風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

島根に友を訪ね・ちょっぴり鳥取2-2

2016-12-01 | 中国(山陰)
その1からの続きです。

○ 出雲そば名店

日御碕神社を参拝し終えた頃、さっちゃんが急に体調不良になってしまいました。
どうしたのでしょう。朝早くからずっとあちこち動いていたからでしょうか。
出雲の強力な神々のパワーに触れたからでしょうか。
霊感がなく、鈍感力の高い私は、その点いたって元気です。

少し休憩して、彼女の回復を待ってから、町の方へと戻ってお昼にしました。
Pちゃんのお勧めは、平和そばという出雲そばのお店です。



お店の中は人でいっぱい。お店の外にも人はいっぱい。
かなり人気なんですね。
でも順番を待つ行列はできておらず、時折名前を呼ばれた人が、店内へと入っていきます。
席があいたらお店の人が名前を読んでくれるシステム。

店の外には10数名の人が待っていたので、すぐには番は回ってこなさそう。
のんびり待つことにします。
その間、Pちゃんに『るるぶ出雲版』の最新号を見せてもらいました。
まさかPちゃん、私たちを案内するためにガイドブックを用意したの?
「違うよー。ガイドブックに初めてうちの神社が載ったのよ」
彼女がお嫁入りした神社が、確かに紹介されていました。



○ そば&カツ

少しして、名前を呼ばれたので、いそいそと席に着きます。
このお店は、出雲そばがおいしいのはもちろんですが、カツ丼もおいしいとのこと。
昨日、あまり肉類を取っておらず、この日の夕食も精進料理なので、セットを頼みました。



出雲そばとカツ丼。
まずは暖かいカツからいただきました。サクサクの噛みごたえです。

出雲割子そば。食べ方は少し独特で、まず一番上の割子にだし汁を全部入れてそばをいただきます。
その後、残っただし汁を二段目にかけてまたいただきます。
だし汁を無駄にしない食べ方なんですね。



日本三大そばと称されるモチモチしたそばは、順番を待ったかいがあるおいしさでした。

○ 永遠のライバル県

出雲大社の正面向かいには、スタバがあります。
「ここができた時は話題になって、出雲一の行列ができたんだよ」とPちゃん。
「鳥取よりも先にできたのよ!」



おや?と思います。
勝利宣言をしているみたい。Pちゃん、鳥取をライバル視しているの?
「二つ目ってできたの?」と聞くと、ぐっと言葉に詰まった彼女。
「イオンの中にできたって聞いてるけど、さだかじゃないんだ」
ええと、なんか、ごめんなさい~。

そういえば、さっきからなんとな~く、言葉の端々に「鳥取よりうちらの方が」といったニュアンスがみられます。
二つの県が、なにかにつけてブービー賞争いをしているのは知っていましたが、まさかそこまでとは。

「もうすっかりこっちの人になっちゃって・・・(涙)」と言うと
「そんなことないよ、毎年6月2日になると(今日は横浜の開港記念日だな)って思い出してるよ」と、浜っ子ソウルを失っていないことをアピールします。
いえでもあなた、その発想は既に島根っ子よ~。
ヨコハマ出身のPちゃんでもそんな感じですから、生まれたときから地元民の郷土愛と鳥取ライバル視はもっとすごいんでしょうね。

車での移動中も、彼女からはすらすらと島根鳥取の比較話が出てきます。
「県内に大学は国立が1校、公立が1校だけで、私立は1校もないのよ。
 あ、でも鳥取もないから!
「鳥取のことは聞いてないよ!」と吹き出す私たち。
島根の話の後には、ことごとく鳥取ネタもくっついてきます。

「嫁入り直後は、鳥取砂丘に行ってみたかったけれど、夫に"砂があるだけだがや"と言われて、話が終わっちゃった」
砂があるだけって~!鳥取県民の心のよりどころに、なんという言いぐさでしょう!
「で、行かなかったの?」
「うん。砂があるだけだし」
いやいや、近いんだから行ってみようよ!

