映画鑑賞感想文

濫観っていうか、乱観っていうか・・・ポリシーないですけど(^^;

『壬生義士伝』

2010-01-08 08:06:45 | Weblog
監督:滝田洋二郎
原作:浅田次郎
出演:中井貴一、三宅裕司、夏川結衣、塩見省三、堺雅人、野村祐人、山田辰夫

一言で言うと家族を養うため、その家族を残し藩を抜け、新撰組に入隊した南部藩(盛岡)出身の吉村貫一郎の生涯を描いた映画ってことになりますかね。原作は浅田次郎さんですが、その浅田次郎さんの設定の基になったのは子母澤寛の作品のようですね。

我が家では夫も娘も浅田次郎さんの作品が好きなので、わたしも読む機会はあるのですが、実はあまり好みではないんですよね、浅田さんの時代小説。なんていうか・・・実在の人物を、あまりにも自由自在に、自分の作品の素材として変形しすぎるところが、わたしは好きではないのですよ。娯楽読み物として面白くはあるのですが、どうも居心地悪く感じてしまうのですよねぇ~。なので、この映画も、なんとなく避けていたのですが・・・何故かタイミングが合ってしまって、見てしまいました(^^;。

で・・・ふむ、前半は文句なしに面白かったです。斉藤さんの描き方が、どうしたものかとは思いつつ、それでも面白かったです。でも、鳥羽伏見のシーンが終わってからは、やけに冗長に感じられました。じっくり描かれる感動シーンが目白押しになるので、お好きな方にはたまらないかと思うんですが、淡白な質のわたしは、もっとテンポ良く撮ってくれよと思わずにいられませんでした。

それに・・・肝心の吉村貫一郎という人物が、最後まで、どういう人か分からなかったんですよね。中井貴一さんの芝居がスゴク好かったので、各シーンを別々に見れば、どこも良いシーンばかりなんですが・・・全体を通してみるなら「吉村君、君の一番大切なものは、家族なの、義なの、どっちなの。はっきりさせてほしいな」って、ずっとイライラしてしまいました。

前半は、武士としての体面も意地も何もかも全てを捨て去り、ただ家族の為だけに生きることを決意したって感じだったんですが、後半になるとやたらと「義」ってことに拘り始め、なのに最終的に選んだ行動にも納得がいかないし・・・

いえね・・・人なんて、感情にも行動にも統一性が無い生き物だと思うので、一人の人物の中に色んな要素があってもいいし、コロコロと変化してもいいと思うんですが、映画として描くなら何かしらの関連付けは必要だと思うんですが、それが全くなくて変化が唐突なので白けるんですよね。

吉村貫一郎さんという方は、たしかに実在しておられて、新選組の撃剣師範も務められた腕の立つ人物だったようですよね。剣の腕だけではなく、文武両道の人であったとも言われているようです。家族思いであったのも確かで、新撰組への入隊は家族を養うためであったようですが、脱藩はご自身の思想的なものであったように聞いていますし、映画で描かれているような最期は小説家子母澤寛の全くの創作だとも聞きました。つまり・・・事実の部分と創作の部分が、映画では巧く噛み合わなかったということではないのかなと思います。子母澤寛さんの小説や、それを叩き台にした浅田次郎さんの小説では、そのあたりが巧く処理されていたのかもしれませんが、映画では巧く混ざり合わなかったのではと・・・。

でも、中井さんをはじめ役者さんが皆さん素晴らしくて、それだけでも見る価値はある映画だと思うのですが、やっぱり、実在の人物を主人公に描く際の難しさは残ったなと、そう感じさせられたのでありました。
コメント
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