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弁護士の先生の授業(2015.11.12)

2015-11-13 14:17:10 | 日記




こんにちは。

昨日、4年生24名を対象に、弁護士の先生に法律の授業をお願いしました。

内容は、「いじめと権利侵害」についてです。

授業内容については以下の通りです。

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日時:2015年11月12日(木)10:50-12:20
対象:4年生(社会科免許取得希望者)24名
講師:原 富祐美 弁護士 

【授業実施の理由】
・地理学の学生が多く法律教育をあまり受けていないため、学んで欲しいと思ったため。
・学校の教員は法的なトラブルに巻き込まれた時とても弱いと感じたため、耐性を少しでも身につけてもらいたかったため。

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【おおよその授業内容】(先:先生 / 学:学生)

先「今日は、いじめが裁判になったとき、どうなってしまうのか。どういう点が問題になるのか、みなさんとともに考えていきたいと思います。」

10:53 「いじめ」の定義を紹介
先「いじめってどんなものだと思いますか?」

学「相手がいやだと思ったことをすること、殴る蹴るでなくても、危害をくわえたらいじめになると思います」
学「相手が内心どう思っているかが大切だと思います」

先「ちょっといじってるだけって思っていても、やられている側にとってはいじめになるでしょう。でも、小中学生は『やられてもしょうがないことがある(しょうがないいじめもある)』と言います。みなさんは、いじめられてもしょうがない場合があると思いますか?」

学「それは、ないと思います。イジメを認めてしまうことになるので、ないと思います」

先「でも、実はいじめが許される場合があると半分以上の子どもは答えます。『他人をいじめていたこどもが、いじめられるようなことはある』と子どもは答えます。そういう子どもに対してみなさんはどう対処しますか?」

学「いじめられたときに、だれかに相談していれば、大ごとにならない。最初の対応が悪いと指導します。結局同じことをしているのではないかとも言います」

先「こうした子どもたちの考えの奥には、いじめた子はいじめられてもしょうがないという発想があります。でも、それを繰り返していたら、エスカレートしていくのではないですか。そういう連鎖をどこかで止めないと、どんどん悪化していきます。それでいいのかと子どもにききます。結果自殺するところまで追い詰めてしまうこともあると話します」
先「でも、『やったらやりかえす』という発想から抜け出すのはなかなか難しいです。そこで、いじめを道徳面からとらえるのではなく、『いじめとは権利の侵害である』と弁護士はとらえ、そのような考えを乗り越えようとしています。

先「みなさんは、『幸福追求権』は知っていますか?弁護士は、これを『安心して自信をもって自由にいきていく権利』と子ども達に説明します。『もし学校でいやがらせをうけたらどう?安心できる?』と聞くと、こどもは『権利の侵害』を捉えることができるようになる。人格権を侵害すれば問題になるのですよと教えます」

11:05 判例を読む
先「では、ここで実際にあったいじめ問題の判例(横浜地裁判決 平成9年)をみていきたいと思います。慣れていないと読むのが大変ですが、時間を取りますので読んで下さい。」
学(学生は判例を読む)

11:23 裁判の流れと学生の感想
先「さて、ここで、いじめ裁判における裁判所の思考過程を説明します。この流れで判断がされます」
① 実際に何があったのか(事実の認定)
 各生徒の行為,学校の安全配慮義務違反
② これが違法といえるのか(評価)
③ 上記違法行為が自殺の原因といえるのか(因果関係)

先「この判例を読んでどう思いましたか」
学「なくなった一郎君もけっこうやりかえしてるから、いじめという感じがしません」
先「ここで言ういじめは、殴られたり、無視されるというものではありません。いじめていた子ども達も一郎君と遊んでいる。わたしたちが思うようなイジメとは違うけれども、裁判所はこの事案をいじめと認定しました。」

