
『おじいちゃんのゴーストフレンド』安東みきえ著 杉田比呂美絵 佼成出版社
2003年・95頁・小学校中学年から・絶版
前回のヨーンじいちゃんが、自己主張の塊だったとすると、主張が薄いながらも愛おしいのが、我らが日本テッちゃんのおじいちゃん。著者の安東みきえさんは、椋鳩十児童文学賞受賞者だそう。表紙絵のポップさから実はあまり期待しないで読んだんです


【ここがポイント】
・見えないものの世界について、ふわっと考えさせられる
・嫌悪感→興味→好意へと変化する主人公の心の成長がイイ
・人工物への見方が変わる!
・文字大きめ、会話多め、一人称語りでサクッと読みやすい。本が苦手な子にも
≪『おじいちゃんのゴーストフレンド』あらすじ≫
テッちゃんのおじいちゃんは、重い病気にかかっている。そのうえ、死んだ親友が見えるという…。老人とのふれあいを通して、友情の深さと温かさを知ってゆく少年たちを描く。(MARCデータベースよりそのまま転載)
親友の葬儀から帰宅して以来、親友が遊びに来ていると言い出すおじいちゃん。主人公の‘ぼく’は、服薬による幻覚だと思おうとするのですが、おじいちゃんの孫のテッちゃんは、おじいちゃんのその世界を大事にしよう、守ろうとするんです。本当におじいちゃんのことが好きだから、すんなりとおじいちゃんの目に見えない世界も受け入れられるんだなあ、って


何かがちっていくような気がしたのだ。まるで、水の中の魚がいっせいににげていくように、ただよっていたものがちっていく。おだやかでやさしく、幸せなものが消えて行く
って感じるんです。ヘルパーの黒井さんはとても現実的な人で、でも悪い人じゃない。幻なんかに気を取られてちゃモッタイナイ、おじいちゃんにも今を生きて目の前にあるものを見てほしい、と思っているだけなんです。それはとおってもよく分かるのだけれど、でもそれって見えない世界が「ナイ」という大前提での話。おじいちゃん、現実逃避や過去回帰ともちょっと違うんですよね。だから、子どもたちはモヤモヤが残る

もう一つ、このお話でいいなあと思ったのは鉄塔の話。
実は私、鉄塔のような人工物が大の苦手でして

ところが、このテッちゃんは鉄塔が大好き。みんなに嫌われている鉄塔に純粋な思いを寄せる姿に、なんだか嫌っててゴメンナサイという気持ちになりました


鉄塔はピラミッドに似ている。四角錐の真ん中には、ふしぎなチカラが集まる、モノが腐らないとかミイラが復活するとか・・・なので、丘の上の鉄塔の下におじいちゃんを運んだらおじいちゃんの病気が治るんじゃないかと思いついたテッちゃん。その計画はギリギリのところで未遂に終わるのだけれど、そのとき鉄塔からピーピーという口笛のような音が聞こえてくるんですね。「風音」

「鉄の接合部に、すき間ができることがある。そこに風が通って鳴る。笛と同じなんだよ。鉄の笛だ」
「おまえたちは知らないだろうけどな。鉄もゆめを見る。いつかりっぱなものになりたいってな」
そんな鉄の声を聞きながら仕事をしてきたのだと、おじいさんはいう。火と水と風の力をかりて、よい鉄になるように鋳ってきたのだと。
「ふしぎだな。この世にあるものは、みんなゆめを持って生まれてくる。一生けんめいりっぱなものになりたいって、ねがいながら生まれてくる。人でも鉄でも、みんな同じだ」
なんだかとても感動しました


