
『銀の馬車』C・アドラー作 足沢良子訳 北川健次画 【文学の扉】金の星社
またしても、隠れた名作がここに・・・!1970年代に両親の離婚をめぐる12歳の少女の心の成長を描いた物語。先日紹介した『ノーラ、12歳の秋』も同じく12歳の少女の話だったけれど、個人的にはこのアドラーの『銀の馬車』のほうが、THE☆児童文学として後世まで残ってほしいなあと思う作品でした。おばあさんの言葉遣いが丁寧なのもいい。読み応えがあって、読んだ後、心に確かな手ごたえのようなものが残る。ふわふわでない、確かな魔法が残る気がします

なのに!!!さもありなん、絶版ですってよぉ~


小学校高学年から。でも、子ども心を理解するために、やっぱり大人に読んでもらいたい一冊。
≪『銀の馬車』あらすじ≫
両親の離婚に伴い、母親が看護師の資格取得のために父方の祖母の家に預けられることになった12歳のクリスと7歳のジャッキーの姉妹。父方の祖母に会うのは初めてで、いじわるな魔法使いのおばあさんみたいだと警戒していたものの、理解あるおばあさんとバーモントの田舎暮らしの中で、クリスは次第に成長していく。楽しいことが好きで明るい父。もともとお父さんっ子だったクリスは会えない父への思いが募り、小言ばかり言う母への嫌悪が増すばかりだった。が、ある日彼女が焦がれに焦がれていた父の訪問は予想を裏切るもので、深く彼女を傷つけることとなる。やがて、嫌悪していた母が本当は愛情があるのだということに気づき、クリスは新しい生活へと心新たに旅立っていく。
正義感が強く、人のダメなところばかりが目についてしまいすぐに人を批判的に見てしまうクリス。一方、妹のジャッキーは構ってもらいたがり屋だけれど無邪気で嫌味がないのでみなから好かれるタイプ。
ああああ、よくある構図。兄弟姉妹に抱く複雑な思い、誰でも共感できるところがあるのではないでしょうか!?せっかくおばあさんに認められてさわやかな気持ちになったところに、妹がたった一握りの花を差し出すことによって、「やさしい子」と言われ、おばあさんを勝ち取っていく。その時の裏切られた感・・・!
うちの長男もこんな感じだわー。うちのはボキャブラリーが少ないから、ついつい単純な暴言に集約されて暴れるけれど、長男の内面もクリスよろしく複雑だし、そんな自分への嫌悪感が渦巻いているんだろうなあ、と思うとちょっと泣けてきます

小言ばかり言ってイライラしてるお母さんの描写には、わが身を振り返ってハッとさせられます



ところで、この物語、『ノーラ・・・』と同じく、苦しい胸のうちが描かれているのに、こちらのほうが確かな希望を抱けるのは、理解のある素敵な大人(ウォーレスおばあちゃん)とバーモントの自然があるから

ブラックベリーを摘んでジャムにしたり、にんじんパンにナッツブレッドを焼いたり(ん~、美味しそうっ


そしてね、何よりもこのウォーレスおばあちゃんの距離の取り方が、んもうねっ素晴らしい

やっぱり児童文学には「かくありたい」と思わせてくれるような人物との出会いがほしいんだなあ

ちょっとファンタジーめいたところ(銀の馬車)は出てくるものの、とても現実的なのでファンタジーが苦手な子にもおすすめ。
地に足のついた静かな感動のある物語でした

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