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映画『フード・インク』Food, Inc.(2008年、アメリカ):一握りの食料関連企業(フード・インク)がフードシステムを支配する!種子からスーパーまで!

2019-06-27 09:19:29 | 日記
(1)ファンタジーと現実!
「昔のままの農家」のイメージはアメリカに、現実にはない。ファンタジーを信じるようなものだ。
《感想》ファンタジーと全く異なる現実を明らかにするのが、この映画の目的だ。なおフード・インクとは食料関連企業のことだ。
(2)スーパーに四季はない!
米国のスーパーの商品は平均4万7000種。スーパーに四季はない。《感想》温室で石油を使って作る。あるいは世界から輸入する。
(3)食肉に骨がない!
スーパーで売られる食肉に骨がない。《感想》これは不思議なことなのに、不思議と思わない消費者。想像力が必要だ。生きている豚・牛・鳥には骨があるのだから。以下で、食肉生産企業の現実が、この映画で明らかにされる。

(4)フード・インクが、生産過程を隠す!
生産者(フード・インク)と消費者の間にカーテンがある。フード・インクが、生産過程を隠す。①「知ると食欲が失せるから。」また②添加物で食品は危険だ。
(4)ー2
食肉は巨大な多国籍企業(フード・インク)で作られる。牛も豚も鶏も「工場」で生産される。牧歌的な農村・牧場は今、例外的にしか存在しない。食品は工場の流れ作業で生産され、家畜も労働者も虐待される。
《感想》動物にも魂があると考えるべきだ。仏教的な生類への敬意が必要だ。

(5)批判し事実を話す者を訴訟で黙らせる!
一握りの多国籍企業がフードシステムを支配する。種子からスーパーまで。そして企業は、事実を隠すため農民に事実を話させない。
(5)ー2
企業(フード・インク)は、批判し事実を話す者を相手に、片っ端から訴訟を起こす。訴訟には時間と金がかかる。訴訟を起こされた者は、仕方なく和解に応じる。
(5)ー3
企業(フード・インク)を批判した農家は、友人も失う。長い者に巻かれないと、生きていけない。反逆した者と仲良くして企業から睨まれるのがいやで、友人たちは彼から離れ話もしない。
《感想》企業(フード・インク)は、むき出しの権力そのものだ。権力に刃向かって生きることはできない。

(6)ファースト・フード:マクドナルドのハンバーガー!
ファースト・フードが、フード・システムを決定的に変えた。その最初がマクドナルドのハンバーガーだ。工業フードシステムの開始だ。マクドナルドでは、経費削減と簡素化がなされる。①ウェイトレスを解雇、②メニューを絞り込む、③レストランの調理場に工業システムを導入する。③-2 従業員は1つの作業だけ繰り返す。単純作業で熟練はいらない。③-3 労働者はいつでも交換可能となる。③-4 単純作業で賃金も安い。③-5 代わりの労働者もすぐ見つかる。
(6)ー2
かくて「安くてうまい」のでハンバーガーは売れる・儲かる。マクドナルドは大成功した。商品が標準化され、どこで食べても同じように安くうまい。

(7)巨大な買い手(ファースト・フード)と巨大な売り手(フード・インク)!
マクドナルドに代表されるファースト・フード・ハンバーガー会社は、牛挽き肉の巨大な購入者となる。かくて挽き肉製造法が巨大購入に対応できるよう、徹底的に変わる。ポテト、レタス、トマト、リンゴの製造法も変わる。豚肉、チキンの製造法も徹底的に変わる。
(7)ー2
つまり巨大な買い手(ファースト・フード)が、巨大な売り手(フード・インク)を求める。かくて今、一握りの企業がフードシステムを支配する。例えば、1970年代は牛肉大手5社が市場占有率25%。今は大手4社が80%以上を押さえる。豚肉も同じような状態だ。すなわちこうして製造された精肉が売られている。

