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【小倉百人一首】30:壬生忠岑

2014年06月17日 02時26分47秒 | 小倉百人一首
壬生忠岑

有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし

前回とりあげた凡河内躬恒と同じで三十六歌仙であり、『古今集』の選者の一人である。
この歌は、後に藤原定家が『古今集』随一の名歌と評した。また、平安中期の藤原公任は著書の中で”上品上”という最高級のランクに位置づけている。

和歌では、”有明”といえば有明の月を指す。有明の月とは夜明け前の月のこと。
当時の貴族は男が夜に女の屋敷に通って逢瀬を重ね、朝になったら帰るというのが習慣だった。そのため有明の月というのは、男がくるのを待ち続けたまま、朝を迎えた女、または逢瀬を重ねたカップルが別れの時を迎えた朝(これを後朝という)のどちらかを表現している。
どちらにしろ有明の月といえば切ない瞬間を想定させるのである。

この歌では後朝を迎えた男が、女のそっけない(つれない)態度で別れたその日以来、暁ほどつらいものはない、と詠っているが、そっけないのは女ではなく月を指しているという解釈も成り立つ。
が、藤原定家は月と女の両方だと解釈した。
21番の素性法師の歌は詠んだとおり、有明の月になるまで恋人を待ち続けた女の切ない心情を詠っている。