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『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

ポップ派?厳か派?それぞれのクリスマス絵本

2016-12-16 06:30:33 | 絵本


12月はほーんと毎年スケジュールがキツキツすぎて、アップアップな状態になるのですが、やっぱり好き。それは、クリスマスがあるから
ツリーを見ていると本当に幸せな気持ちになってくるし、クリスマスって「他の人の喜ぶ顔が見たい!いいことをしたい!」と思う気持ちが、そこら中にあふれてる気がして

我が家はモノ増やしたくない派なので、ツリーの購入はずいぶんと迷いましたが、子どもたちが目をキラキラさせて喜ぶ時期を逃したくないなあ、と思ってたら、友だちがツリーを買い替えるとのことで譲り受けました♪。まあ・・・男子の発想って・・・上二人は、ツリーの丸い球のような飾りは手榴弾のように投げて遊んでますけどね。三男はまだかわいくて、「おかあさんといっしょ~」って耳にピアスのようにぶら下げたりしてます

さて、そんな子どもたちが大好きな楽しい絵本、ポップなクリスマス絵本がこちら↓



『おおきいツリー ちいさいツリー』ロバート・バリー作・絵 光吉夏弥訳 大日本図書

ウィロビーさんのお屋敷に見たこともないような大きなツリー(生木)が届きます。ところが、大きすぎて天井につっかえてしまうんですね。そこで、先の方をちょんぎっちゃう。ちょんぎられた先は小間使いのアデレードの元へ・・・ところが、アデレードにとっても先が大きすぎて、またちょんぎってゴミ箱に捨てておくと今度は見つけたのは庭師のチム。ここでも、先っぽはちょっといらないように感じて、ちょんぎられ外へポーン。それを動物たちが次々に見つけて・・・同じことが繰り返されていきます。さあ、最後に見つけたのは一体誰でしょう?

何がいいって、見つけた人(動物)たちが、み~んな幸せな気もちになるところ。繰り返しのリズムも子どもたち大好きですよね。明るくて、楽しくて、ポップなクリスマス絵本です♪

こういうポップなのも好きですが、先日ご紹介した『ちいさなもみのき』のような地味な、厳かな絵本もやっぱり読みたいもの。私が大好きなのはコチラ↓



『聖夜のおくりもの』トリシャ・ロマンス作・絵 中村妙子訳 岩波書店

大工のおじいさんと村人たちとの温かな交流を描いたもので、手元に置いて何度も眺めたくなる美しい絵本。信仰深いおじいさんに、ああクリスマスってお祭り騒ぎじゃなくて、キリストの生誕を心から喜ぶ日なのよね、と思い出させられます。いままで人のための家ばかり建ててきたおじいさんが、いよいよ自分の家作りにとりかかるのですが、このおうちの素敵なことといったら。村人たちの協力がまたいいんですねえ。おじいさんがいかに人徳があったかが伺えます。そして、おじいさんがみんなに内緒で作っている木彫りの人形の美しいこと。現代っ子ボキャブラリーの次男は「ヤバイ!ヤバイ!おじいさん上手すぎ!これ、チョーやばい!」を連呼。現代っこにも美しいものは地味でも静かでも響くんでしょうね。大人が読むと、堅実、誠実でなんて美しい生き方なんだろうとしみじみ思わされる絵本です。





誰も避けられない老いと死

2016-12-15 06:15:50 | ドイツ文学


『ひいおばあちゃん』 モニカ・ハルティヒ作 イルムトゥラウト・グーエ絵 高橋洋子訳
講談社(世界の子どもライブラリー) 小学校4年から 187頁 1989年(原書で)

昨日ご紹介した『おばあちゃん』(ヘルトリング作)は、交通遺児という特殊な立場でしたが、より一般家庭寄りなのが、この『ひいおばあちゃん』。
この本ね、今の日本にも通ずるところがあって(介護は女性の仕事とかネ)、共感しやすい!とっっってもよかった!もちろん、例によって絶版ですけど
作者は精神療法の女医さんだそうで、子どもの心理描写がもうお見事で。外国の物語だということを忘れて思わず感情移入しちゃいます。

