
『赤い鳥の国へ』
アストリッド・リンドグレーン作 マリット・テルンクヴィスト絵 石井登志子訳 徳間書店 2005年翻訳初版
リンドグレーンといえば、『長くつしたのピッピ』シリーズや『やかまし村』シリーズなど、底抜けに明るくて愉快なイメージがありますが、暗くて悲しい物語も実はけっこう書いているんですよね。『赤い鳥の国へ』は短編集『ちいさいきょうだい』の中で、大塚勇三さんが「小さいきょうだい」と訳した物語を、オールカラーの挿絵を入れて、石井登志子さんが翻訳しなおしたもの。

『小さいきょうだい』のときのイロン・ヴィークランドさんの挿絵も好きでしたが、今回のマリット・テルンクヴィストさんの挿絵も、特に春の国へときの挿絵(写真ちょっとブレてますが


楽しそう!私もこんな場所で小舟作って小川に流したり、一緒に遊び小屋作ったりしたーい

ストーリーは、ネタばれ含みますので、知りたくない方は以下読まないように。
≪『赤い鳥の国へ』あらすじ≫
みなしごになったマティアスとアンナの兄弟は、ある村のお百姓さんのところで働かせてもらいますが、ツライ毎日。冬になれば学校へ行ける、とそれだけを希望に毎日毎日を必死で生き抜いていきます。ところが、あれだけ恋焦がれた学校でも先生は厳しく、子どもたちからは貧しいことを馬鹿にされる。学校も灰色でした。そんなある日二人は帰り道に真っ赤な鳥を見つけます。その鳥に導かれ、見つけた扉の向こうは春の国でした。たくさんの子どもたちと遊ぶマティアスとアンナ。そこにはみんなのお母さんがいて、おなかいっぱい食べさせてくれます。灰色の現実と春の国を何度か行ったり来たりしていた二人でしたが、最後に下した決断は・・・。
ネタばれになりますが、赤い鳥に導かれてたどりつく春の国ミナミノハラでは、いつも扉が少し空いている。閉めない理由は一度閉めたら二度とあかないからなんですね。で、学校が最後の日(それ以降はまたお百姓さんのところでのツライ日々のみが待ち受けている)、マティアスとアンナは扉を閉めてしまうんです!二度とあかないように。
最後二人が死んでしまったんだろうなあ、天国へ行ってしまったんだろうなあ、ってことは大人が読めば感じることであり、多分多くの子どもも分かること。ちなみに読解力のないうちの子(小2)は分かりませんで、悲しい結末とはとらえず、お百姓さんに二度と会わなくてよくなったハッピーエンドと捉えてました

この結末はずいぶん意見も分かれるみたいですね。さくまゆみこさんのホームページにある子どもの本で言いたい放題はいつも面白くて拝見しているのですが、この物語に関しては、意外にもネガティブに受け止められてる方が多くてびっくり。悲しすぎて、自分のところの学校や図書館には置かないとか・・・。中でも「苦しかったら死んじゃいな」というようなメッセージに読めたという方もいてビックリビックリ

私自身は「苦しかったら逃げちゃいな(逃げてもいいんだよ)」というメッセージには思えましたが、“逃げる=自殺”は考えつかなかったな。私はどちらかというとこのミナミノハラに希望を見出したほうです


この兄弟は物理的、環境的に逃げ場がありませんでしたが、今の子は精神的逃げ場がないなあ、って思う今日この頃なんです


もし、心の中だけでもミナミノハラを住まわせることができて、そこに逃げれることができたなら・・・それは、その子にとって希望であり救いになる、と私は思うんだけどなあ

ほかにも読んだ方の感想を知ってみたいです。
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