(8)養鶏場は「カネの匂いがする」!
食肉業界を支配しているのは、わずか3ー4社。例えば、タイソン社は養鶏を根底から変えた。雛は50年前の半分の日数(48日)で2倍に育つ。また消費者が好む胸肉が大きい。
《感想》鶏は魂のある生き物でなく、無生命の物にすぎない。
(8)ー2
「生きた鶏」を育てるのでなく、「物」である食料を生産する。コストがもっとも少なく効率的に生産する。たばこ産業の衰退後、南部の農家は養鶏に乗り換えた。養鶏場は「カネの匂いがする」とタイソン社の契約農家はご機嫌だ。
《感想》そして食肉加工場は大量殺戮マシーンだ。(Cf. ナチスの殺人工場を思い出させる。)
(8)ー3
鶏はタイソン社の科学の成果で49日で育つ。3ヶ月も待たないでよい。だが鶏はいつも薄暗がりにいる。タイソン社はその状況を見せない。鶏がひどい状況に置かれて消費者がショックを受けるからだ。①密集状態で飼育される。②骨や筋肉が、急激な成長に耐えられず、ほとんどの鶏は数歩歩くと倒れる。自分の体重を支えられない。③かなりの数の鶏が死ぬ。④大量の抗生物質が使われる。(飼育者も抗生物質のアレルギーになる。)⑤眠っている鶏を集鶏。暴れないから捕まえやすい。鶏は生き物なのに物としてコンテナに投げ込まれる。⑥集鶏作業には南米人の不法就労者が多く働く。権利を主張せず、言うことを聞き、賃金が安い。
(8)ー4
養鶏農家は、設備投資で借金しているので会社の言いなりだ。しかも会社は「新しい機械を導入しろ」と言ってくる。農家は断れない。断ると契約を打ち切られる。「まるで企業の奴隷だ」。

(9)工業的に生産された食品のほとんどがコーンを原材料にする!
アイオワ州のコーン畑にすべての食物がつながる。工業的に生産された食品のほとんどがコーンを原材料にする。コーンが世界を征服した。
(9)-2
種子メーカーがコーンの生産量を増大させた。「除草剤と殺虫剤が効かないコーン」を開発した。米国の農地の30%がコーン畑だ。コーンは、政府の補助金で安く生産できる。そして生産過剰だ。
(9)ー3 
政府の補助金があるのは、カーギル社など穀物多国籍企業が、農家から安いコーンを買いたがるからだ。
(9)ー4
企業は大量のコーンの用途を開発した。「高果糖コーンシロップ」が画期的だった。スーパーの食料製品の90%にコーン成分が含まれる。コーンはでんぷんの固まりだ。乳化剤・抗酸化剤もコーンから作られる。

(10)コーンは家畜飼料の主要原料だ!大腸菌O-157汚染!
コーンは家畜飼料の主要原料だ。鶏・豚・牛・養殖魚がコーンで育つ。安価なコーンのおかげで食肉価格が下がった。安い穀物飼料!
(10)ー2
穀物飼料が、コーンへの補助金のせいで、飼料作物より安い。かくて全農家が穀物飼料を使う。そしてコーン飼料による集中家畜飼育場(CAFO)がある。
(10)ー3
だが牛はコーンを食べるようにできていない。安いという理由だけで、「草」でなく「コーン」で育てる。牛の第1胃の中でコーンが、大腸菌を突然変異させO-157を生み出した。
(10)ー4
集中家畜飼育場(CAFO)で牛は糞尿の中に立っており、大腸菌O-157の汚染があっという間に広がる。
(10)-5
1993年、ハンバーガーの肉の大腸菌O-157汚染で2歳の男子が死んだ。またO-157の汚染で挽き肉の回収もしばしば行われた。ほうれん草など葉物野菜の0-157汚染も起きた。
(10)ー6
だが農務省長官が牛肉業界のロビイストのチーフ、食品医薬品局(FDA)長が全米加工食品業界副会長だったりする。FDAの安全検査は大幅に減った。監督機関の手抜き。企業の言いなり。
(10)ー7
食肉処理場(屠畜場)は、1970年代には何千もあったが、今は13になった。このため汚染が急速に広がりやすい。
(10)-8
バーバラ・コワルチクは、6年前、2001年息子の2歳半のケヴィン(男子)がO-157に感染し2週間で死亡したことをきっかけに“食の安全”提唱者となった。ケヴィンはハンバーガーを食べた。腎臓の機能不全で死亡。「同じ悲劇を繰り返し発生させたくない。」「外に出て語るしかない。」「企業に責任と謝罪を求めたいが、彼らはそれをしない。」今、食品安全基準を求める運動が停滞している。FDAの予算も減らされた。
《感想》企業(フード・インク)は裁判で、息子が亡くなった原因である大腸菌O-157の感染経路は「ハンバーガーでない」と主張するだろう。
(10)ー9
1998年、農務省がサルモネラ菌と大腸菌O-157の検査を提唱し、また「操業停止を命令できる」とした。しかし食肉家禽協会が農務省を提訴。裁判所は「農務省に操業停止の権限がない」と判決。新法“ケヴィン法”(O-157で亡くなった男の子の名に由来)が成立すれば農務省は「操業停止の権限」を持てる。“ケヴィン法”は6年間たってまだ成立しない。消費者は少し高くても「安全なら買う」が、食品産業チェーンは「経費が増える」ので反対する。