≪『ひいおばあちゃん』あらすじ≫
小2女子のヨシは一人っ子。妹がほしくてほしくて、たまらないのに、ある日突然家にやってきたのは、妹ではなくしわくちゃで泣き虫のひいばあ。部屋は取られるわ、世話は焼けるわ、汚いわ、で早くひいばあに出て行ってもらいたくてたまらないヨシ。ところが、いつの間にかひいばあが大好きになっていって・・・年をとるって、どんな感じかを教えてくれる物語。


【ここがポイント】
・同居の大変さ&素晴らしさ、老いていくとはどういうことかが分かる
・近所の精神障がい者の子の存在が光る
・ひいばあの昔の楽しかった家族の話、戦争の話が心に残る
・ヨシの心の成長が素晴らしいの一言に尽きる
・一人っ子を気に病んでいる人にぜひ

忙しくていつもヨシの話を聞いてくれない両親。子育て世代は、読んでドキッとします。こういうのやっちゃってるよね~
子どものペースと同じで、話を本当の意味で「聞いて」くれるのはお年寄りなんですよね。ところが、現代ではその子どもたちすらも「急げ急げ」でノロノロの老人にイライラしちゃう。それが、同居することによって、ヨシはハっと本来のペースに気付かされるんですね。一緒にノロノロ散歩していると・・・

・・・とてもふしぎなことが起こった。ヨシは、まるで魔法のメガネをかけているような気がした。とつぜん、いままで見たこともないものが見えてきたのだ。まわりのものがみんな、ちがって見える。やぶやしげみは、いちめんにぴっかぴかの金ぱくや真珠でおおわれている。ほかの木は、銀色の羽毛のずきんをかぶったり、枝と枝のあいだにうすくすけるレースがたれさがったりしている・・・

そう。いかに普段私たちがキラキラした美しい“そこにある”世界が見えていないことか。ドライブの帰り、夕日が沈む光景がとてもきれいで、お父さんは車をとめると、ひいばあは手を合わせて小声で言うんです。

「すばらしい一日でした。ありがとう!」


それ聞いて、なんだか私とっても感動してしまったんです。そして、ヨシはこう思うのです。

神さまはきっと、きょうはいつものたのみごとのかわりに「ありがとう!」のひとことが聞けて、うれしかったにちがいない。だって、「ありがとう!」は、すてきなお祈りのことばだもの。

と。大好きな場面は書ききれないくらいいっぱいあるのですが、もう一つ印象的だった場面。実は、ヨシは母方の祖父母があまり好きではないんですね。口うるさくて、いつもきちんとしろと言われて・・・よくある今の祖父母だなあ、と。子どもに対して寛容でなくなってきていて、自分たちの生活スタイルが大事。ところが、ひいばあが漏らしてしまって、それを必死で隠そうとしたとき手伝いにきていた祖母がこういうんです。

「だれにでもあることですもの。」


これね~、言えそうで、なかなか言えない一言。さらに、実はベッドも汚してしまったと告白するひいばあには、

「気にすることはありませんよ!せんたく機があるじゃないですか。」
「いまからあったかいおふろにつかって、さっぱりしたものに着がえましょう。そして、ぜんぶわすれてしまいましょうね。」


って。なんて、思いやりのある言葉。同じ立場にあったら、私こんな風に言えるかしら?自問してしまいます。でね、これを聞いて、今まで祖母のことが好きでなかったヨシは、いっぺんに祖母が好きになるんですね。口うるさいけど、本当はとてもきちんとしたいい人なんだ、ってね。子どもって本質をホーントよく見ています。

最後のほうで、ヨシがひいばあを名前で呼ぶところ、ひいばあが亡くなるところはもう涙、涙。けれど、とっても前向きで素敵なラストが待っています。クリスマスの場面も美しくて、とてもいいので、今の季節読むのにもピッタリ

誰にでも来る老いと死の物語。とても現実的で、かつ心に残る素敵な物語でした

『おばあちゃん』

2016-12-14 06:48:24 | ドイツ文学


おばあちゃん』ペーター・ヘルトリング作 イングリット・ミゼンコ絵 上田 真而子訳 
偕成社 170頁・小学校高学年から


え~、まだまだ続きますよっ『老人と子ども』シリーズ
先日の『ヨーンじいちゃん』と同じ作者ヘルトリングが、今度はおばあちゃんを描いたのが、題名もそもままずばり『おばあちゃん』。

