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河合雅雄『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』(その6-2):「第11章」父系社会(Ex. マントヒヒ)の攻撃性に対し、母系社会(Ex. ゲラダヒヒ)は親和性によって社会が成立する!

2021-06-29 16:18:55 | 日記
※河合雅雄(1924-2021)『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』1977年(53歳)

第11章 人類社会の起源は母系か父系か:「人類の祖型」は母系社会だ!(207-224頁)
(12)父系社会(Ex. マントヒヒ、チンパンジー)は攻撃性によって社会が成立する!母系社会(Ex. ゲラダヒヒ)は親和性によって社会が成立する!
L 群れのメンバーの移出入が雄によってなされる社会は母系社会だ。雌の移出入はない。ニホンザル、サバンナヒヒ、ハヌマンラングール。サル社会は「母系社会」(雄の移出入がある。)と思われていた。(209頁)
L-2 チンパンジー社会で単位集団間での雌の移出入があり、雄は基本的に移出入しない。つまりチンパンジー社会は「父系社会」だ。この発見は衝撃的だった。(209頁)
L-2-2  ゲラダヒヒは「母系社会」で雄の移出入がある。ゲラダ・ヒヒの社会的単位は1頭の雄と複数の雌からなるワンメイル・ユニットだ。(ワンメイル・ユニットが複数集まってハードを作る。)ワンメイル・ユニットは、雌グループに雄が入ってきた形で成立する。(リーダー予備軍の雄グループがある。)リーダー雄の選択は雌の側にある。(210-213頁)
L-2-3  マントヒヒは「父系社会」(orメイル・ボンド)で雌の移出入(Ex. 「子さらい」)がある。マントヒヒのワンメイル・ユニットはリーダー雄が徹底した攻撃で雌を従わせる。(ワンメイル・ユニットが複数集まってバンドを作る。)(210-213頁)
L-3  単位集団を、「父系社会」では雌、「母系社会」では雄が、離脱し移籍(移出入)するが、生物学的には、これは集団内婚の回避、遺伝子の拡散の社会的方式だ。(210頁)
L-3-2 父系社会(Ex. マントヒヒ)は攻撃性によって社会が成立する。母系社会(Ex. ゲラダヒヒ)は親和性によって社会が成立する。(214頁)
L-3-3 チンパンジー社会はメイル・ボンドと雌の離脱を中心に形成された父系社会だ。雄間の拮抗性と攻撃性は強烈だ。激しい戦いで時に相手を殺す。(214頁)

(12)-2 人間とゲラダヒヒの性的二型は、男も女もor雄も雌も、両方が異性を誘引するための道具立てを持つ!
L-4 性的二型(雄と雌の形態的差)は、少数の雄が複数の雌を誘引するために、雄において特に顕著に現れた形態として理解することができる。(Ex. マントヒヒやゲラダヒヒの雄の長い毛のマントと頬ひげ、マントヒヒの雄の尻の紅い座布団のような肉塊、ゲラダヒヒの大きな尻だこの下の同形の黒い皮膚のパッチ、ゴリラの雄のシルバー・バックと頭骨の大きな刺状突起。)(218-219頁)
L-4-2 マントヒヒ、ゲラダヒヒ、ゴリラの社会的単位は1頭の雄と2-10頭の雌からなる小集団だ。(217頁)
L-4-3 オランウータンは単独で生活するが、雄は複数の雌のなわばりを含む大きななわばりを作り、複数の雌を占有する。(Ex. オランウータンの雄は首が隠れるほどの脂肪の蓄積を持つ。)(219-220頁)
L-5 人間の性的二型は、男も女も、両方が異性を誘引するための道具立てを持っている。男性のごつごつした筋肉質、ひげ。女性の脂肪が多くなめらかで優しい体型と乳房。(220-221頁)
L-5-2  実はゲラダヒヒは雌にも性的二型を示す形態的特徴がある。胸に逆ハート形の赤い皮膚の露出部があり、その縁にラムネ玉のような肉塊が並び雄を誘引する。(220-221頁)

(12)-3 人間も、「性的二型の特徴を両性が担っている」からゲラダヒヒのように「両性の社会的平等化」が基調の母系社会だったと類推される!(222-223頁)
L-6  「性的二型とエソロジカル(※動物行動学的)な観点を組み合わせて考えると、人類の祖型はゲラダヒヒ型であったのではないか」と想像可能だ。(222-223頁)
L-6-2 「霊長類で性的二型を示す特徴が、雄と雌の両方において著しいのは、人間とゲラダヒヒだけだ。」(222頁)
L-6-3 「ゲラダヒヒのユニット」は「雄の一方的な支配と雌の服従」(父系社会的なユニット)でなく、「両性の積極的な誘引」によって形成された。(母系社会的なユニット)(223頁)
L-6-4 人間は今、「性的二型の特徴を両性が担っている」から、人類の祖型も、ゲラダヒヒのように「両性の社会的平等化」が基調だと類推される。(223頁)

