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地球視野の脱デフレ策を――名目成長を共通目標に(核心)

2013年01月07日 22時15分58秒 | 政治

2013/01/07 日本経済新聞

客員コラムニスト 岡部直明


 2013年の世界経済はリーマン・ショック以来の危機の時代から転機を迎える。財政の崖を超えたオバマ政権2期目の米国経済はシェールガス革命を足場に復活するか。メルケル独首相の指導力のもと、ユーロ圏は危機を打開し再生に向かうか。習近平新体制で中国経済は格差を抱えながら再上昇するか。そして失われた時代を続けた日本が安倍晋三政権の登場でデフレから脱却できるかである。


 デフレ克服・円高是正をめざす「アベノミクス」は昨年末以来、市場の光景を一変させた。しかし金融緩和と財政出動に傾斜したアベノミクスは日本経済にとって大きなカケでもある。


 戦後の世界経済で唯一、真性デフレに見舞われた日本が金融緩和を強化するのは当然だ。白川方明日銀総裁はついに「デフレファイター」には変身しきれなかった。失業率目標を導入した米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長や、ユーロ危機克服の主役として無制限の国債購入を打ち出した欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁に比べて、守りの姿勢が目立った。


 永田町のいら立ちはわかるが、それにしても安倍政権の日銀に対する態度は政治と日銀の適切な間合いを逸脱している。プラザ合意後、竹下登蔵相(当時)は「中央銀行はあまのじゃくだから誘導するようなことはいわん方がいい」と話していた。安倍政権の姿勢は誘導どころか指令である。
 習政権下の中国でさえ人民銀行にどれだけ独立性を認めるかが改革の目安だと米シンクタンクはみる。中央銀行の独立性は成熟した民主主義国家の基本だ。


 円安誘導にも国際的な目配りがいる。輸出倍増計画を実行中のオバマ政権は急激な円高是正を警戒する。外債購入基金構想についてコーンFRB前副議長は「介入とどう違うのか」という。通貨安競争を避けつつ不均衡是正をめざすなら国際協調により「逆プラザ合意」を実現するしかない。


 最悪の財政赤字国なのに、なお財政出動に頼るのも解せない。人口減少下での公共投資拡大は後世に無駄を残しかねない。膨らむ財政赤字を日銀の国債購入で賄うと見られれば、国債金利はいずれ上昇する。


 南欧諸国の危機は債務危機と金融危機が連鎖する「危険なタンゴ」(ジャン・ピサニフェリー・パリ大教授)が主因だが、金融機関が大量の国債をもつ日本は実は南欧諸国以上に潜在的危機を抱えている。


 危機克服で先進国が採る3本の矢は(1)金融緩和(2)財政健全化(3)成長戦略――である。日本に財政健全化を先送りするゆとりはない。


 安倍政権と日銀は2%の物価目標を政策協定(アコード)にする構えだ。しかし、これで日本経済が「かくも長きデフレ」から脱却できる保証はない。「成長なくしてデフレ脱却なし」である。政策協定の目標は「名目成長」がふさわしい。日銀だけに責任を負わせるのではなく政府と日銀が共同責任を担うべきである。


 イングランド銀行の次の総裁になるカナダ銀行のカーニー総裁は、非常時には物価目標より名目国内総生産(GDP)を政策目標にすべきだという考えを示したが、大いに参考になる。
 カギを握るのは金融緩和の効果を高める成長戦略の実行である。安倍政権は成長戦略を6月に策定するというが悠長すぎる。議論より実行のときである。


 法人税率引き下げは来年度税制改正で実現すべきだ。税制改革こそ政治の出番である。アジアや欧州諸国に続きオバマ政権も法人税率の大幅引き下げをめざしており、日本は法人税の最も高い国になりかねない。

 規制緩和を徹底する必要もある。農業、医療、介護保育など規制改革は新たな雇用を生む。原発ゼロを見直しても再生可能エネルギー開発の重要性に変わりはない。日本は地球温暖化防止とエネルギー戦略の最適解を示す地球責任を負う。


 20年東京五輪を目標に、日本を英語の通じる国にする計画があっていい。国際金融センターへの道はそこからみえてくる。


 地球視野でみれば、成長の源泉は広がる。世界は「メガFTA(自由貿易協定)」の時代を迎えている。危機にあるとはいえ巨大市場、欧州連合(EU)との経済連携協定は重要である。


 アジア太平洋への歴史的なパワーシフトのなかで日本は主導的役割を担う。扇の要として、環太平洋経済連携協定(TPP)と日中韓など東アジアのFTAを結合させる役割である。


 オバマ大統領は米国を「アジア太平洋国家」と位置付けるが、中東依存を減らすシェールガス革命でアジア太平洋シフトはさらに強まる。「TPP参加は日本経済に有益であり、ソフトパワーとして貢献できる」とジョセフ・ナイ・ハーバード大教授は指摘する。TPP参加は日米同盟強化と同義語である。


 日米同盟強化を大前提に尖閣問題でこじれた日中関係を修復する。世界第2、第3の経済大国が経済冷戦から抜け出せないと、リーマン・ショック、ユーロ危機に続く「世界経済危機III」に陥る。中国封じ込めではなく粘り強い対話による日中修復はデフレ脱却への道でもある。
 デフレ脱却をめざす経済戦略を、現実的でしたたかな外交戦略と合体して初めて失われた時代に終止符を打ち、日本再生への地平を切り開くことができる。

 



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