おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

ロシア·ピアニズムの贈り物から

2019年07月01日 | 書籍紹介
原田英代さんの「ロシアピアニズムの贈り物」、参考になることが沢山あります。
興味深く読ませて頂きました。

いくつか心に残ることがありましたのでご紹介したいと思います。

「ロシアに伝わるピアニズムとは」から
伝統を受け継ぐとはどういうことなのか?形だけを真似てみたところで伝統を受け継いだことにはならない。伝統が伝えられていくためには基本的な理念が十分理解されていかねばならばいし、それを発展させるだけの資質を持ったピアニストが養成されなければならない。

「オシップ·ガブリロヴィチ」から
タッチは鍵盤に加えられる重みの量と速度によって決定される。教師は生徒一人一人の聴覚に訴えかけて教えるべきであり、これこそ唯一の道である。つまり、教師がまずピアノで音色の効果のある演奏を示すべき。
指の力みによる演奏は乾いた硬い音を生むため、肩から腕、指先まで完全に力を抜いた状態で行う腕によるタッチを推奨する。

「ロシアピアニズムの多様性」から
ロシア人には知的な寡黙性がある。知的停滞の原因はロシアの未開状態にではなく、この文化の独特の性格に求めなければならない。この知的寡黙性こそが、高い精神性の芸術を生み出す源泉でもあったのだ。

「文学を読む必要」から
全てを体験することは不可能だ。それならばわかろうと努力することだ。

「一音一音に感情を宿らせる」から
ウラジーミル·ウラジーミロヴィチ(ソフロニツキー)、あなたの演奏は魂が込められており、霊感に満ち即興的な力にあふれているのですが、その秘密は一体何なのですか。
ソフロニツキーは答えた。私は一音一音を考えて弾いている。
この神秘的なピアニストはたんに直感に任せて弾く演奏家ではなく、音一つ一つと生を共にしていたのだ。
考えるとは、例えばその音程を感じること、その音程と自分が同化することを意味する。
メルジャーノフは一つ一つの音に人間の感情を宿らせていくことに精神を集中した。わずか一つの音でも感情を示唆できた。

「メルジャーノフの人生哲学」から
苦労が人間を豊かにする。失望は人間を熟させる。いかなるときも希望を失ってはならない。しかし、期待はするな。

「重力奏法」から
ロシアのピアニストは二千席からなる大ホールでも音を語ることが出来るのだ。生徒はまずこの奏法の訓練をさせられ、教授は指のみで弾く生徒にパパ、ママのために弾くならばそれでいいがねと言ったものだ。この重みを使った奏法をリストもアントン·ルビンシュテインも駆使していた。
重力奏法を一言で説明するならば、手首の弾力性を利用し、腕、肩、背中、ひいては身体全体の重みを使って弾く奏法と言える。それが身に付くまで忍耐強いアプローチが必要となる。
これはたんに楽をして弾くことや大きな音を出すことが目的として編み出されたのではなく、深い精神性を湛えた多様な音を生み出し、どれほど大きなホールにおいても音楽の内容を最後席まで伝えるためのものである。

胸の筋肉を使う。腰を落として鎖骨のすぐ下の部分を使う。さらに大きな音量が必要な時は腰から弾く。これは速いパッセージを強音で響かせたい時に特に役立つ。
どのように習得するのか。最初は一音一音手首の上下運動を使って音を出す練習をする。イリーナ·ザリツカヤ(ショパンコンクールでポリーニに次いで2位)も講習会でこの方法でゆっくりなテンポで一つ一つ重みをかけていく練習の仕方を生徒たちに忍耐強く教えていた。

「いかに重力奏法を習得したか」から
レッスン中、メルジャーノフは重みをかけろ、重みをかけろと言った。彼は重みをかけているのであるが、それと同じほど下半身からの支えがあった。全ての関節と筋肉が柔らかく下半身からの支えのおかげで、液体状のエネルギーがひっきりなしに楽器に流し込まれ音に還元されていた。

肘の柔軟性、手の使い方なども書かれています。
忘却の川やチャイコフスキーの四季についての話も是非読んで頂きたいです。

コメント
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