ほぼ日刊、土と炎、猫と煙突

白く燃え尽きた灰の奥深く、ダイアモンドは横たわる。

犬泥棒

2005年04月02日 23時35分35秒 | 古い日記
何か1つの事を思い出して書くと、連鎖的に別の話を思い出したりするな。

大抵の場合、「忘れていた何か」とは、
「そのまま忘れていた方がマシ」なんだけど。

そんな話に、今夜も暫く付き合ってもらおう。

と、ある日の事だ。
近所で犬の鳴き声がする。かなり執拗に鳴いているので、
俺が外に出てみると、ダッシュで走って逃げていく、
小さな犬の後ろ姿だけが見えた。

俺と同じように、鳴き声に釣られたのだろう。ご近所のご老人も出ていた。
(知らん人だけど)
老人は俺に話しかけてきた。

「あれ、お兄ちゃん(実際はお兄ちゃんという歳でも無かったけど)の犬かい?
 違う?ああ、そう。野良犬かね?首輪してなかったようだけど。ああ、そうそう。
 ワシんちにも犬が居たんだよ。でもねえ。一歳ちょっとになった時、
 居なくなっちまったよ。

 え?
 『その犬は、豆柴犬みたいな赤犬で、大きさは50センチくらいじゃなかったか?』だって?
 そうそう、そうだよ。うん。あれでも成犬だったんだ。」

 (何故、その犬の特徴を俺が詳しく知っているのか?
  そのご老人は、全く不信に思わないようだった)

「...きっと、誰かに盗まれたんだよねえ。首輪も付けていたのに。
 え?そうそう。3年前の、1月だったよ。そうだ。そうだ。」

その誰かと言うのは99%の確率で俺の叔父だ。

非常に、悪い言い方をすれば...
正月に焼き肉をやって手なずけてから、茨城にさらっていった。

もっとも、「宴会に紛れ込んだ迷い犬」の方が、帰ろうとした叔父のパジェロに
勝手に乗り込んで降りようとしなかったので仕方無く...とも言える。

まあ、「どっちもどっち」だ。
が、どちらかと言えば「一番の被害者はこのオジイサンだ」と思った。

「ワシの家か?そこだよ。そこの白い門の家じゃ。(じゃなんて言わなかったな)」
疑う事を知らないそのご老人は、俺の質問に答えて、去って行く。

誰が悪いわけでも無い。(いや、悪いよ)

が、かの老人は今でも犬の鳴き声を聴くと、「帰ってきたのか?」
と反射的に思うに違い無い。(いや、俺の想像だけど)

俺は罪悪感に耐え切れず、手紙を書いた。

「元気に暮らしています。心配しないで下さい。」
(こういう時は、あまり、余計な事は書かない方が無難だ)

その犬の「今現在の写真」もあったので(何故か?数ヶ月前、叔父が持ってきた)
それも添えて、「白い門の家」のポストに投函した。。
(勿論、手紙や写真からは指紋を丁寧にふき取った)

以来、老人とは会っていない。(って言うか、俺が避けている)

*因みに、写真の犬は違うよ。

逃亡者

2005年04月02日 00時41分55秒 | 古い日記
あまりパッとしない作家だった。(らしい)
が、そういう人の作品というのが、逆に興味をそそられる事がある。

名前は覚えていないけど、イギリス人の大衆作家だったかな。

その人が、唯一「ちょっと世間に知られた小説」(タイトルすら忘れた)
が、以下のようなストーリーだった。(らしい)

寒村の、ある貧しい漁師が海で嵐に遭い、遭難した。

彼が何年も費やして、命からがら故郷に帰りつくと、
かつての妻は別の男と再婚しており、幸せな家庭を築いていた。

結局、彼は妻の前に現れる事はなく、身を引き、静かに余生を過ごす。

まあ、「作家の紹介」みたいな人名辞典で知っただけだけど、
「これが最高傑作かよ?」と言いたくなるような作風からも、
この作家の人生、「推して知るべし」なんだろう。

...しかしだ。「リアリティが無く、安直」と馬鹿にしたもんじゃ無い。
と反省する日がやってきた。

ある日、俺の飼猫が、夜中になっても戻ってこなかった。
2日くらいは、帰ってこない時もあるので最初は気にしなかったが、
5日経つと、心配になり、10日経つと不安になり、
11日目には捜索活動を開始した。

八方手を尽くしたが、その後、一月たっても発見できず、半ばあきらめていた。

その時、
(まあ、この辺でオチは読めてしまったと思うが...)
一応、結末を言おう。

ヤツ(俺の猫)は、俺の家からかなり離れた場所で、
「ウーラ」と言う名で呼ばれ、(裏にいた、からだそうだ)
OL、女子大生、女子高生、の3姉妹を持つ一家が大事に飼っていた。

俺は、この3姉妹の為に、
「静かに身を引いて余生を送る」べきか?
ちょっと悩んだよ。
(いや、別に余生って程のもんじゃないけど)

結局、事情を話したら、
「やっぱり、飼い猫だったのかあ。よかったですね。」
と明るく笑いながら、返してくれたけど。

ご両親曰く、
「中でも一番かわいがっていたのは末の娘なんですよ。」
だそうだけど。

その肝心な「末の娘」がいない時に、
俺が現れ「連れ去ってしまった形」になってしまった事は、
今も後悔している。

お会い出来なかったけど、
上のお姉さん達の顔から察するに、「かなり可愛かった」筈だ。