高校の時、合唱部の部長だったPちゃん。
「島根の中学校の合唱のレベルは高くて、毎年全国コンクールの最終選考まで残るんだよ。
 でも鳥取は、予選敗退レベルだから!

ライバル扱いもここまでくると、いっそすがすがしいです。
日韓ワールドカップ時に公開された映画「もうひとつの決勝戦(アザー・ファイナル)」を思い出しました。
2002日韓ワールドカップ大会の決勝戦の日に開催された、FIFAランク最下位のブータン(202位)とモントセラト(203位)の親善試合のドキュメンタリーです。
ブービー賞争いをしているところが、島根・鳥取に重なります。

どうやら彼女の見立てでは島根の勝ち要素の方が多いらしく、誇らしげなPちゃんですが、選挙のポスターを前に、一気にトーンが下がりました。
「なんと、選挙区が鳥取と一緒になっちゃったのよ・・・」
それ、まさに「呉越同舟」ですね。
当事者の方々にとっては残念なことかもしれませんが、もうちょっと仲良くしてもいいんじゃない?



地元選挙区からの立候補者は、竹下登氏の弟。
ヒロポン「じゃあDAIGOの大おじさまってことになるのかな」
私「大おじさまといえば、キャンディ・キャンディ」
P&さちこ「エルロンド大おばさまね!」
合唱部同士、息がピッタリの二人。

出雲からさまざまな場所に高速バスが出ていますが、なぜか鳥取行きのバスはなかったそうです。
最近になって、ようやく便ができたそうな。
お隣なのに、どれだけ交流がないんでしょう。山陰県同士、助け合えばいいのに。 

「しまねっこってかわいいね。鳥取のキャラは?」
「とりピー」
あ、説明はないのね。とりピーにはまだ会えていません。

あまりにきっぱりと鳥取をディスる彼女に、たじたじになりました。
そのいさぎよさは、気持ちいいほどです。もう笑うしかない!

○ スサノオの須佐神社



食後に向かったのは、スサノオを祀る須佐神社。
「弦楽部の須佐っていう子、覚えてる?」と聞いてみると、
「うん。スサって呼び捨てにしてたよ」とPちゃん。
「ここの神主さんも須佐さん。スサも実は由緒正しい家系なのかもね」

出雲地方は、お尻を上げたスタイル(出雲式)の狛犬が多いのが特徴です。
この旅行で初めて出雲式の狛犬と出会いました。
「これよ、これ!」
「ああ、よく見るね」とPちゃんは言いますが、出雲式という言葉は初耳みたい。
確かにこの辺の人が命名したわけではないし、単に狛犬ファンの間だけでの呼び名なのかも。

この辺りの石像は、原産の来待石でできたものが多いのも特徴です。
柔らかめで掘りやすい来待石ですが、その分もろいという短所があり、結構摩耗が激しいのが難点。
刻んだ文字が読みづらいのですが、参道には文政時代のものがありました。 



先ほどの日御碕神社にならって、今回も随神門をくぐる時に、中をのぞいてみました。
随神と金銀狛犬が、ちゃんといましたよ。
金色の方は、ダダみたいな顔つきでした。



本殿の背後の林の中に、ひときわ目立つ大杉がそびえていました。
樹齢約1200年で、幹周り6メートルの大きさ。
「江原啓之氏が紹介したことで、人が木をさわりまくったり、樹皮をはがすようになったから、大杉の保護のために最近柵を作ったのよ」
うーん。スピリチュアルも度が過ぎれば環境破壊ですね。



大杉の少し奥には夫婦神をまつったような祠がありましたが、記名がないため、よくわかりませんでした。(三穂社かもしれません)

神社のすぐ隣には「すさのおの郷 ゆかり館」という温泉宿泊施設がありました。
ここは出雲須佐温泉卿。島根も温泉が多い場所です。



○ 万九千神社

それから、いよいよPちゃんがお輿入れした神社へと向かいました。
広大な水田の中に見える、こぢんまりとしたこぎれいな神社。
正面鳥居の右側に「万九千神社」という壮大な名前の社標が立っています。

