映画鑑賞感想文

濫観っていうか、乱観っていうか・・・ポリシーないですけど(^^;

『しあわせな孤独』

2010-02-02 13:56:36 | Weblog
2002年 デンマーク
監督: スザンネ・ビア
出演: ソニア・リクター、マッソ・ミケルセン、ニコライ・リー・カース、パプリカ・スティーン

交通事故で全身不随になったしまったヨアヒムと恋人セシリ。ヨアヒムを轢いてしまったマリーと医師である夫のニール。四人を描いた映画です。
現実を受け止められずセシリに辛くあたるヨアヒム。そんなヨアヒムの態度に混乱するセシリ。妻のマリーに頼まれて、セシリの相談相手になるニール。やがて、セシリとニールは惹かれあい関係をもってしまう。もともと真面目にニールは、セシリに本気になってしまい、思春期の娘に二人の関係を疑われる。そして・・・というようなお話。

デンマークで、1995年から始まった映画運動「ドグマ95」に則った映画なんですって。「ドグマ95」には「撮影はすべてロケーション撮影によること」とか「映像と関係のないところで作られた効果音などをのせてはならない」など、10の約束事があるらしいんですが、その中に「カメラは必ずハンディーで」というのがあって・・・わたしとしては「こりゃ駄目だ」って思っていたんです。だって、わたし、ハンディー駄目ですから。香港の有名な映画監督で、ハンディーを多用する人がいますが・・・彼の作品で酔いますからね、わたし(^^;。けど、この映画は、ハンディーの割には画面がシッカリしていて、酔いはしませんでした・・・よかった(^^;。

で、感想ですが・・・そうですね、恥ずかしさを押し殺して安易な言い方をしちゃうと「愛について考えさせられちゃいました」ですかね(照)。

愛に「正しい愛」も「間違った愛」もないわけで・・・結婚して子どももいるから他の女性を愛しちゃいけないとは言い切れないと思うし・・・というか、駄目といわれても愛してしまうことはあるわけで・・・ただ、その場合、どうするのかと、それが問われるわけで・・・・・自分がその立場にたったら、どうするだろうと、そんなことを考えてしまったり・・・


全身不随になって、自分に当り散らす恋人・・・そんな恋人に、一生をささげて介護しないとと、自分は人間失格になってしまうんだろうか・・・そんな時、誰かに抱きしめて欲しいと思うのは我がままなんだろうか・・・その人に惹かれてしまっては身勝手なんだろうか・・・自分がその立場にたったら、どうするだろう・・・と、そんなことを考えてしまったり・・・

二度と自分の足で立つことはない、恋人と肉体的に愛し合うことができないばかりが、その腕で恋人を抱きしめることもできない・・・そんな自分に、恋人や妻をもつ資格があるだろうか・・・恋人が自分から離れていかなかったとしても、それは同情からであって愛ではないのじゃないか・・・今後、対等な人間同士として愛し合えることなどあるんだろうか・・・このまま、今の恋人を自分に縛り付けておくのは、愛ではないのじゃないか・・・けれど、自分は愛されることもなく、愛することもできず、生きていけるだろうか・・・そんな状態で生きている意味があるだろうか・・・自分がその立場にたったら、どうするだろうと、そんなことを考えてしまったり・・・

相手の不注意があったにせよ、人一人、全身不随にさせてしまった自分に、幸せになる資格があるだろうか・・・恋人を失った女性が、そのかわりに自分の夫を奪ったとしても、それを責められるだろうか・・・自分がその立場にたったら、どうするだろうと、そんなことを考えてしまったり・・・

四人の登場人物、それぞれの立場で「わたしだったらどうする?」と考えさせられる作りになっているので、なかなか重い映画ではあります。

そうそう、文化や制度の違いなのかなぁ~・・・と、ちょっと腑に落ちなかったことが二つだけありました。大きな事故なのに、日本なら一番に問題になりそうな補償問題がまったく出てこなかったのは、デンマークの医療費が基本無料だからなんでしょうか。

それと、もう一つは、事故当日の夜に、車を運転していた側の家族が、友人を呼んで娘の誕生会をしているのが、まったく理解できませんでしたね。登場人物は、みんな悪人ではなく、むしろ善良な市民な感じなのに・・・デンマークの人にとっては、この行為って、違和感のあることではないのかなと不思議に思ってしまいました。
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『変身』

