらが嫁っこを見ているようだ

 

おど 魚をいっぺえ獲ってきてけろと背中を押す

ハタとハタハタとシラスとシーラカンス

おめえ 慣れねえ東北弁で何いうだ?

可愛い可愛いはおらが口癖だが 点のつけ過ぎだかや

 

あらま驚いた 嫁になってくれ言うたのは誰だべ

なんでも言うこと聞くから言ってみてくれ

この地に花咲かしてくれと土下座までしたのは誰?

漁師言葉だって一生懸命に覚えようとしてるのに

 

んだなあ たしかに女房どのの言うとおりだが

嫁っこもらって 漁に弱気が出たと仲間にからかわれ

おまけにハタハタ漁はことしもダメだった・・・・

シラスだのシーラカンスときちゃあ もうお手上げだべ

 

気のいい亭主と漁師仲間の昼下がり

浜で網干す男たちの姿が光に透ける

ひとを騙すこともなく ただ魚を追う営みは

お天とうさまの下で恥じることのない人生

 

おど おらおどのことが一番好きだよ

だから嫁っこにも来たんだからね

漁師たちの背後から見守る都会育ちの女房と

防風林沿いに咲くハマナスが初夏の風にゆらめく

 

(2019/04/20より再掲)

 

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