『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

『ルピナスさん』

2016-04-18 21:05:55 | 絵本
 

『ルピナスさん』バーバーラ・クーニー作・絵 掛川恭子訳 ほるぷ出版

地震に関して思うところは色々あるけれど、今はこのブログでは触れないことにします。

昨日は春の嵐の一日でしたが、今日は本当にあたたかい日でついに羽織るものなし!と思いきや午後にはまた強風の曇り空
春はここにもあそこにもお花が咲き乱れていて、お散歩していていると毎年毎年驚きます。こんなにもみな花を植えていたんだなあって。春になるといっせいに花が咲き乱れる、そんなとき読みたくなる絵本が『ルピナスさん』です。

バーバーラ・クニーの絵本はどれもお気に入りなのですが、人間の表情がやたらにこやかじゃない、言ってみれば無表情に近い!?ところがいい
昔キティちゃんの人気の秘密は口がないから自分の感情を投影できること、と言われたことがありましたが、あんな感覚!?

ルピナスさんは自立した女性の一生を描いた物語ですが、絵本といえども中高生や大人にもおすすめ。
幼児は単純に絵の美しさや世界各国を周るというところで楽しめますし、中学生以上はこの物語にある深い思いを味わうことができます。うちのチビたちも大好きです

種から蒔いてお花が咲くのを待つのってね、すぐに結果が出ないから忍耐がいるんですよね
目先のことにとらわれるとできないこと。
「この世をもっと美しくするために何かをする」という幼い頃おじいさんと交わした約束、ルピナスさんがそれを果たせるのは実は老人になってからなんですね。それまで図書館員をしたり、世界中を旅したり、ひたすら自分を生きている。そして、腰を痛め、ご隠居さまのようになってから、変人と言われつつも、種をまき続けたルピナスさん。やがて春になり、丘や町がルピナスの花でいっぱいになった場面は圧巻です!!!

『ルピナスさん』を読み返すたび、そうだそうだ世の中を美しくすること以外に大事なことってないんだった、と思い出させられます
すぐ忘れちゃうんですよねえ。正義感ほどやっかいなものはないと思っているのに、色んなことが起こると、この場に及んでまだそういうこと言う!?と政治家や組織にあきれてみたり、ちょいと内心憤ってみたり。それらはすべて自分の中の「正しい」を軸にするか沸き起こる感情。自分の「正しさ」と違う人を見ると知らず知らずのうちに批判的な思いが出てきてしまう。

でもね~、そんな暇はないのです!
世の中を美しくするために、自分でできることやってればいいんですよね、美意識(あるいはワクワク)を軸に。この美意識が今の世の中減ってきてしまっているのかな、って感じます。おっと、またクセが出ちゃった。人のことはどうでもいいのです。まずは自分、自分!動けよ、自分。

花の種のように結果はすぐには出ない。ルピナスさんのように人生の終盤に来るまで実行できないこともあるかも。そして、冬しか見てないと春が来るなんて信じられないかも。
でも!!!できるときにできることを、気づいたときに次の世代のために種を蒔く。色んな人が、色んな分野で、自分の分野で種を蒔く。

いつ咲くか分からないし、芽を出さない種もいっぱいある。だからこそ、いっぱい蒔いて蒔き続ける。今はまだその花は見えないかもしれないけれど、いつか一斉にその思いの花は咲き始めるのでしょう。世の中はそんな人たちが蒔いた美しい思いであふれている美しいところなんだなあ、としみじみ思います

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