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存在感増す少数派勢力――米国、ヒスパニック人口3割へ(情勢ファイル)

2013年01月07日 22時18分55秒 | 社会経済

2013/01/07 日本経済新聞 朝刊 6ページ

イスラエル アラブ系10倍 政治に新たな課題


 地域や民族、宗教による人口動態の変化がこれまでの国の統治のあり方を揺るがし始めた。接戦だった昨年11月の米大統領選では急増する少数派のヒスパニック(中南米)系住民がオバマ氏再選を支える要因に。民主化が進んだ中東では増加するアラブ系住民が反米運動を強める。数の力で台頭する新興勢力への対応は各国共通の政治課題になりつつある。


 ●オバマ氏再選に貢献 「私の(1期目の)最大の失敗は包括的な移民制度改革ができなかったことだ」。2012年9月、オバマ大統領はスペイン語テレビの番組に出演。自らの誤りを認める異例の表現でヒスパニック系などの不法移民に寛容な移民政策を打ち出す姿勢を示した。


 同11月の大統領選では1000万人を超す同系有権者の約7割がオバマ氏に投票した。米主要メディアもヒスパニック票はフロリダやコロラド、ネバダなど激戦州の勝敗の決定的要因となり、オバマ氏の再選に大きく貢献したと分析した。


 出生率が高い米ヒスパニック系の人口は10年の国勢調査で5000万人を突破。00年比で約1500万人増加し、全人口に占める割合も16%と約4ポイント上昇した。50年には3割に達する計算だ。
 厳しい移民政策を掲げてきた共和党も事態を重視。昨年12月にはイリノイ州議会で不法移民に運転免許証を交付する民主党主導の法案に初めて賛成に転じた。中山俊宏・青山学院大教授は「共和党はヒスパニックに配慮した政策をさらに迫られるだろう」と話す。


 民族や宗教ごとの出生率の差は中東の政治力学も変えつつある。米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、イスラム教徒の人口は2010年で16億人と世界人口の23%に及ぶ。30年には22億人、26%に達する見込みだ。


 変化が顕著なのは人口約770万人のイスラエルだ。大半がイスラム教徒であるアラブ系人口が1948年の建国以来10倍に増え、全人口の2割を占める。ユダヤ人の間では「国家の存立にかかわる」との懸念が募り、両者の対立が深まる。


 エジプトやサウジアラビア、パレスチナ自治区でも雇用拡大が人口増加のペースに追いつかず、20代の失業率は軒並み3割超の水準に上昇。若年層の反米デモは拡大し、イスラム原理主義組織への支持も過去にない広がりをみせている。


 ●ロシア極東では「中国化」 中ロの人口格差も両国関係の火種の一つ。ロシア極東部では91年に約800万人だった人口が他地域への流出などで11年には640万人に減った。国境を接する中国東北部は1億人を超える人口を有し、不法移民が急増。ロシア極東部の中国人は200万人に達するとの推計もある。


 ロシア政府は昨年、26年までに極東部の人口を増加に転じさせる目標を設定。両国の外交筋では、極東部の「中国化」が進めばロシア系住民との間のトラブルが不可避との見方も出ている。(国際部 田中孝幸)


米企業、新市場に注目


 【ニューヨーク=小川義也】米企業が国内で拡大するヒスパニック市場の開拓に力を入れている。ヒスパニックの購買力は2017年に12年比4割増の1兆7000億ドル(約150兆円)に達する見通し。各社は米消費の新たなけん引役を取り込もうと知恵を競う。


 ジョージア大のジェフ・ハンフリー教授によると、ヒスパニックの購買力は12年に1兆2000億ドルと00年の2・4倍。「一国に見立てるとオーストラリアに次ぎ世界14位の経済規模」という。


 国内の「新興市場」を狙う企業は売り込みに懸命だ。米調査会社ニールセンによると、米国内のスペイン語メディアへの広告費支出は11年に57億ドルと前年比11%増。支出額ランキングの上位にはプロクター&ギャンブル(P&G)やマクドナルドなど有力企業が並ぶ。


 メディア間の競争も激化。ニューズ・コーポレーションは昨年8月、米国でスペイン語のテレビネットワーク「ムンド・フォックス」を開局。スペイン語メディア大手のユニビジョンはABCと組み、ヒスパニック向けの24時間ニュースチャンネルを開局する。


 ヒスパニックの生活習慣に合わせた商品も相次ぐ。CATV最大手コムキャストは昨秋、CATVと高速インターネット接続、電話をセットにしたヒスパニック向けプランを発売。スペイン語の番組を拡充したほか、中南米への国際電話を毎月5時間まで無料にした。


 プエルトリコ系の女優で歌手のジェニファー・ロペスさんと契約したブランドを立ち上げたのは米百貨店大手のコールズ。ヒスパニックの女性が好む体のラインを強調した衣服や安価な宝飾品などをそろえた。


 ヒスパニックは00年以降、年収5万ドル以上の世帯の増加率が全人口を上回り、18歳以下の比率も35%とヒスパニック以外(21%)に比べて高い。就職や結婚などに伴う住宅など耐久消費財の需要も高いと期待される。


【図・写真】米ヒスパニック系の人口は2010年に5000万人を超えた=AP



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