『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

『変わり者 ピッポ』

2016-06-05 23:41:09 | 絵本
 

『変わり者 ピッポ』トレイシー・E・ファーン文 ポー・エストラーダ絵 片岡しのぶ訳 光村教育図書

実話を元にして描かれた絵本。実話を元にした絵本はほかにも『図書館に児童室ができた日~アン・キャロル・ムーアのものがたり』や、『雪の写真家ベントレー』、『綱渡りの男』などもお気に入りですが、またお気に入りが増えました

現実的な次男は「これ本当にあった話?」というのにやたらこだわります。あからさまに空想と分かるような絵本はそれはそれで好きらしいのですが、現実にありえそうだとそれが本当なのかどうかにこだわるのです。そして、こういう歴史的なものを作った人の話になるとすごく刺激を受けるみたい。「スゴイ!!!」って

この変わり者ピッポ、原題ではPippo the Foolなので、もっとキツイ響きですね。まぬけ・能無しピッポとかお馬鹿ピッポとか。変わり者にはどことなくほめ言葉も含まれている気がするけれど、Foolは汚名返上に躍起になるのも分かる気がします

舞台は15世紀、イタリアのフィレンチェ。異色の天才建築家フィリッポ・ブルネレスキを描いた物語。
ピッポはいわゆる天才肌で凡人が理解できないようなことばかり日々考えていて、変わり者ピッポというあだ名をつけられてしまいます。登場人物たちがちょっといや~な感じなところも人間くさくてまたいい。そして、周りを見返してやるぞ!とピッポが挑んだのがサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドーム建築のコンテストだったのです。
紆余曲折を経てコンペに勝ち、フィレンチェのあの大聖堂のドームを作ることになるのですが、現代と違って、クレーン車をはじめとしたマシーンのない時代。人力だけで、天空にドームを作る!計り知れない苦労があります。完成するまでにナント16年もかかったんです!!!

作業をしていると、ピッポは胸のすみっこでパチパチはじける感じを受けるのですが、ここがいいんですよねえ。これ喜びの感覚だったんです

当たり前のように眺めている歴史的建造物。当時の人々の暮らしぶりをこうして絵本で伝えてもらうと、ぐっと当時のことが身近になり、そんな状況の中でどんな風に作られたかを知るのは感動します

現実派の我が家の次男は、ピッポが設計図に取り組んでいる場面にワクワク
母は性格も曲がってそうながら、好きなことを追求するピッポに親(本当はピッポを公証人にしたかったそう)は苦労しただろうなあ、なんて思いながら感心していました

好きなことのためなら、がんばれる!またそれを教えられました