先「裁判所はひとつひとつのトラブルではなく、全体でとらえています。ある子どもの違法性を認めませんでした。なぜだと思います。」
学「一郎がさきにやったことに対してやり返しているだけだからです」
先「そう、その子どもは同程度のやり返しだったと裁判所が判断したのだと思います。他の子ども達は一郎がやったこと以上にやり返したことが問題になったのだと思います。このように裁判になると、それぞれの違法性を詳細に検討します。実際にみなさんも保護者から相談をうけたら、加害者、被害者からきちんと事実を認定していく調査が大切なことだと思います。」

11:48 安全配慮義務違反
先「学校の安全配慮義務違反があるかどうかについても裁判所は判断しています。つまり、学校や担任はやるべきことをやったのかということです。ただ、公務員の不法行為に基づく損害賠償は、国家賠償法により判断されるので、こういうときには、公務員である担任の先生等の個々の先生に損害賠償を請求することはできませんので学校設置者である自治体等に損害賠償請求が認められますが、実際の認定においては、個々の先生方の行為がどのようなものであったかが問題になります本件では、結局裁判所は、ひとつひとつのトラブルを解決するのでは不十分で、一郎について起こっているすべてのトラブルを一連の出来事と捉えて、根本を解決することが必要だったがそれが行われなかったとして、安全配慮義務違反があったと裁判所は認めました」

11:52 先生の対応について
先「このとき、先生の立場上、どうしたら責任を問われずに済んだのでしょうか?どう対処すればよかったのでしょう?」
学「計画的に指導すべきだったと思います。根本を解決するべきだったと思います。クラス全体の指導などをもっとやったらよかったと思います」
学「クラス全体の場で話し合うべきだったと思います。他の教師とも連携する必要があったと思います」
先「この事案では学校が継続的な指導をせず、学校は個別問題をとらえてしまい全体が見えなくなってしまっていたのだろうと思います。教科も教えなければならないのに、教師はとても大変な仕事だと思います」

11:56 葬式ごっこの判例(東京高裁、平成6年)
先「これは『葬式ごっこ』として有名な判例です。この場合、先生ですらいじめが見えなくなってしまっている。あまりにいろいろなことがあると、透明化してしまうらしい。先生ですらそうなってしまうことがある。気づけなくなってしまう環境になってしまっています」

12:00 学生から質問
学「判例には教師が・・・したと書いてあるが、記憶にないときはどうすればいいのでしょうか」
先「記憶には残っていないでしょうが、先生は子どもを指導するときには保護者に説明などをするためにメモをとっていると思います。」

12:10 権利教育といじめ
先「子ども達には『みんなに権利があるんだよ』って授業をしますけど、みなさんはどう受け止めますか?」
学「実感があまりないです」
先「でも、そうやって小学生におしえると新鮮に思ってくれます。自分が守られることは他人も守ることに通じるという考えは新鮮に受けとめてくれているようです。先生の中には、権利教育からのイジメの予防に取り組んでいる先生もいます」
先「最後になりましたが、コップが人の心に例えられると聞いたことがありますか?つまり、いやなこと、悲しいことがあるとコップの中にたまっていきます。その後、何もないと蒸発してなくなります。でも、どんどんたまっていってあふれそうなときに、最後の一滴が落ちるとあふれてしまいます。このあふれたのが自殺やPTSDだと説明しています。問題は外から見えません。だから問題になります。道徳的観点からの教育に留まらず、いじめは権利侵害だという観点からの指導も取り入れてもらいたいと思います。本日はありがとうございました。」

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教員はトラブルに巻き込まれたとき、あまりにも弱く、それに対して無防備だと思います。

それは教員は利益などで動いていない証左ですが、法的なトラブルにまきこまれたり、保護者から法外な抗議されたりしたときに、少しでも耐性を身につけておかなければならないと思います。

これは、保護者やよそからのクレームに対して、杓子定規に法的解決をすべきだということではありません。

こういうことになってしまうこともある、少しでも覚悟をもっておくことが必要だと思うのです。

わたし個人もとても勉強になりました。

原先生、お忙しい中ありがとうございました。

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