(11)工業フードシステムは効率性を追求する!
工業フードシステムは効率性を追求し、それが問題を引き起こしてきた。
《感想》「何のため、誰のための効率性か」が問題だ。効率性を追求しない生き方もある。同一の商品で価格が高いと企業は競争に勝てない。かくて効率性を求める。
(11)ー2
牛に「コーンの飼料」の代わりに、5日間「草」を与えれば大腸菌の8割は死滅する。だが企業はそうしない。
(11)ー3
ビーフ・プロダクツ社。全米各地の全工場を管理するオペレーターセンターを持ち、全工場の設備をコントロールできる。アンモニアによる消毒でO-157の発生を抑えるように改善。(Ex. ハンバーガーのパテ。)機械工である経営者は機械の設計に誇りを持つ。
《感想》機械の設計に誇りを持つ者は、「牛に草を食べさて大腸菌を殺す」という発想をしない。これは、価格の問題とは別だ。

(12)ハンバーガーが低所得階層の生活を支える!糖尿病の問題!
ハンバーガーの1ドル・メニューが低所得階層(Ex. ヒスパニック層)の生活を支える。新鮮な野菜が高くて買えない。ハンバーガーの食生活は、糖尿病を引き起こす。ヘルシーな食生活は高価だ。
(12)ー2
国の助成金により高カロリー食品(Ex. ハンバーガー)が安い。スナックの高カロリーは原料から来る。小麦・コーン・大豆のカロリーだ。スナック食品が安い。所得水準が、肥満の最大の予測因子だ。現在の人類はカロリー過多だ。肥満は個人の責任とばかり言えない。
(12)ー3
人々は、「塩、油、砂糖」の3つの味を自動的に選ぶよう食品の設計で誘導される。自然界にまれな3つだ。砂糖は安価に大量に手に入る。高果糖や炭水化物の食事はインスリンの分泌を促し、糖を代謝する機能を落とす。かくて糖尿病(Ex. 視力を失う)になる。糖尿病の薬は高く低所得層には大きな負担だ。(Ex. 4人家族で父・妹が糖尿病。)今、糖尿病は成人病でなく、子供にも増えている。2000年以降、米国民が糖尿病になる比率は1/2、マイノリティ(Ex. アフリカ系、ヒスパニック)では1/3。

(13)持続可能な農業・牧畜:ポリフェイス農場(J.サラティン)!
ポリフェイス農場(ヴァージニア州)は、昔ながらの農業・牧畜を行う。工業的農業のように、「より速く、より大きく、より安く」は追求しない。大腸菌O-157・糖尿病と無縁になれる。生態系全体の健康を考える。「本来、農家が決めるべきことを、外部に任せ、外部が勝手に決めるのはおかしい。」「大企業が決め、その上、結果に責任をもたない。」(J.サラティン、J.Salatin、ポリフェイス農家)
(13)ー2
牛、豚、鶏(肉用/採卵用)を草で育てる。「草が基本だ。ここの牛は谷間で草を食べる。」「コーンを餌にすると、収穫と輸送の手間が要る。糞尿の始末も必要だ。ここでは自然が糞尿を始末し、それが草の栄養になる。すべてが自然に循環する。持続可能だ。」(J.サラティン)
(13)ー3
「工場フードシステムは、騒々しく、臭く、人間に優しくない。」「技師は、工場に人を寄せ付けない。醜い真実が見えてしまうからだ。」「巨大加工工場をガラス張りにすれば、この国のフードシステムは変わる。」(J.サラティン)
(13)ー4
ポリフェイス農場では、鶏の首を一羽ずつ手でしめ、血抜きする。「人はあまりに切り離され、何も知らなさすぎる。」「農務省は開放型で不衛生だと言うが、工場より大腸菌の数が少ない。」(J.サラティン)
(13)ー5
「これで世界が養えるのか?」と批判される。しかし「この農場は効率的だ。工業システムは全体として非効率だ。」「卵も1ダース3ドルで安い。」(J.サラティン)
(13)ー6
自然の中で育つ豚もかわいい。工場フードシステムは「技術屋の文化」、「技術漬け」だ。「豚を生命のないモノとして扱う。」「人間が勝手に操作できると思うような文化は、豚を見るように侮蔑的に傲慢な目で人間も見るだろう。」(J.サラティン)

