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『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

『雨ふる本屋』

2016-05-30 23:36:55 | ファンタジー・日本
 

『雨ふる本屋』 『雨ふる本屋の雨ふらし』日向理恵子著 吉田尚令絵 童心社

今日は雨でしたね。雨音聞きながら読書をするのがたまらなく好きです
そんな雨のとき、雨音聞きながら読みたいのが『雨降る本屋』。今の子たちでも手に取りやすそうなかわいらしい表紙
本屋さんに行くとたいてい平積みになっているので、気になって借りてみました。売るぞ~感がビンビンに出ていると素直に受け入れられないひねくれた性格なので(笑)、この物語も全然期待していませんでした。期待していなかっただけに、思ったよりも「おっ」という感じ(←何様!?)。

ただ・・・私は大人だからか物足りなさも正直感じてしまいました。どこがいけないのかと問われるとうまく答えられないんですけどね。設定・ストーリーや発想も好きなのに・・・盛りだくさんすぎるのかなあ?作者が読者に披露したい発想が前に出過ぎてるというか・・・。児童文学というより童話といった感じ?小学生のころに出会っていたら大好きになっていたかもしれません。やさしいファンタジーです

さて、この物語のワクワクする設定とは、図書館の奥にふいに雨降る本屋というのが現れるんです。〈読みあさりブンブン〉俗に言う本の虫、本屋の主人であるフルホン氏、シオリにセビョーシと言う名の妖精などなど、ネーミングも面白い

そして、最後まで読まれなくてほっぽっておかれた物語たちが集まる場所が、ほっぽり森。雨を利用して物語を完成させるんですね

人間の身体だけでなく、心もほとんど水からできている。だからひどく悲しかったり、嬉しかったりすると涙が出てくる。
人間だけじゃなく、世界中のもの ー 生きものや、花や木や石や風 ー の心や記憶は、水とつながりやすい。
雨つぶにいろいろなものの記憶がふくまれている。涙は少しずつ空気に溶けて、空にのぼり、雲になり、そうして雨になってめぐる ー 雨には、この星の物語がつまっている。


この発想がとっても素敵だなあって思いました。ただ・・・それが全て舞々子さんという助手によって「言葉で」語られているんですね。説明になってしまっている。私はこれを物語で描いてほしかったんだなあ、と気づきました。

雨降る本屋の雨ふらし』は続編ですが、こちらのほうが好きかも。今度は妹と一緒に雨降る本屋に向かい、本屋や図書館を壊してまわる、“ミスター・ヨンダクレ”によって重大な危機が迫っていることを知ります。姉妹が力を合わせてその状況を救おうとするのですが、ミスター・ヨンダクレがなぜそんなことをしているのか、その理由がホロリときます。誰にだってどんな行動にだってそうする背景があるんだ、ってことを教えられます。

これから梅雨の季節。憂鬱になりがちな雨も、ああ今ほっぽり森で物語が完成していってるんだなあ、と思うとちょっと嬉しい。小学校中学年からおすすめです


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