(12)-4 「人類学者」のように「狩猟採集民社会」では「男性の優位性が社会の原動力となっている」(父系社会)と決めつけるのは危険だ!
L-7 現在の「ブッシュマンやピグミーなどの男女の結合様式を見ると、男女間に等しく個性的で独立した交際が行われ、婚資をともなわない個と個の結合という形でなされている」。(※つまり母系社会的だ!ゲラダヒヒの社会に似る!)(223頁)
L-7-2  これに対し「人類学者」は「未開社会」の研究から、「集団間での女性の交換」を重視し、「女性が財あるいは労働力をもつものとして交換される」ことが、「家族とコミュニティーの維持」に大きく機能している(※父系社会!)と主張する。これが「人類社会の特質」だとする。しかし上記のブッシュマンやピグミーの例を見ると、「狩猟採集民社会では、男性の優位性が社会の原動力となっていると決めつけるのは危険だ。」(223頁)

(12)-5 「現存する狩猟採集民社会」、例えばブッシュマンは「平等で対立のない社会」だ!
L-7-3 「人類社会の特質」として「男性優位の原則」(※父系社会!)を認めることは、「人類の祖型」において「ユニットの形成や集団間の関係」を「攻撃性」を基盤に考えざるをえない。(223頁)
L-7-3-2 Cf. すでに見たようにサル類において「父系社会」(Ex. マントヒヒ、チンパンジー)は「攻撃性」によって社会が成立する。「母系社会」(Ex. ゲラダヒヒ)は「親和性」によって社会が成立する。(209-214頁)
L-7-4 「人類の祖型」において「攻撃性」によって社会が成立するとの「人類学者」の考えは実情にそぐわない。「現存する狩猟採集民社会」、例えばブッシュマンは「平等で対立のない社会」だ。(223頁)

(12)-6 人間の祖型社会は、「ゲラダヒヒ型のユニット」でなく、「男も女も集団間の移籍が可能な、個体の自由度が非常に大きな社会」だったかもしれない!
L-8 なお人間とゲラダヒヒの「性的二型」に関し、ゲラダヒヒは雄雌の体重・身長差が大きい(ある資料によれば、《体重》雄20-23kg・雌12-14kg、《体長》雄69-74cm・雌50-65cm)。(224頁)
L-8-2 ところが人間は男女間の体重や身長差が小さい。すなわち人間の祖型社会は、「ゲラダヒヒ型のユニット」が社会的単位でなかったかもしれない。人間の始源の社会は「男も女も集団間の移籍が可能な、個体の自由度が非常に大きな社会」だったかもしれない。(224頁)

(12)-7 「父系説系譜論」は誤りだ!「牧畜・農耕社会」になってから、「父系」が社会構造の基軸となった!
L-9 「人類の祖型」において「攻撃性」によって社会が成立する(※「父系社会」!)との「人類学者」の「父系説系譜論」に対して異議を申し立てたいと河合雅雄氏が言う。(224頁)
L-9-2  サル社会からの類推では「父系社会は攻撃性を基調にした社会だ。」(224頁)
L-9-3 だが「父系」が制度化され社会構造の基軸として織り込まれるのは、「牧畜・農耕社会」になってからだと、河合雅雄氏は考える。そのとき以来、「女性は物として交換の対象となり」、「男性優位の歴史」が始まった。(224頁)
L-9-4 「牧畜・農耕社会」の成立は、「男性優位の歴史」のはじまりとして、「男が女に対して生みだした原罪」だ。(224頁)

《参考》(11)-3 ヒトは狩猟採集社会では「なわばり」を持たない平和な生活を送った!牧畜農耕社会になって物の所有、土地所有、財の蓄積が生じ、再び強い「なわばり制」(Ex. 国家)が発生し、ヒトは殺戮や戦争を開始した!
K-4 「ヒトは狩猟生活をしている間は、なわばりを持たない平和な生活を送っていた。ところが牧畜農耕革命によって人間は再び強いなわばり制(Ex. 国家)を持つに至った。」(206頁)
K-4-2 牧畜農耕社会になって物の所有、土地所有、財の蓄積が生じると、再び強いなわばり制(Ex. 国家)が発生し、ヒトは殺戮や戦争を開始した。(206頁)
K-4-3  牧畜農耕革命後の、物質文化の進歩、所有概念の発生と強化、財の蓄積にともなう物欲と権力のとめどのない増幅作用が、殺戮・戦争を発生させた。かくてそれらは人間に「悪の深淵」をのぞかせ、「悪魔の所業」をプログラムさせるに至った。(206頁)
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