J. クライン氏は大統領選挙でトランプ氏支援の言論活動を展開。「知的応援団長」と注目された。
(1)冷戦後の米国政治の失敗を臆さず批判:トランプ氏
トランプ氏は、二大政党の主流派が直視してこなかった冷戦後の米国政治の失敗を、臆さず批判した。
放漫な通商と移民政策、すなわち野放図な資本と雇用の自由移動、また介入主義的外交政策の果てに、いま米国は、低成長、生産性の低迷、格差、社会分断に苦しむ。
(1)-2 潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ
確かに株価は高騰し、失業率も低い。
しかし伝統的製造業(労働者)の雇用は、人件費の安いサービス業に置き換わり、賃金は伸びていない。
企業は、技術革新や新たな雇用を生むような価値ある投資でなく、コスト削減や株価対策に血道を上げている。
経済が成長しても、潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ。
置き去りにされているのは。労働者層だけでない。
弁護士、銀行員、学者、ジャーナリストといった職業でも、親の時代と比べ、かなり落ち目だ。
(1)-3 米国の国力低下
外交についても、米国には、アフガニスタンやイラクで単独で国造りまで担う力は、もはやない。
《感想》
「経済が成長しても、潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ」という状況は日本も同じ。日本は、企業が内部留保を積み上げるばかりで、それらを賃金として労働者に分配しない。
しかも非正規雇用の割合を拡大し、国民相互の分断・嫉み・悪意が深まる。ナショナリズムにマイナスだ。
「政府に反対しない」ことが、ナショナリズムだと、政府は騙そうとする。
(2)臆面もなく国益を追求した中国
中国は、なぜ著しく成長しているのか?それは、臆面もなく国益を追求したからだ。
いかなる国も、自国の産業を効率的に育む権利がある。
中国、日本、仏独は、国民国家として自然体で国益を追求してきた。
(2)-2 市場至上主義や実力主義で、「共同体の価値を重んじる風土」が失われた
米国ではレーガン政権時代(1981-89)以来、市場至上主義や実力主義が浸透し、「富裕が善」「貧困は自己責任」と考える風潮が蔓延した。
他の市民を思いやるという「共同体の価値を重んじる風土」が失われた。
(2)-3 強く健全な国民国家の必要
強く健全な国民国家があればこそ、経済や市場に政治的な制御を及ばすことが出来る。
左派も、「国際主義」を志向する立場に足をとられた。
《感想》
他の市民を思いやるという「共同体の価値を重んじる風土」は、ナショナリズムの根本だ。
他方で、実力主義・能力主義は、社会の活力の源泉だ。これと「共同体の価値」を両立させねばならない。
公平・公正は、国家の理念の一つだ。公平・公正と、実力主義・能力主義を両立させねばならない。
非正規雇用は、〈同じ仕事をするものに、不公平な待遇を強制する〉点で、フェア(公正)でない。
(3)「米国人を一つにまとめる絆」が必要だ
「米国人を一つにまとめる絆」が失われた。
それぞれが、小さなアイデンティティに閉じこもり、互いに対抗。
今は、「米国を一つにまとめるもの」を見出さねばならない。
(3)-2 オバマ前大統領のナショナリズム
オバマ前大統領は、ナショナリズムによって輝いた政治家だった。
「黒いアメリカも白いアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だけだ。」
今、必要なのはこのアプローチだ。
(3)-3 「エリート対庶民」の分断
しかし、オバマ氏は「民主党対共和党」という党派的分断しか見なかった。
「エリート対庶民」の分断を見なかった。
《感想》
大統領選挙でトランプ氏支援の言論活動を展開し、「知的応援団長」と注目されたJ. クライン氏。
この人が、オバマ前大統領を、「ナショナリズムによって輝いた政治家」と評価する点に、驚いた。
(4)トランプ大統領は派手な言動で社会を分断するばかりだ:J. クライン氏
「トランプ大統領には愛想が尽きた」とJ. クライン氏が述べる。(2017年8月に決別した。)
バージニア州で白人至上主義と反対派が衝突して死者が出た事件で、トランプ大統領は白人至上主義への非難をためらい、社会の分断を広げた。
〈停滞した二大政党の政治にくさびを打ち込む〉には、左派の一部も巻き込んだ幅広い国民の結集が必要。
しかしトランプ氏は、派手な言動で社会を分断するばかりだ。
《感想》
「エリート対庶民」の分断に注目する限りで、J. クライン氏の立場は、正しい。
《参考文献》米政治誌『アメリカン・アフェアーズ』編集長Julius Krein(ジュリアス・クライン)(1986-)「トランピズムの潮流:市民の結束・国家の価値を問う」(『朝日新聞』2017/11/7朝刊)
