DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

伊東静雄(1906-1953)「雷とひよこ」(1949年):一般に、未来と希望は、幼い子どもの特権だ

2017-11-17 22:06:40 | 日記
 雷とひよこ  

あけがたの野に雷鳴がとどろいた
野にちらばる家々はにぶく振動し
北から南へ
かと思ふと東から西へ
冬を追いやる雷鳴が
繰返しあけがたの野にとどろいた
ただ童子だけが
その寝床に目ざめなんだ

朝それで童子が一等はやく起出した
鳥屋(トヤ)では丁度そのとき十三匹のひよつ子が
卵から喙(クチバシ)を突きだすところだった
金いろのちつちやな春が
チチチチチと誕生していた
ただ童子のほかは
だあれもそれを見なんだ

《感想》
(1)
春は、明け方に、つまり一日の始まりに、やってくるのが、ふさわしい。
春は、四季の始まりだから。
春を告げる雷鳴は、朝方だった。
冬は、北から南、東から西へと、隈無く追いやられる。
(2)
春は、幼い子どもにこそ、ふさわしい。
子どもには、未来が予感されるから。
(老人は冬だ。)
子どもは、健やかに深く眠る。
明け方の激しい雷鳴にも、気づかない。
(3)
かくて朝、子どもが一等はやく起き出した。
鶏小屋で、13匹のひよこが卵からかえった。
ひよこたちは「金いろのちつちゃな春」だ。
(ただし、ひよこを、未来ある春にたとえるのは、素直すぎる期待だ。かれらは雛鳥の肉としてすぐ命を奪われるかもしれない。)
(4)
とはいえ、一般に、未来と希望は、幼い子どもの特権だ。
子どもには、普通、老人より多い未来と、遠い死がある。
(しかし、子どもも、やがて死ぬ。有意義な人生であってほしい。)

 A Thunderstorm and Chicks

Thunders roared over a field at dawn.
Houses scattered at a field shook dully.
From north to south, then suddenly changed, from east to west, thunders that drove winter away roared again and again over a field at dawn.
Only the child continued to sleep in bed.

Therefore, the child got up at first in the mornig.
At the bird cage, just at that time, 13 chicks were sticking out their beaks from eggs.
A little golden spring season was born, cheep cheep cheep.
Any other persons except the child didn't see them.
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 (1)泣けば、少しは気が楽になるかもしれない、(2) よくここまで、生きて来た、(3)君の気持は揺れている

2017-11-17 00:12:27 | 日記
(1)
「死んだ子の年を数える」と言う。
なんと悲しいことだ。
無意味とか、無駄とか言うのは、あまりに無慈悲だ。
君は、思い切り泣きたまえ!
泣けば、少しは気が楽になるかもしれない。

(2)
思えばつらい事ばかりが、多い人生だった。
よくここまで、生きて来た。
悲しい運命だった。
それでも、生き永らえた。
それだけで、良しとしよう。

(3)
望むことは、今少し長く、この世を見ていたい。
もちろん、あまりに悲惨な世の中はいやだ。
「人間がこの世に存在して、よかった」と言う証明がみたい。
「人間などいない方が良かった」と、思いたくない。
しかし、君の気持は揺れている。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする