おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「天使の歩廊」 中村弦

2010年05月12日 | な行の作家
「天使の歩廊」  中村弦著 新潮社 (10/05/11読了)

 サブタイトルは「ある建築家をめぐる物語」。明治、大正、昭和初期を生きた、天才建築家・笠井泉二(多分、フィクション)をフィーチャーした物語。

 泉二は銀座の西洋洗濯屋(クリーニング屋)の二男坊として生まれる。子供のころから、頭脳明晰な上に、図画の才能があり、ひまさえあれば、建物のある風景を写生していた。大学卒業後は、子供の頃からの夢だった造家師(ぞうかし=かつては建築家をこう呼んでいたそうです)として、類まれなる才能を発揮する。

 しかし、泉二の建築は、万人に理解されるものではなかった。というのも、泉二が引く図面は理論にあったオーソドックスなものではなく、あまりにもオリジナリティに溢れすぎていたから。なぜなら、泉二は天使と交信(本文にそういう書き方をしているわけではありませんが…)することで、依頼主の内面世界に入り込んで、心を映し出すような家を建てたから…というような内容。

 2008年の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。確かに、ファンタジーな感じで、ちょっと不思議な空気感があります。客観的には、「多分、こういう物語好きな人が多いだろうなぁ」というのは解ります。

 でも、私にはイマイチ響きませんでした。そもそも、なんで、泉二が天使と交信できるのか(イタコか?)もよくわからないし、泉二自身が不思議な能力を持っていることをどのように受け止めているかも書かれていないし…。ファンタジックというよりも、消化不良感が強かったです。