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金子武蔵『ヘーゲルの精神現象学』I 序論(二)「ヘーゲル哲学における『精神現象学』の位置」:『エンチュクロペディー』が正式の体系総論だが、『精神現象学』もはるかに精彩に富む体系総論だ!

2024-03-15 14:37:40 | 日記
※金子武蔵(カネコタケゾウ)『ヘーゲルの精神現象学』ちくま学芸文庫(1996)(Cf. 初刊1973)

I 序論(二)「ヘーゲル哲学における『精神現象学』の位置」 
(3)ヘーゲル(1770-1831)の生涯の略年譜①(1789-1800年、19-30歳):ヘーゲルは1789年、フランス革命を喜び迎える!1796-1800年、26-30歳はヘーゲルのロマンティシズムの時代で、運命、愛、和らぎというようなことが話題になっている!(39-42頁)
★ヘーゲルはヴュルテンベルク公国(現在のドイツに属す)の首都シュトゥットガルトに生まれた。父はカール・オイゲン公の財務官。母の生家は君公に対抗するほどの勢力を持つ民会の役員だった。家庭には新教徒の敬虔な雰囲気があった。(39-40頁)
☆両親との関係から政治と縁の深い家柄で、ヘーゲルは若い頃から、宗教のほか政治にも深い興味を持っていた。
☆ヴュルテンベルクは多くの学者・詩人(例えば、ケプラー、シラー、シェリング、ヘルダーリン)を出しており、ヘーゲルはこの故郷を誇りにしていた。

《参考1》ケプラー(1571-1630)「ケプラーの法則」を発見した。「ケプラーの法則」は惑星の運動に関する三つの法則である。(1)第一法則。惑星は太陽を焦点とする楕円軌道を描く。(2)第二法則。一つの惑星について惑星と太陽とを結ぶ直線(動径)は、一定時間に常に同じ面積を描く。面積速度一定の法則。(3)第三法則。惑星の公転周期の二乗は、太陽からの平均距離の三乗に比例する。調和の法則。「ケプラーの法則」はニュートン(1642-1727)の万有引力発見のもとになった。

《参考2》シラー(1759-1805)ドイツの詩人、劇作家。処女戯曲「群盗」を書き、ゲーテと並び個性解放の文学運動シュトルム・ウント・ドランクを代表。のちカント哲学の影響をうけ、歴史の流れと個人の自由の葛藤を描いた歴史劇のほか、思想詩、美学論文などを残す。
Cf.  ベートーヴェン(1770-1827)『第9交響曲』「歓喜の歌」(1824):フランス革命(1789)直後、シラーの詩「自由賛歌」がラ・マルセイエーズのメロディーでドイツの学生に歌われていた。その後、シラーが書き直した「歓喜に寄せて」(An die Freude )をベートーヴェンが歌詞として引用、書き直したのが「歓喜の歌」だ。ベートーヴェンは1792年にこのシラーの詩の初稿に出会い感動して曲を付けようとしたが、『第9交響曲』は1824年に完成した。

《参考3》シェリング(1775-1854)ドイツ観念論とロマン主義の立場に立つ哲学者。5歳年長のヘーゲルおよびヘルダーリンと親交を結び、フランス革命への熱狂的な共感を共有した。主客の根源的同一性を原理とする「同一哲学Identitätsphilosophie」を打ち出し,ヘーゲルに影響を与えた。晩年のシェリングは,神秘主義に傾く。

《参考4》ヘルダーリン(1770-1843)チュービンゲン大学で神学生としてヘーゲル、シェリングとともに哲学を学ぶ。1789年のフランス革命に感動。卒業後は各地で家庭教師をしながら詩作を行った。30代で統合失調症を患いその後人生の半分を塔の中で過ごした。生前はロマン派からの評価を受けるが、大きな名声は得られなかった。しかし古代ギリシアへの傾倒から生まれた汎神論的な文学世界は、ロマン主義、象徴主義の詩人によって読み継がれ、またニーチェ、ハイデッガーらにも影響を与えた。

★ヘーゲルは1790-1793年(20-23歳)チュービンゲン大学神学科在学。(神学科といっても、今の日本では哲学科にあたる。)シェリング、ヘルダーリンも在学。彼ら3人は1789年、フランス革命を喜び迎えた。(40-41頁)
☆1793(秋)-1796年(23-26歳)ヘーゲルは、スイスの名門シュタイガー家で家庭教師をつとめる。この頃は哲学を勉強した人は他に就職口もないので家庭教師になるのが普通だった。(カント1724-1804、フィヒテ1762-1814、ヘルダーリン1770-1843、皆然り。)

《参考5》フィヒテ(1762-1814)ドイツの哲学者。カント哲学から出発して、自我の実践性を理論的に基礎づけ、倫理的色彩の濃い思想体系を樹立。ナポレオン占領下のベルリンでの講演「ドイツ国民に告ぐ」(1807-08)は有名。