鳥居の左側には「立虫神社」という社標が立っています。
境内には万九千神社と立虫神社が鎮座しているのです。



大きな狛犬が迎えてくれました。
口の中には取れない珠が入っています。中国風でしょうか。



こちらは立虫神社の拝殿。
出雲式の太い注連縄がかかっています。
御祭神は須佐之男命の子である五十猛命(いそたけるのみこと)、大屋津姫命(おおやつひめのみこと)、抓津姫命(つまつひめのみこと)の三柱。
この辺りの地区の氏神さま、鎮守さまだそうです。



その横にあるのが、万九千神社の拝殿。
御祭神は、櫛御気奴命(くしみけぬのみこと)、大穴牟遅命(おおなむちのみこと=大国主大神)、少彦名命(すくなひこのみこと)の三柱と八百万神。
神在月(旧暦10月)に全国から出雲に集まった八百万神が、最後に見えるのがこのお社なんだそう。
こちらに立ち寄られた神々は、神議り(かみはかり)を締め括り、神宴(直会=なおらい)を催して、それぞれの土地へ戻っていかれる(神等去出)のだそう。
毎年11月26日に、神等去出(からさで)祭という神送り神事を行うそうです。

つまりここは神々にとっての出雲のしめくくりのお宮。
とても重要な場所ではないですか。
我が友人が、そんな神話に基づいた古式ゆかしきならわしを行う立場になっていることに、改めて驚きました。



○ 友の御祈祷

なんと、ここに昇殿させていただきました。
さらに、ご祈祷をしていただけることに。
まあ、どうしましょう。感激です。

「ちょっと待っててね、着替えてくるから」
待つ間は、花嫁を待つ花婿のような気分でドキドキしていました。

そして正装をした彼女があらわれました。
うわあ、すごい。
白い神官装束姿となり、キリリとした友の姿に見とれます。
もう気軽に「Pちゃん」なんて、呼べないわ。

「さあどうぞ、上がってください」
そう促されて、私たちはおずおずと昇殿しました。
そこは、ヒノキのいい香りのする明るい神殿でした。

まずは、神官が御祭神に祝詞を捧げます。
もはや友の顔ではなく、神職の顔つきとなった彼女。
とても凛々しく、清涼さに満ちていました。

それから、一人一人にお祓いをしていただきました。
友の手で、穢れを落としてもらい、清らかになったわたしたち。
生まれ変わったような気持ちになっています。

かつて巫女をしていた時には、数えきれないくらい神主さんにお祓いをしていただきましたが、友人が神主さんになって、お祓いしてくれる日が来ようとは思ってもいませんでした。
感激です。ありがたいわ~。
元巫女の目で見ても、Pちゃんの祝詞は完璧でした!
だって今や、本物の神官さんですもんね。

平成26年の正遷宮の際には、皇室の方をはじめ、色々な有名人がこの神社を訪れたとのこと。
拝殿内にその時のパネル写真が何枚も飾られていました。

感激冷めやらぬまま、御朱印、そして絵馬などをいただきました。
Pちゃん、一日つきあってくれて、どうもありがとう。
しっかりと闇を払ってくれたので、あなたの頼りない友もダークサイドには落ちないでしょう。(たぶん)

Pちゃんとはここでお別れ。
見送ってくれる彼女に、車の中からちぎれるほどに手を振って、一路この日の宿へと向かいました。

○ 瑞穂の国



本当にこの辺りは水田が多い地域だなと思います。瑞穂の国。
島根のお米って、特に聞いたことはないけれど、たくさん収穫されるんでしょうね。

あちこちで鯉のぼりを見かけます。
この日は5月22日。はじめは(うっかりしまい忘れてるのかな?)と思いましたが、あまりにも見かけるため(もはや忘れてるレベルじゃない)と思います。
どうやらこの地方は、旧暦で端午の節句をお祝いするそうです。




通りかかった橋に、蛇が描かれていました。
もしやこれは、ヤマタノオロチ?
でも頭は一つだから、ちょっと違うようですが、なぜ蛇なんでしょうね。
もしかすると、神話に由来するのかもしれませんが、橋の名前はわからずじまいでした。