(1)冷戦後の米国政治の失敗を臆さず批判:トランプ氏
トランプ氏は、二大政党の主流派が直視してこなかった冷戦後の米国政治の失敗を、臆さず批判した。
放漫な通商と移民政策、すなわち野放図な資本と雇用の自由移動、また介入主義的外交政策の果てに、いま米国は、低成長、生産性の低迷、格差、社会分断に苦しむ。
(1)-2 潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ
確かに株価は高騰し、失業率も低い。
しかし伝統的製造業(労働者)の雇用は、人件費の安いサービス業に置き換わり、賃金は伸びていない。
企業は、技術革新や新たな雇用を生むような価値ある投資でなく、コスト削減や株価対策に血道を上げている。
経済が成長しても、潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ。
置き去りにされているのは。労働者層だけでない。
弁護士、銀行員、学者、ジャーナリストといった職業でも、親の時代と比べ、かなり落ち目だ。
(1)-3 米国の国力低下
外交についても、米国には、アフガニスタンやイラクで単独で国造りまで担う力は、もはやない。
《感想》
「経済が成長しても、潤うのは、資本を持っている人や、ほんの一部のエリート層だけ」という状況は日本も同じ。日本は、企業が内部留保を積み上げるばかりで、それらを賃金として労働者に分配しない。
しかも非正規雇用の割合を拡大し、国民相互の分断・嫉み・悪意が深まる。ナショナリズムにマイナスだ。
「政府に反対しない」ことが、ナショナリズムだと、政府は騙そうとする。
(2)臆面もなく国益を追求した中国
中国は、なぜ著しく成長しているのか?それは、臆面もなく国益を追求したからだ。
いかなる国も、自国の産業を効率的に育む権利がある。
中国、日本、仏独は、国民国家として自然体で国益を追求してきた。
(2)-2 市場至上主義や実力主義で、「共同体の価値を重んじる風土」が失われた
米国ではレーガン政権時代(1981-89)以来、市場至上主義や実力主義が浸透し、「富裕が善」「貧困は自己責任」と考える風潮が蔓延した。
他の市民を思いやるという「共同体の価値を重んじる風土」が失われた。
(2)-3 強く健全な国民国家の必要
強く健全な国民国家があればこそ、経済や市場に政治的な制御を及ばすことが出来る。
左派も、「国際主義」を志向する立場に足をとられた。
《感想》
他の市民を思いやるという「共同体の価値を重んじる風土」は、ナショナリズムの根本だ。
他方で、実力主義・能力主義は、社会の活力の源泉だ。これと「共同体の価値」を両立させねばならない。
公平・公正は、国家の理念の一つだ。公平・公正と、実力主義・能力主義を両立させねばならない。
非正規雇用は、〈同じ仕事をするものに、不公平な待遇を強制する〉点で、フェア(公正)でない。
(3)「米国人を一つにまとめる絆」が必要だ
「米国人を一つにまとめる絆」が失われた。
それぞれが、小さなアイデンティティに閉じこもり、互いに対抗。
今は、「米国を一つにまとめるもの」を見出さねばならない。
(3)-2 オバマ前大統領のナショナリズム
オバマ前大統領は、ナショナリズムによって輝いた政治家だった。
「黒いアメリカも白いアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だけだ。」
今、必要なのはこのアプローチだ。
(3)-3 「エリート対庶民」の分断
しかし、オバマ氏は「民主党対共和党」という党派的分断しか見なかった。
「エリート対庶民」の分断を見なかった。
《感想》
大統領選挙でトランプ氏支援の言論活動を展開し、「知的応援団長」と注目されたJ. クライン氏。
この人が、オバマ前大統領を、「ナショナリズムによって輝いた政治家」と評価する点に、驚いた。
(4)トランプ大統領は派手な言動で社会を分断するばかりだ:J. クライン氏
「トランプ大統領には愛想が尽きた」とJ. クライン氏が述べる。(2017年8月に決別した。)
バージニア州で白人至上主義と反対派が衝突して死者が出た事件で、トランプ大統領は白人至上主義への非難をためらい、社会の分断を広げた。
〈停滞した二大政党の政治にくさびを打ち込む〉には、左派の一部も巻き込んだ幅広い国民の結集が必要。
しかしトランプ氏は、派手な言動で社会を分断するばかりだ。
《感想》
「エリート対庶民」の分断に注目する限りで、J. クライン氏の立場は、正しい。
《参考文献》米政治誌『アメリカン・アフェアーズ』編集長Julius Krein(ジュリアス・クライン)(1986-)「トランピズムの潮流:市民の結束・国家の価値を問う」(『朝日新聞』2017/11/7朝刊)