★1796年(26歳)、ヘーゲルは故郷シュトゥットガルトに帰る。ヴュルテンベルク公国において政治的改革を実施すべしとの激越な政治パンフレットを書く。(41-42頁)
☆1796-1800年(26-30歳)、ヘーゲルはフランクフルト市の銀行家ゴーゲル家で家庭教師をつとめる。この頃はヘーゲルのロマンティシズムの時代で、「運命」、「愛」、「和らぎ」というようなことが話題になっている。

(3)-2 ヘーゲル(1770-1831)の生涯の略年譜②(1801-1807年、31-37歳):イエナ大学私講師、員外教授時代!「全哲学」即ち「思弁哲学(論理学・形而上学)と実在哲学(自然哲学・精神哲学)」!(42-46頁)
★イエナ大学でのヘーゲルの講義題目は例えば「1804-05年冬学期」は「全哲学」即ち「思弁哲学(論理学・形而上学)と自然哲学と精神哲学」。(44-46頁)
☆ヘーゲルは「1805-06年冬学期」から、「思弁哲学(論理学・形而上学)」に対して、「自然哲学と精神哲学」は「実在哲学」と呼び内容的な哲学となる。またヘーゲルがこの冬学期に「哲学史」の講義を行なったことは『精神現象学』にとって重大な意義を持つ。というのは『精神現象学』はヘーゲル哲学の「認識論的序説」であると同時に「歴史哲学」だからだ。(45頁)

(3)-3 ヘーゲル(1770-1831)の生涯の略年譜③(1807-1831年、37-61歳・死):『精神現象学』(1807)・『大論理学』(1812-16)! (46-47頁)
★イエナ大学が閉鎖され、1807-08年(37-38歳)、ヘーゲルはバンベルク市の新聞 Bamberger Zeitung を主宰。へーゲルがこの職を選んだのは、元来政治に興味があったことを示している。(46頁)
☆1807年(37歳)『精神現象学』。
★1808-1816年(38-46歳)、ヘーゲルはニュールンベルクのギムナジウム校長をつとめる。(46頁)
☆1812年(42歳)『大論理学』第1巻第1部。
☆1813年(43歳)『大論理学』第1巻第2部。
☆1816年(46歳)『大論理学』第2巻。

(3)-4 ヘーゲル(1770-1831):ハイデルベルク大学教授&ベルリン大学教授!『エンチュクロペディー』(1817)・『法哲学』(1821)!(47-48頁)
★1816-1818年(46-48歳)ハイデルベルク大学教授。(46-47頁)
☆1817年(47歳)『エンチュクロペディー』初版。
★1818-1831年(48-61歳)ベルリン大学教授。(47頁)
☆1821年(51歳)『法哲学』。
☆1831年(61歳・死)英国選挙法改正の論文。(1830年フランスに7月革命があって、この波がドイツへも押し寄せてくる。こういう政治情勢に対して、ヘーゲルが態度を決しようとした論文。)

(3)-5 ヘーゲル(1770-1831)の4著作:『精神現象学』、『大論理学』、『エンチュクロペディー』、『法哲学』!(48頁)
★ヘーゲルが公にした哲学的著作は『精神現象学』(1807)、『大論理学』(1812-16)、『エンチュクロペディー』(1817)、『法哲学』(1821)の4つだけだ。宗教哲学、美学、歴史哲学、哲学史など多くの講義が刊行されているが、それらは皆ベルリン時代の講義を弟子たちが編集したもので、ヘーゲル自身の著書ではない。(47-48頁)
★『精神現象学』(1807)はきわめて重要な著作であり、ヘーゲル哲学の全体において、体系序論であるのほか、体系総論の位置を占める。(詳しい理由につては追々後述する。)(48頁)

★むろん正式に体系総論であるのは『エンチュクロペディー』(1817)だ。これは第1部「論理学」、第2部「自然哲学」、第3部「精神哲学」の3部からなる。(48頁)
・第1部「論理学」は、いわゆる『大論理学』(正確には『論理の学』)(1812-16)を簡略にしたもので、普通に「小論理学」と呼ばれる。
・第3部「精神哲学」は「主観的精神」・「客観的精神」・「絶対的精神」という3つの段階からなる。これらのうち「客観的精神」の段階を特別に詳しく取り扱ったものが『法哲学』(1821)だ。

★『エンチュクロペディー』(1817)が正式には体系総論だが、しかし『精神現象学』(1807)も独自の境地においてそのすべての問題を取り扱ったものであり、しかも叙述ははるかに精彩に富んでいる。『精神現象学』は体系総論の意味をもつ。(詳しい理由は追々述べていく。)(48頁)
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