(14)世界最大の食肉処理工場!(スミスフィールド)
スミスフィールド豚肉加工工場(ノースカロライナ州)。世界最大の食肉処理工場。①労働者をうまく選び、搾取する。80キロ圏から労働者を輸送する。アフリカ系、ヒスパニックが多い。「会社は労働者を豚と同じと思っている。」「豚はすぐ殺されるから快適かどうかなど考えない。」「労働者も同じ。長期雇用など考えない。」
(14)ー2
②処理フロア。1日1万2000頭の豚を処理(と殺)する。圧死させる。
《感想》圧死は極めて残酷だ。見るにたえない。絵本に出てくるようなかわいい豚を生きたままつぶして殺す。時間としては2秒程度だ。大きな鉄の板で挟んで殺す。ほぼ一瞬だから苦痛は少ないかもしれない。
③労働者は大量の内蔵を手で扱うため、爪が細菌に感染し全部はがれ落ちる。豚の血と便と尿にまみれケガしやすい。延々と単純作業で労働者は”生きた機械”にすぎない。④だが「辞められない」と会社は知っている。「脅しをかける」。
(14)-2-2
⑤100年前は東欧からの移民がと殺作業に従事しひどいものだった。しかし事態はゆっくり改善されていった。ルーズベルト大統領も動き、労働組合も組織されやがて優良産業となった。1950年代に食肉業界は自動車業界と同水準になった。賃金・手当・年金あり。⑥しかし今やそれは、根底から崩壊した。
(14)ー3
ファーストフード業界の要望を満たすため、食肉会社は巨大化した。
①IBPなどの食肉会社はファーストフード業界の労働形態のまねをした。賃金カット、組合はない、作業の迅速化、同じ作業の繰り返し。いまや食肉業はもっとも危険な仕事のひとつだ。
②不法移民とメキシコからの新移民を大量に採用。
③メキシコのコーン農民が、NAFTAによる安いアメリカのコーンで失業し、アメリカに流入した。NAFTA で150万人以上のコーン農民が失職した。
④IBPやモンフォートのような食肉会社は、メキシコ内で雇用を始めた。バスで労働者を工場に運ぶ。政府は不法移民の雇用に目をつぶってきた。
⑤移民反対運動が起きると政府は取り締まりを始めた。企業でなく労働者を取り締まる。会社と移民局は合意ができていて逮捕者は例えば1日15人、大がかりな検挙はない。生産ラインに影響を与えない。(Ex. スミスフィールド社)
⑥会社の重役は逮捕されない。従業員が逮捕されても会社は何もしない。
⑦これらが、安いハムやベーコンのために払う代償だ。
《感想》2013年、中国の食肉加工業者、双匯(ソウカイ)国際が米国最大の豚肉加工業者、スミスフィールド・フーズ(SFD)を71億ドルで買収すると発表した。中国、おそるべしだ!

(15)ポリフェイス農場(J.サラティン)(続)
食品工業製品に正直な値段が付いていない。①本当はとても高いのに、コーンには政府から助成金がでている。これは税金だ。さらに②環境コスト、③社会コスト(Ex. コーン輸送のための鉄道・道路整備)、④健康コストも、カウントすべきだ。
(15)ー2  
J.サラティンがさらに言う。①「手を広げる気はない。」「僕の望みは世界最高の製品を作ることだ。」「そうすればもっと大勢の人が買いに来てくれる。」②「十分な量の安全なものを作れる道がきっと見つかる。」③「ウォルマートで売る気は全くない。」「そんなふうに手を広げたとたんに客や商品を違う目で見るようになる。経営の見方が変わる。」④「すべてを別の見方で、別の視点で見ることが大事だ。」
《感想》J.サラティンは、「カネの崇拝、物神崇拝から抜け出せ」と主唱する。

