~中外日報より転記~
【本当に必要な物】~トルストイの寓話~
あるロシア人がモンゴルの長者から土地を買った。
金を受け取った長者はロシア人を広大な原に連れて行き、
日の出から日の入りまで歩いて囲んだ土地は土はすべてあなたの物だ、
ただし、日没までに出発点に帰り着かなければ、すべては無効になる、と言った。
ロシア人は日の出とともに歩き出し、肥えて豊かな土地欲しさに休むことなく、
飲食のために腰を下ろすこともなく、ただひたすら歩き続けた。
もう充分だから戻ろうと思っても、
いやいやこんな素敵な土地を手に入れないわけにはいかないと歩き続けて、
ふと気が付くと、草原の彼方に日が傾いている。
驚いた彼は出発点に向けて走り出した。
苦しくても、腹が痛んでも、のどが渇いても、
無理に無理を重ねて走り続け、
日没と同時に出発点にたどり着いた。
そこにはモンゴル人の長者が待っていて、
高笑いしながら、
いやお見事、お見事、
この広大な土地は皆あなたの物ですぞと言った。
ところがロシア人はばったり倒れて死んでしまったのである。
長者はちょうどロシア人の体だけ入る穴を掘って埋葬してやったという。
結局彼に必要だったのはそれだけの広さの土地だったわけである。
NHKの朝のドラマ「ゲゲゲの女房」の作者水木しげるさんがインタビューの中で
収入が倍になったからといって幸せが倍になるわけではない。
それまで二つだった大福餅が四つ食べられるわけではない。
まさに私自身の姿。