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『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

思わず海に出たくなる!

2017-09-01 23:51:56 | 日本文学


『風の靴』(2009年)朽木祥作 講談社

夏休み最終日にご紹介しようと思っていて寝落ち。新学期始まってしまいましたが、今日の一冊は、潮の香りと光を感じるコチラ
湘南が舞台なので、この辺に住んでいる子たちにはぜひ読んでもらいたいなあ
舞台が身近なせいか、読書が苦手な我が家の小6長男も、‟家出”というキーワードに惹かれて(←そこ~!?)なんとか読めました

《『風邪の靴』あらすじ》
優秀な兄と同じ啓光学園に合格せず、中学受験に失敗した海生は、兄と比較されることに嫌気がさし、家出することに。お寺の息子で親友の田明とヨットで二人旅の予定が、なぜか田明の妹八千穂と犬のウィスカーもついてきて・・・。途中で人命救助をしたり、おじいちゃんの遺言に従って秘密の入江を探したり・・・自分探しを通じて成長するひと夏の物語。


読んでいてワクワクします。まず、子どもだけで出かけてしまうところ。子どもだけでヨットだなんて非現実的?
いえいえ。海近のこの地域ではヨットスクールも盛んなので、乗れる子たちっているんですよね。でも、逆にいうと海が近くにない人が読むのもいいのかもしれません。手に届きそうな憧れにつながるかも

憧れ・・・といっても、まあ、家出なのですが。なので、読んでるほうはワクワクなのですが、主人公はどこか雲が晴れない。自分探しの旅なのです。主人公の抱えているモヤモヤが、実に現代的なので現代っ子たちも感情移入できるのではないかな。

ただ、一つだけ違和感覚えたのは、主人公と親友が繰り返し繰り返し『十五少年漂流記』を読んでいるというところ。今の子・・・読まない。仮に、読む天然記念物ものの子がいたとしても、親友と揃って夢中になるというのは、夢のような設定かなあ

さて、この物語の中には、とっても楽しそうで、真似したい場面もいくつか
ねこじゃらしの穂のポップコーンとか、ホッカイロとボロ布で作る即席花火とか。いやん、楽しそう

主人公の心の葛藤も描いているのですが、なんというかそれがさらっとしてていいんです。大海原に出るせいか、人間関係だけに終わっていない。人間関係だけで終わるものは、息苦しいんですよね。それが、もっと大きなものに包み込まれているから、さらさら流れるように進む。そこが、いい。

ところで、子どもだけで、キャンプといえば、やっぱりアーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』シリーズを思い起こすのですが、その翻訳者である神宮輝夫さんが、この『風の靴』の解説を書かれています。
そして、何ともうらやましいことに、アーサー・ランサム・クラブ(このシリーズのファンの集まり)のみなさんは、過去にこの物語と同じ軌跡をヨットでたどるというイベントをされたそう!
弁天島→江ノ島、啓光学園→栄光学園、南鎌倉→西鎌倉(でも、挿絵は北鎌倉っぽい・・・)と置き換えられるのですが、三浦辺りの風色湾はどこだろう?と思ったら、そのイベントでは訪ねたそうですよ~。

そのうらやましい様子はこちらに詳しく書かれています↓

COOTさんブログ

悩みもそりゃあるけれど、こんな子ども時代いいなあ!
冒険、そして自分を見つめ直す。爽やかなとっても素敵な物語です


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