ヒマなんで、第3段に追加で解説でもしよう。
それにあたり、小説家である橋本治の「絵本 徒然草」(河出書房新書)上・下巻の解説を参考にさせていただく。
この本は現在、文庫化されている。
現代語訳は独自すぎてやや分かりにくいが、解説はこれでもかとばかりに、意地でも読者を分からせようとしている。
兼好の生きた時代の空気が良く書けていて、参考になるおすすめの本である。
リンク:
Amazon.co.jp:絵本 徒然草 上河出文庫: 本 .
それによれば、この第3段は「夜ばい」が失敗した時の気持ちを書いているのではないかと言う事だ。
いくら、鎌倉時代末期の大昔であっても、勝手にひとんちに不法侵入して、そこの家の娘を無理矢理に犯したら「強姦」で立派な犯罪である。
夜ばいにだって段取りが必要だ。
「春だから おいらはあんたが 好きなんだ」
みたいな、とりあえずの思いつきの恋の歌でいい。
何度も何度も何度でもお気に入りの娘の住むお屋敷にマメに送っておく。
ついでに、できれば、お目当ての娘の住む屋敷の召使いとも仲良くなっておければ更に良い。
やがて、送った恋の歌に返事が来るようなら「脈あり!」だ。
そこで仲良くなっておいた召使いに彼女にお目どおり願いたいんだけど、一役買ってくれないかなと根回しをはかってみる。
おめあての彼女に仕える下女はあまりのしつこさに負けてつい言う。
「じゃあ。その気持ちだけはお嬢様に伝えときますんで」
そこまで、下女から引き出せればしめたもの。
やったー!
実は、おめあての「彼女」の「生顔」すら拝んだ事のない「童貞くん」は天にも昇る気持ち。
2、3日して、屋敷に行き下女を呼び出す。
すると。
「お嬢様はお会いになられても良いかも。と、申されておりますが、とりあえず、私からはなんとも。とりあえず今夜はこの門のカギは閉めずにおいておきましょう。ただ、お嬢様にも御都合がございますゆえに、あまり御期待はなさらぬ方が良いかもしれません」
オオォ!!
もう、この段階でチンコはピーチクパーチクでバーサク。
浮かれ気分で、もう夜が待ち遠しくて仕方ない。
少し早いけど夕方になって屋敷に行くと、なぜか門にはかんぬきがささっている。
押しても引いてもビクともしない。
あれー。
来るのが早すぎたのかなー。
下女が門を開けてくれる約束をひたすらに待つ。
街灯もない暗闇の中で口臭チェック。
ふところには、最新の愛の歌。
長い長すぎる。
いくらなんでもこれはありえんだろうと思えるほど長いあいだ門の前で立ち尽くした。
いつの間にか空は白みはじめ、一張羅の自慢の着物は朝露に濡れている。ニワトリまで鳴き出した。
その時になりやっと悟った。
あー。
今夜は彼女は都合が悪かったんだ。
そして、ありとあらゆる都合を考え、自分の惨めさを悟る。
俺は彼女に必要とされてない。
俺はいらないらしい。
彼女だけじゃない、俺は誰にも必要とされていないんだよ。
俺は腐ったミカンだ。
とりあえず、世も明けた。
眠いから家に帰ってセンズリでもかいて寝よう。
抜けば、とりあえずスッキリして眠くなるはずだ。
足取りは重く、頭は徹夜で疲労しきっている。
そして、それでも、最後の最後にこうも考える。
こんな惨めな俺でもすごいと思って好きになってくれる女がどこかにいるかもしれない。
いてくれたら、素敵だ。