○ お寺の旅館

宍道湖を眺めながら、一路東へと向かいます。
松江を越えて、さらに車を走らせ、着いたのは、島根の東端の辺りにある安来(やすぎ)。
その山の中にある安来清水寺が目的地。お寺の境内にある旅館にこの日は泊まります。

くねくねカーブを登って登って、お寺の駐車場に着きました。
ここからは、一般車は先へ行けません。
荷物を持って歩いて行こうとしましたが、登りの石段が延々と続くことが分かったため、自力で行くのは諦めて、宿に電話をかけました。

待つことしばし。マイクロバスが登場します。
少し後にやってきた、もう一組のファミリーと一緒に乗り込みました。
一般車進入禁止の表示をすり抜けて進みます。
すさまじい傾斜が待っていました。ジェットコースター並みで、どこかにつかまっていないと身体を支えられません。
一般車の通行を禁止するのは当然といった、ハードな道でした。

そうしてようやく、紅葉館に到着しました。
この日の宿泊客は、この二組のみだそう。
9ヶ月の赤ちゃんのいるご夫婦で、バスの中で「うるさくしたらごめんなさい」と言っていただきました。
いえいえ、私たちこそ。



駐車場からの道を考えても、お寺が広大な敷地を持っていることがわかります。
部屋からは、美しい緑の景色の中、まっすぐ三重の塔が見えました。
生き生きとした植物の緑を見ているだけでも、癒されます。
人里離れた、静かな環境です。



ほっこりお茶タイム。左側は、安来名物の清水羊羹です。



○ 精進会席料理

夕食は、楽しみにしていた精進会席料理のコースです。











一品一品、作った方が届けてくれて、素材と料理の説明をしてくれました。
どれもとてもおいしかったです。

○ ジンジャーエールのわけ

気持ちのいいお風呂で身体が温まったら、お風呂上りには、シュワッといきたいですね。
冷やしておいた万九千神社のジンジャーエールを取り出します。



御神酒代わりの「御神酒代(おみきしろ)」は、アルコールゼロの生姜サイダー。
なぜ生姜なのか、おわかりですか?
神社(ジンジャー)エールだからですよ!!



○ 島根・鳥取の有名人

くつろぎながら、3人で「島根の有名人」を考えました。
誰がいるかなあ?
思い出せずなかったので、ネットで調べました。
「竹内まりや、宮根誠司アナ。」
そうなんですね。2人ともなんだか意外。

Pちゃんの話題も出ました。
「丁寧にガイドしてもらえたね」「立派な神主さんだったね」とひとしきり讃えたあとに「それにしても鳥取にライバル心持ち過ぎじゃない?(笑)」と。
Pちゃんが特別なわけではなく、島根の人はみんなああなのかな?

disられると逆に気になるもので、「鳥取の有名人」も調べてみました。
「ジュリー(沢田研二)、アムロ・レイ」と読み上げるヒロポン。
えっ、ガンダムのアムロ?いきなりの登場にびっくり。
日本人だったんだ~。
あの近未来にもまだ鳥取が存在しているのなら、Pちゃんのライバル心はまだまだ消えなさそうです。
燃え上がれ~ガンダム~♪(初期)

○ ライトアップ三重の塔



夜には三重の塔が青くライトアップされました。
前日の宿は海沿いで、この日は山の中。バランスが取れているわ。
別室の赤ちゃんはお利口で、まったく泣き声は聞こえません。
静かな時間の中で、眠りにつきました。
3日目に続きます。




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1 Comments

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マルテンサイト変態千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-11-04 15:29:09
それにしても古事記はすごいよな。ドイツの哲学者ニーチェが「神は死んだ」といったそれよりも千年も前に女神イザナミ神についてそうかいてある。この神おかげでたくさんの神々を生まれたので日本神話は多神教になったともいえる。八百万の神々が出雲に集まるのは、イザナミの死を弔うためという話も聞いたことがある。そしてそこから古事記の本格的な多神教の神話の世界が広がってゆくのである。私の場合ジブリアニメ「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」の感想を海外で日本の先進的な科学技術との関連をよく尋ねられることがあった。やはり多神教的雰囲気が受けるのだろうか。
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