DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

吉野弘(1926-2014)「或る位置」:環境と自発性の関係の問題

2017-11-16 20:28:52 | 日記
 或る位置 

樹の位置――それは
偶然が決めたものだろう。

樹高、幹周り、枝の張り方――それは 
樹自身が決めたものだろう。
地上からは見えない根の土の抱き方も。

ある位置に  
同意したのではない。

同意するより先に
浅い根はまず土を掴まねばならなかった。

その樹に私は尋ねる。
偶然が決めた君の位置を
君はどのように受け入れたか?

樹から答は返ってこない。
過ぎた歳月をすべて樹形で語り
来歴の総量だけで立ち
それ以外を語らない樹。

(剛直で気むづかしい幹、しかし梢では
風や光と遊ぶ賑やかな葉のきらめき)

――反歌  
枝を伸べ根を深めつつ己が位置うべないゆくや樹々の明け暮れ

《感想》
君が、何であるか、君は選べない。
君は、ある位置に、生れる。
全く運命だ。
そこで君は育ち、君になる。
君の諸習慣は、そこで作られる。
君の欲望は、その諸習慣とともに増殖していく。
もちろん君には自発性があり、固有の感情・欲望・意図も、展開させていく。
かくて樹の位置は偶然が決め、それに同意したわけでなくても、その位置を受け入れ、君は生きていく。
環境と自発性の関係の問題だ!
君の固有の感情・欲望・意図の展開が、思惟を含めつつ、君の心的生活だ。

A Certain Location

A location of a tree――It is perhaps decided by chance.

Hight, thickness, and boughs of the tree――These are perhaps decided by the tree itself.
So is the way how root of the tree holds the soil that cannot be seen from the surface of the ground.

The tree doesn’t affirm its location.

Before it affirms its location, it has to hold the soil at first by its shallowly extending root.

I ask the tree, “How do you accept your location that is decided by chance?”

The tree doesn’t answer.
The tree shows its passed years as a whole by its shape.
And it stands bearing the burden of the past it has experienced.
The tree says nothing except that.

(Its trunk is upright, and difficult.
However, at its boughs, its leaves are pleasurably brilliant playing with wind and light.)

――A Summary
Exteding its boughs, deepening its root, and accepting its location, trees live day and night.
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「困難に直面しても笑い飛ばすこと」、「失敗は成功の基」、「良い花は後(アト)から」、「蟻の思いも天に届く」、「雲の上はいつも晴れ」 

2017-11-16 01:35:11 | 日記
“Loughing in the face of adversity.”(「 困難に直面しても笑い飛ばすこと」。)
うらやましい限りだ。
君は、すでに生じた困難を前提に、考えるしかない。それは確かだ。
今、しばらく、君に命があるなら、笑い飛ばすことは、時間的・物理的に可能だ。
あとは、心理の問題だ。

(1)「失敗は成功の基」
失敗は教訓だ。人生に、成功は少ない。
失敗にめげない。「七転び八起き」と言う。
「転んでもただでは起きない」など、根性がある人もいる。
「禍福はあざなえる縄のごとし」とも言う。何が幸運になるか分からない。

(2)「良い花は後(アト)から」
気休めかもしれないが、真理でもある。
十分な経験と修練を積んだ後に、また周到な準備の後に、ようやく成功が来る。
「石の上にも三年」だ。辛抱するのだ。

(3)「蟻の思いも天に届く」
ちいさな努力もいつか、実るはずだ。
「捨てる神あれば拾う神あり」で、幸運が来るかもしれないし、良い人と出会えるかもしれない。
「明日天気になーれ!」と言いたい。

(4)「雲の上はいつも晴れ」
自然的事実そのままだ。
これを人生に喩えれば、人生の全局面が一挙に現れるわけでないから、悪い局面とは別に、良い局面もあるはずだということ。
確かに「忙中閑あり」と言うように、困難な中でも、小さな局面に平穏を見出すことがある。
「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり」の言葉もある。人生は変転する。
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