(16)ストーニーフィールド社(G.ハーシュバーグCEO):環境保護論者!
健康自然食品展示会(カリフォルニア州)で、G.ハーシュバーグ(G.Hirshberg)ストーニーフィールド・ファームCEOが言う。①オーガニックは年に20%の伸びだ。食品産業の最成長分野だ。②資本主義を否定するような極端なことはしない。③今は地球温暖化を止めるべきだ。④「利益を無視して最高の食品を作る」とか、「完璧なシステムの食品しか買わない」とかはしない。⑤ビジネスが、地球環境を破棄している元凶だ。私は環境保護論者だ。
(16)ー2
かつて学生の頃、反逆の生物学者集団「ニュー・アルケミー」に出会った。一種の新興宗教団体だ。食料の開発、代替治療法に励んだ。しかし仲間内だけにととどまり、本当に伝えるべき人々にメッセージが届かなかった。
(16)ー3
ファームは7頭の牛から出発した。①このビジネスが環境問題の解決法の一つになり、同時に高収入になると証明したかった。2008年現在、全米3位のヨーグルト・メーカーだ。トップの収益を上げている。②ストーニーフィールド社は、230億ドルの食品コングロマリット・ダノン社と提携。③僕らと同じように始めた有機(オーガニック)の会社がたくさんある。
(16)ー4
④有機の会社が成功した理由は?「大企業は、有機栽培をせず有機の会社と提携するからだ。」コーク、ぺプシ、ケロッグなどみんな有機になだれ込んでる。
(16)ー5
⑤ウォルマートに有機コーナーができた。「興奮するよ。夢見てきた。大企業と膝を交えて、有機と持続可能な農業について語る日を。」(G.ハーシュバーグ)⑤ー2 「ウォルマートは評判に敏感だ。即座に行動する」と酪農品買い付け主任が言う。「消費者が求めているものを売りたい。」ウォルマートにとっては「有機も儲けのためだ。」

(17)1980年代に最高裁が種子の特許権を認めた:モンサント社による大豆種子の独占!
20世紀には農民1人が養うのは6ー8人。現在(2008年)アメリカの平均的農民は126人養う。歴史的に最も生産的な人々だ。だが農民の生活は劇的に変わった。最良の種を残しそれを翌年、植えることができない。1980年代に最高裁が種子の特許権を認めた。作物の特許を認めた。
(17)ー2
モンサント社は化学薬品会社。DDTやベトナムの枯れ葉剤を作った。除草剤“ラウンド・アップ”を開発。その除草剤に耐性をもつ遺伝子組み替え大豆も開発。1996年、モンサントが耐性大豆を売り始めた。当時、同社の特許遺伝子を持つ大豆は全米の2%だった。しかし現在(2008年)は90%だ!
(17)ー3
かくて農家は種子の保存が禁止された。農家はその発想に「ムカついた」。しかし結局は諦める。モンサントは偵察チームを持ち、違反者を調査する。密告もさせる。農家の調査と訴訟に専従する75人のスタッフがいる。(調査するのは元軍人や元警官だ。)種子を保存する者は「特許権侵害」で捜査される。「種子洗浄」したかどうかが調査される。種子洗浄業者はみんな辞めた。
(17)ー4
モンサントの大豆に乗り換えない農家の場合。遺伝子組み替え種子(GMO)に汚染されると、農家の側に特許侵害でないことの説明責任がある。「種子の遺伝子を組み替えて特許をもつ」という恐るべき事態だ!
(17)ー5
かつては公立機関が“公共の種子”を育種した。モンサントは、コンピューターのマイクロソフトに似る。食べ物の知的財産を独占する。“公共の育種”は過去の話だ。今は“公共の種子”はないに等しい。
(17)ー6
①モンサントに協力しない農家に、非協力農家のリストが郵送されてきて脅される。②特許権侵害を扇動したとしてモンサントから告訴される。②ー2 しかし訴訟費用に耐えられない。(Ex. 出廷しないがすでに2.5万ドル請求される。)②ー3 50年来友人だったものが今は口もきかない。(怖がっている。)③「闘うより罰金を払うほうが安い」と、結局モンサントと和解するしかない。③ー2 正しくても「間違ってた」と認める。④モンサントは、影響力ある農民をつぶせば、他の農民を脅せる。⑤正義の秤(ハカリ)にカネを積んで多いほうが勝つのだ。司法制度はそうやって動いてる。⑥「長いものには巻かれる」しかない。農業をやりたきゃ、モンサントと寝るのだ。⑥ー2 モンサント社が、種子からスーパーまで大豆を握る。

