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『万引き家族』(2018年、日本)監督是枝裕和:「血縁を超えて繋がる」《結婚》の絆が成立しうるなら、原理的に、「血縁を超えて繋がる」《家族》の絆も可能だ!

2018-06-25 19:15:12 | 日記
(1)
親の死亡届を出さず年金を不正受給していたある家族の、実際にあった事件が、物語のモデルだ。
(2)
マンションの谷間の古い平屋に、家主である初枝の年金を当てにして、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らす。彼らは初枝の年金では足りない生活費を、父治と息子翔太の万引きで補う。救いは、カネはないが、笑いが絶えない毎日だ。ある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子、ゆりを見かね、治が家に連れ帰り、娘として育てることにした。
(3)
治と信代は、元客とキャバクラのホステスの関係だった。治は昔も今も、日雇いまたは窃盗・万引きで暮らす。かつて治と信代を殺そうとした信代の亭主を、治が正当防衛で殺した。そして信代は元夫を床下に埋めた。なお祖母初枝と治は、血縁ある親子関係だ。治は初枝の年金を当てにして同居している。
(3)-2
翔太は、父治に教えられ、万引きを繰り返す。ただし翔太は、実は、DV等のため家出し、治についてきただけだ。だから、治は父でなく、血縁関係のない「おじさん」だ。
(3)-3
亜紀は風俗で働く。初枝は、別れた夫の(初枝の子でない)息子夫婦の家をたびたび訪ね、帰り際に金一封を受け取る。その家の長女が、亜紀だ。亜紀は、現在はオーストラリア留学中ということになっている。
(3)-4
ゆりは、母親から暴力・虐待を受ける。他方、母親は亭主からの家庭内暴力を受ける。ゆりにとっては、治たちの家で、娘として育てられるのが、最も幸せだ。
(4)
初枝は、家族で出かけた海水浴のあと、突然死した。「カネがないので葬儀や火葬は難しい」と判断した治と信代は、家の基礎下に初枝の遺体を埋める。また、こうすれば死亡届を出さないので、今まで通り、初枝の年金を受給できる。
(5)
息子・翔太が、万引きの失敗から、警察に捕まる。そこから家族の秘密がすべて、明らかになる。①祖母・初枝の死体遺棄。②初枝の年金の不正受給。③治には、翔太に対する親権がないこと。(翔太は施設に入る。)④ゆりを誘拐したこと。(ゆりにとって幸福でも誘拐罪にあたる。)
(5)-2
ゆりの誘拐、初枝の死体遺棄の容疑で治と信代は逮捕される。治は再犯になるので、信代が自分ひとりで罪をかぶり(懲役5年)、治をかばう。
(6)
本作のテーマは、「血縁を超えて繋がる家族はあるのか?」だ。結婚自体が、すでに、血縁を超えた任意の社会関係だ。「血縁を超えて繋がる」《結婚》の絆が成立しうるなら、原理的に、「血縁を超えて繋がる」《家族》の絆も可能だ。とりわけ、家庭内暴力のもとで虐待を受ける子供にとって、「血縁を超えて繋がる」家族あるいはそれに相当するものが不可欠だ。
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