交通事故で両親を亡くしたカレは、67歳になるおばあちゃんに引き取られ、一緒に生活していく物語です。世代の違いから、なかなか自分のやり方は変えられないけれど、それでも孫の心に寄りそおうとしていることとかが伝わってきます。

まあ、同性のせいか、自分が嫁の立場だからか、平気で死んだ嫁の悪口言っちゃうこのおばあちゃんとの同居は、私は遠慮願いたくなりましたけどね。『ヨーンじいちゃん」のインパクトが大きかったせいか、こちらは少し印象が薄くなってしまいましたが、続けて読まなければ、十分インパクトのあるおばあちゃんだったかもしれません。

【ここがポイント】
・各章の最後におばあちゃんの心の中のモノローグがあるのがイイ
・完璧でないおばあちゃんの姿が現実的&人間味がある
・僕を未熟な子扱いしないおばあちゃんがイイ
・貧しいながらも、たくましく生きてる姿がイイ
・いつかやってくる死に向かい合う姿勢がイイ
・世代の感覚のズレをよく描いている

ただなあ、僕がいい子すぎるんだなあ。ほかに身内がいないので、おばあちゃんに反抗心を抱くより、まだまだ甘えたい年齢なのだろうけれど・・・友だちとのことに口出しとかされたら私ならもっと嫌がるな、と思ってしまいます。でもね、身内に反抗できるって、それだけ愛されてる自信があるからこそ、できることなんですよね。主人公のカレは多分まだまだ愛に飢えているのかも。そう思うとちょっぴし切ない。

こちらに出てくるおばあちゃん、67歳とのことですが、今の67歳はおばあちゃんって感じしないですよね。まだまだ元気にその親の世代を介護してたりして、孫にもおばあちゃんと呼ばせず、○○さんと名前で呼ばせる人も多かったり。そういう意味では、おばあちゃんという言葉がふさわしい年齢自体が変化してきているようにも感じる今日この頃です。



10歳になっても14ひき

2016-12-13 21:09:51 | 雑誌

※写真:公園で家族ごっこをしてたとき、次男&三男が考えたキッチン

日曜日は、長男(小5)の少林寺のブロック大会でした。
思えば・・・アップルビーのような万年反抗期に加え、外では我慢するタイプのため、家に戻ると暴れまくってた長男。それはもはやDVと呼べるレベルで、もうお手上げ!!!ってなり、そのエネルギー何かほかのことにいかせないか?と探したのが武道でした

サッカーも周りからずいぶん勧められたけれど、途中から入りづらかったのと、どなたかが、今の子は習いごとが多すぎる。もし、どうしても何かを習わせたいのなら「道」のつくものがいい、道を究めて行くことは魂を鍛える・・・のようなことを書いていて、ナルホド~って納得したんですよね。華道、茶道、武道、弓道、書道、剣道etc.etc.そのとき長男もクラスの子がいないところに行きたかったこともあり、もちろん乗り気。空手もいいけれど、他人さまの靴そろえるところから始めるところとか、本当の強さって相手より優位に立つことではないよね、ってことを教えてもらいたくて少林寺にしたんでした。じいじも一緒に始めて、祖父孫の絆もますます強まりました

そして、始めて1年半、このたび初めて優良賞いただいて帰ってきました!いやあ、よかったね、長男。キレはあるし、声も腹の底から出てるし、なかなか素質ある。ただ、演武はちゃんと見ましたが、結果&表彰式の間両親は、ビール工場のオープニングフェスタに行ってたことは内緒です。いや、だって夫が一緒に来てっていうから・・・たまには夫孝行もしないとネ。地ビールめちゃめちゃ美味しかったなあ

アツプルビーだの『さんねんねたろう』だの、色々ここで書かれてきた長男でしたが、実はとーっても純粋。純粋すぎて生きづらかったところもあったのかな。そんな長男の心のHome、よりどころとなっているのが、いわむらかずおさんの『14ひき』シリーズです。外や友だちの前ではイキがって、悪い言葉使ってたりする長男ですが、寝る前にいまだに繰り返し読んでもらいたがるのは、こちらなんだな~↓