(18)フード・インクやファーストフードと、政府・司法とのつながり!
モンサントと司法関係者はつながっている。またブッシュ政権もクリントン政権もモンサントと緊密な関係があった。かくて1980年代、農民の種子保存を禁止することについて、政治的議論が行われなかった。多くの専門家も取り込まれた。
(18)ー2
①「クローン肉」についての表示を求めると、これは消費者に無用な恐怖を持たせるので非表示でよいとされた。②ファーストフード業界は「カロリー表示」に反対した。③「トランス脂肪酸」(LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールを増やす)も非表示。④精肉業界は「肉の産地表示」を阻止。⑤「遺伝子組み替え」も非表示。だがスーパーの商品の70%に遺伝子組み替え素材が入っている。これら(①~⑤)は消費者の権利の重要な闘いだ。“食”について知る権利がある。
(18)ー3
企業は製品を批判することさえ犯罪にした。①「O-157で息子を亡くした母親」(バーバラ・コワルチク)を「風評被害法」で企業が訴えた。「食肉業界が私を追跡しているかも知れない」と発言を恐れる。
(18)ー4
②狂牛病についてテレビでしゃべったオプラが、食肉業界に訴えられた。「バーガーが食べられなくなる」と言った。テキサスの牧畜業者が、「風評被害」でオプラを告訴。6年の歳月と100万ドルをかけ、オプラ勝訴。(※オプラは人気司会者で1996年、トーク番組で狂牛病をとりあげた。)③コロラドでは「風評被害法」違反は重罪。コロラド産の挽き肉を批判すれば、刑務所に送られかねない。
(18)ー5
企業は、多くの弁護士を抱え、負けると分かっていても批判者訴える。教訓のために。つまり嫌がらせだ。

(19)効率至上主義のフードシステムの脆弱性!
フードシステムは効率至上主義だ。だが脆弱(ゼイジャク)性がある。①ごく少数の作物をごく小種類、少数の企業が生産する。危険の分散がなされていない。②現代の工業農業は大量の石油に依存する。「僕らは石油を食べてる!」②ー2 工場等の機械・輸送も石油が必要だ。石油価格の高騰といったショックに脆弱だ。③助成金のない外国に穀物を安く輸出。外国の農業を破壊し、食糧危機が発生する。各国は備蓄を持たない。④豚の大量の排泄物が川に流される。サルモネラ菌による汚染。

(20)消費者は実は影響力を持つ!システムを変えるための方策!
消費者は実は影響力を持つ。①消費者は、商品が地産か有機かなど選ぶ。②例えば、成長ホルモン不使用の牛乳をウォルマートが販売する。消費者が好むから。個人の消費者が最大企業を変えた。③このようにして、合成成長ホルモンも使わなくさせる。④よいものを食べるのは高くつく。④ー2 もちろんお金のない人たちもいる。④ー3 だから政策レベルの変革が必要だ。チップスより人参が売れる(安くなる)ようにしなければならない。⑤巨大企業に個人が挑むことができる。たばこ産業は個人の力で終焉した。企業の無責任に対抗できる。
(20)ー2
ゴールは何か?①「病院に行く人の数が減る」のが成功だ。それが国政の成功だ。②栄養価の高い無添加食品を作る。それを食べるとご機嫌で、元気になり、病気にかからない。(J.サラティン)③同情でなく、変革の手助けがほしい。(O-157で子供を失った母親)④農家は消費者がほしがるものをがんばって送り届ける。⑤労働者、動物、環境に優しくすることがゴールだ。
(20)ー3
システムを変えるための方策。①商品は、「労働者、動物、環境」を大事にする企業から買う。②スーパーに行ったら「旬のもの」、「有機食品」を買う。③「成分」を知る、「ラベル」を読む。④農家から店まで食肉は平均2400キロ運ばれる。(石油が消費される。)だから「地産食品」を買う。農家の「直販」で買う。⑤「家庭菜園」を楽しむ。⑥家族みんなで「料理を作り」、家族そろって食べる。(※レトルト食品はやめる。)⑦「健康な食品」は私たちの権利。⑧フードスタンプを「直販」で使えるようにする。⑨「健康な給食」を教育委員会に要求する。⑩「FDAと農務省」は健康を守るか?⑪「食品安全基準の強化」と「ケヴィン法」を議会に求める。(※2011年、ケヴィン法を反映した「食品安全近代化法」にオバマ大統領が署名・発効。)⑫私たちと惑星の健康を守る食物を望む。⑬世界は変えられる。一口ずつ。変革を心から求める。
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