2010-02-02 13:31:19 | Weblog
2005年 日本
監督:佐野智樹
出演:玉木宏、蒼井優、佐田真由美、山下徹大、松田悟志、釈由美子、北村和夫

後で知りましたが、東野圭吾さん原作だそうですね。ストーリーは複雑じゃないです。事件に巻き込まれ、瀕死の状態から脳移植によって蘇った主人公が、移植された脳の持ち主の人格に、しだいに侵食されていくという話で・・・脳移植ものとしては王道の展開です。だから、映画をご覧になっていて、物語的には何も意外なことは起こらないと思います。

つまりは、その分、演出力と役者さんの技量が問題になるわけですが・・・これが意外に大丈夫だったんですよ(爆)。

玉木くん・・・のだめの千秋先輩が超素敵で・・・でも、それ以外の作品は「どうして?!」って悲しくなるほどイマイチで・・・どうしてあげればいいんだろう(どうにもしてあげられませんが(^^;)と思っていたくらいだもんだから・・・ほんと、この映画も全く期待してなかったんですよ。

で、実際、見始めたら、なんとも甘あまで、温るぬるで、「もう無理だ!勘弁してくれ!!」って投げ出しそうになったんですが・・・がんばって見続けていると、意外にはまれました(^^;。

やっぱり、蒼井優ちゃんは好い女優さんですね。正直、彼女は役者さんとして凄く褒められいるので、天邪鬼なワタシは斜めに見てしまうところもあったんです。でも、玉木くん演じる成瀬純一が、ドナーの脳に支配され始めた時に、明るくて可愛くて善良なんだけど中身がなさげな恵をウザク感じる際に、観客であるわたしも一緒にウザイと本気で思える面倒くさい芝居を見事に演じ・・・そこで、しっかりそんな風に感じさせておいて、そのウザイ一途さが、後でしっかりと生きてくる演技プラン・・・なかなかな女優さんであります。

あっ・・・主人公の名前の成瀬純一ですが、何かの小説かドラマで、似たような名前の主人公、いませんでしたっけ。なんだか聞き覚えがある気がして・・・(^^;。
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『デトロイト・メタル・シティ』

2010-02-02 13:04:47 | Weblog
2008年 日本
監督: 李闘士男
出演: 松山ケンイチ、加藤ローサ、松雪泰子、秋山竜次、細田よしひこ

公式ホームページによる「ストーリー」は

心優しき青年・根岸崇一は、オシャレな渋谷系ポップソングミュージシャンを夢見て大分の田舎町から上京。「そのキッスの味はきっとラズベリ~♪さっき食べたケーキの仕業さ~」渾身の甘いポップソング「ラズベリーキッス」でデビューを目指すが、ふとしたことから奇抜なメイクと演奏で人気を博す悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」(通称DMC)のギターボーカル「ヨハネ・クラウザーII世」として活躍する羽目になってしまう。オシャレとポップソングが大好きな憧れの美女・相川さんにはそのことをひた隠して活動を続ける根岸青年だったが、DMCのデビューシングル「ラズベリーキッス」・・・もとい「SATSUGAI(殺害)」が爆発的なヒットとなり、その意思とは裏腹にクラウザーさんはどんどんカリスマとなっていく。「俺は地獄のテロリスト!!殺せ殺せすべてを殺せ!!!!!」SATSUGAIの爆発的人気とともに、インディーズバンド戦国時代が日本各地で勃発。DMCはライバルのデスメタルバンドやパンクバンド、HIPHOP界のカリスマなどを次々と討ち果たし、レジェンドを重ねスターダムにのしあがっていってしまう。「ボクがしたかったのは・・・こんなバンドじゃない!!」そんな状況に苦悩する根岸。DMCの活動の合間に、オシャレミュージシャンとして路上ライブをする日々だが、一向に芽が出ない。そして憧れの相川さんにクラウザーとしての正体を隠そうとする日々にほころびが生じはじめる。そんななか、アメリカ・ニューヨークから、凶暴極まりない世界的デスメタルのカリスマ、ジャック・イル・ダークが音楽界からの引退を発表し、その引退を前に世界中のメタルバンドと戦うワールドツアーを敢行するというニュースが入ってくる。そして、日本での対バン相手にDMCが正式指名されることに・・・。盛り上がる世間とは裏腹に根岸の苦悩はますます深まっていくが、対決の日は刻一刻と迫ってきて・・・。