『14ひきのもちつき』いわむらかずお作・絵 童心社

14ひきシリーズは季節ごとに選べるのが嬉しいのですが、こちらはお正月を迎える前の12月に読むのにぴったり♪14ひきのおうちの中はこんな感じ↓

 

「こういう家に住みたいんだよ!」「家族いっぱいでいいな~。僕ここのうちの子になりたい!なりたいいいい~!!!」と本気で絶叫している10歳。大家族好きの寂しがり屋さん。
だ、大丈夫か!?・・・と一瞬心配になりましたが、いいんですいいんです。心に憧れの場を持てるって、いつしかそれが原風景になっていって、原点になり心強いこと。しかも、こ~んな素敵な場を選んだ長男センスいい(←親バカ)。ちなみに私の原風景は、アニメですが、『南の島のフローネ』に出てくるツリーハウスです♪ちょっとこの14匹たちのおうちにも似てるんだなあ。こういう持たない暮らし、ミニマルライフは母も憧れる~

ところで、ミニマルライフといえば、断捨離に燃えてた時期に、本を一気に整理したことがあるんです。所有しなくてもいいや、図書館で借りればいいや、って。その頃は知らなったんですね~。本がどんどん絶版になっていくこと・・・。幸い児童書は思い出深いものが多かったので、取っておいてホーントよかったです。断捨離はもっともっとしたいけれど、絶版本の児童書だけはどんどん増やしたい今日この頃です


静かに感動するクリスマス絵本

2016-12-12 08:55:10 | 絵本


週末は横浜へ。すぐ緑があるところに戻りたくなっちゃうハイジ状態の私ですが、活気のあるみなとみらいの辺りは大好きなのです~。クリスマスショッピングして、大学時代の先輩とランチして、赤レンガ倉庫のミネラルショー(鉱物好き次男用)見て、猛ダッシュで向かうは、いざ!みなとみらいホール

ノエル・ド・キャトルマン。兄弟ピアノ連弾デュオ、レ・フレールのクリスマスコンサートに行って参りました
今回は手違いから、席がちょっと遠目だったのですが、ランチ時のシャンパン&ワイン(こういうのがまたできるようになる日が来ただなんて嬉しい)でほろ酔いだったこともあって、目をつむって聞いていました。超高速弾きが有名な彼らですが、静かなしっとりとした曲も実は多くて、雪をイメージしたSnowという曲では、目を閉じるとなぜか今までの自分の人生の画が走馬灯のようにばあっと駆け抜けて行ったんですね。「ああ、いい人生だったな」って、まるでこの日が人生最後のような感覚を味わいました(笑)。音は色んな世界に連れて行ってくれる魔法ですね

さて、クリスマスが近づいてきて、子どもたちにもクリスマス絵本を読むことが多くなりました。明るく楽しいのも好きなのですが、キリスト教の環境で育ったためか、私にとってのクリスマスは、日本の“恋人たちのクリスマス”や“親子パーティークリスマス”でもなく、もっと静かで厳かなものなんですね。だから、こんな絵本を読みたくなります。↓



『ちいさなもみのき』マーガレット・ワイズ・ブラウン作 バーバラ・クーニー絵 
上条由美子訳 福音館書店

ちょうど、レ・フレールライブのときに友だちにプレゼントしたのもこの絵本なんです
マーガレット・ワイズ・ブラウンとバーバラ・クーニーの黄金コンビ。色彩も押さえてあって、静かに感動する物語です。

大きな木々から一人少し離れたところに立っていて、寂しいなあと思っていた小さなもみの木。ある年から毎年男の人がクリスマスの時期が近づくとその小さなもみの木を掘りに来るようになるんですね。その男の人の子どもは足が悪くて森まで来られないから。男の子と一緒に大きくなっておくれ、あの子が元気になるように、力になっておくれ、とその父親はもみの木に語りかけます。何がいいって、毎年春が来たら、そのもみの木を元の場所に戻して植えてくれるんです。ところが、ある年、もみの木が待てども待てども男の人は来なくて・・・。

もうね、絵本ながらにドキドキしちゃいましたよ。どうして来ないの?男の子に何かあった?それとも父親に???って。

お祭り騒ぎではない、クリスマスにも触れてもらいたいなあ、って毎年読んでいる大事な物語です