徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

まだ科学で解けない13の謎

2019年10月07日 | 物理

本を読んだ ”まだ科学で解けない13の謎 Things that don't make sense. by Michael Brooks ” その謎を列挙すると、暗黒物質・エネルギー、パイオニア・アノマリー、物理定数の不定、常温核融合、生命、火星生命、SETI,巨大ウィルス、死、性、意志、プラセボ、ホメオパシー、以上の13

胡散臭いタイトルだが図書館で見つけて立ち読みをしてて、つい引き込まれ、自宅に借り出して一気に読んでしまった。最初のテーマが暗黒物質、これは現代科学の最大の謎の一つで銀河の回転運動とそれを引き付けている重力が、見えている構成物質では到底説明できなく、暗黒物質なるものを想定する必要があるという問題だ。人類がこの問題に気付いて既に30年経つが未だ皆目見当がついていない。ところが、次のパイオニア・アノマリーの問題と絡めて意外なところに回答があるかもしれないという話。

パイオニア・アノマリー(変則事象)とは1970年代に打ち上げられ今、太陽系外・恒星間飛行を続けているパイオニア10,11号の太陽系外軌道が計算値から少しづつズレて来ている事実をさす。Wikiでこれを調べるとこの原因は搭載されている原子力電池の発熱が原因だと書いてあるが、この問題の発見者であるJ・アンダーソンはそれには異を唱え続けている。

暗黒物質とパイオニア・アノマリーのどこに共通点があるかというと、重力定数Gが果たして不変なのかという基本的な疑問の提起だ。Gは理論値ではなく計測によって求められた定数だが、これが地球近辺とそれから離れた太陽系外空間とで違うとしたらパイオニア・アノマリーは起こりうるしその拡張で暗黒物質などを想定することなく銀河系の回転運動も説明がつく。

実は物理定数の定常性に関しては別のアノマリー事象があり次の章で言及している。物質を構成している原子構造を決定する微細構造定数αが宇宙の初期に発せられた120億光年前のクェーサーの光から推定される値と現在の値との間に差があるという報告がある。これはアフリカ・オクロの天然原子炉の原子崩壊データからも確認されている。つまり物理定数が変わり得るとすると我々の科学的認識は根底からひっくり返ることになる。

また、この物理定数だが、この宇宙には23の重要で基本的な定数がある。光速度やパイ、プランク定数などだが、これらの定数は宇宙の初期状態で値が変わる。この定数が現在の値とちょっとでも違うと、この宇宙は爆発を続けて拡散してしまうか一点に縮んでしまう。あるいは水素以外の原子は存在せずそれ以外の物質のない宇宙になる。不思議なことに、我々の宇宙は実に絶妙なバランスでゆっくりと膨張を続けていて、我々の体を構成する炭素をはじめとする元素をスーパー・ノバの爆発で作り出している。なぜか? ここにある奇妙な主張が加わる。人間原理というやつだ。

我々が存在して、この宇宙を認識しているから定数はそうなのだ、と。実は宇宙は無数にあり、それぞれの宇宙で違った定数を持つ。その中で、たまたま人間という知的生命が生まれた宇宙がこの宇宙であったという説明(´・ω・`)

その他、生命とか死、性、意志など興味あるテーマが続く実に面白い本です。

追記; この著者は量子力学で博士号を取っている。私個人として科学の謎を言うなら一番最初に来るのは量子の謎だな。二重スリットの干渉縞とかシュレジンガーの猫とか量子もつれとか多世界解釈とか、謎というより理解不能の事実ともいうべき事柄。崖の淵から暗い深淵を覗き込むような... きっとこの著者は専門であるがゆえに答えの出せない問題を出すのをためらったんだろうなと思う。

 


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