だそうです。そう、まっ、間違いないですよね(^^;。もっとスッキリ、分かりやすく書けんかって思いましたが、これも作品のイメージに沿った演出なんでしょうね。

公開前のプロモーションを見て、面白そうだなぁ~とは思っていたのですが、毎度ずぼら者なもので映画館に行くことはなく、結局、先日の地上波放送で拝見しました。後で聞いたら、放送に適さない言葉に、色んな効果音を当てていたのは、地上波仕様で、映画ではなかったことなんだとか。いつもなら、そういうことをする放送倫理感覚に、さんざん文句をいうところなのですが・・・いや、これは意外に良かったですよ。

映画を見るまでは、わたし、もっと振り切れた映画なんだろうって思っていたんですよ。けど、どっちかっていうとライト・コメディーな感じで、その雰囲気に、このピー代わりの効果音が合ってたように思いました。

好きなら楽しめ、嫌いなら見るな・・・そういうタイプの映画だと思うので、批判無用と思いますが・・・あえていうなら、もう少し音楽(デスメタル)に力を入れてもらっても良かった気はします。時々「おっ!」と思うのですが、おおむね物足りなかったので。それと、松雪さんが、ものすごくがんばっていらして、その姿が愛おしく思えたのですが・・・でも、ちょっと無理が見えてしまっていたかなと・・・でも可愛かったからいいですけど(^^)。
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『東南角部屋二階の女』

2010-02-02 12:27:10 | Weblog
2008年 日本
監督: 池田千尋
出演: 西島秀俊、加瀬亮、竹花梓、香川京子、高橋昌也

公式ホームページの解説によると

死んだ父親の借金を背負い、古アパートが建つ祖父の土地を売ろうとした僕。理不尽な仕事から逃れようと突発的に会社を辞めてしまった後輩。フリーの仕事もままならず、結婚でその不安を解消しようとする彼女。目の前にある問題から逃げてきたあの頃。取り壊し寸前のアパートに僕らは偶然に集まり、あの人たちに出会った。そして分かったんだ、彼らの生き方が。それがわかったとき、ほんの少し何かが変わり世界が違って見えてきた・・・。真剣に生きることを避けている若者たちと、日常を丹念に生きている表舞台を引いた人たち。同じ場所と時間を共有し、同じ想いを胸に抱くまでの、その穏やかで、心揺さぶられる日々を描いた、どこか懐かしくも新鮮な光を放つ物語が誕生しました。

だそうです。

こういう映画に慣れている方はそんなことないんでしょうが、展開が速く娯楽性も高い映画に慣れている人は、あるのかないのか分からないリズム、ぼんやりした空気感に馴染み、この映画の世界に溶け込むのに、ちょっと時間がかかると思います。でも、そういう人間こそ、この映画の観客として選ばれし者なのかもとは思いました。だって、まさしく、映画の中の若者たち三人と同じ経緯をたどって、このアパートに辿り着くわけですからね。

でも、上記の解説には、あまり共感できない部分もあるんですよね。「真剣に生きることを避けている若者たちと、日常を丹念に生きている表舞台を引いた人たち」って部分なんですが・・・わたしは、若者たちが真剣に生きることを避けているようには見えなかったです。むしろ、必死に生きて、それで疲れちゃったんだと、そう感じましたけど・・・。それに、年配の二人が日常を丹念に生きているとも思えなかった。少なくても、じいちゃんに対しては「土地を売って、孫を楽にしてやれよ」って、最初から最後まで思っていました。だって、孫自身の借金じゃなく、じいちゃんの息子である孫の父親の借金でしょ。わたしなら、自分の思い出はを溝に捨てても、孫を楽にしてやりたいです。これって、子どもを甘やかす考えですか?財産を残して贅沢させてやりたいって言っているのではなく、親の借金から開放させてやりたいってだけですよ。

ただ、そのじいちゃんを演じている高橋昌也さんと、藤子さんを演じている香川京子さんという、二人の役者さんに対しては「日常を丹念に生きている表舞台を引いた人たち」の魅力的なものは感じずにいられませんでした。役者として、毎回主役を張るような一線には、もういらっしゃらないお二人かもしれない。けど、彼らと競演することによって、若い役者さんたちが「同じ場所と時間を共有し、同じ想いを胸に抱くまでの、その穏やかで、心揺さぶられる日々」を過ごせたんじゃないかと、そう思わせるものではありました。その意味では、この映画は、監督の意図を反映した出来になっていたのではないかと想像します、はい。
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