おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

清治 近松復曲三夜の「第一夜」 @ 紀尾井ホール

2009年07月04日 | 文楽のこと。
清治 近松復曲三夜の「第一夜」 @ 紀尾井ホール

 清治さんが、ストーリーだけ残り、曲が伝わっていない近松作品を復興するとい
う企画イベント。3年かけて1作ずつ上演する計画で、今日は、その第一作の発表。

 なにしろ、タイトルに「清治」の名前が入っているからには、誰だって、清治さんの超絶技巧、激しい戦う三味線でスカッとして、テンション上げて週末を迎えたい-という気分で高いチケットを買って、会場に足を運んだんだと思うのです。

 ところが、第一部が始まっても、なかなか清治さんは登場もせず。というよりも、三味線すらない素浄瑠璃という感じ。正確に言えば、近松時代を再現した一人遣い人形や、杉江みどりさんの切り絵による電子紙芝居チックな演出もあったのですが…「清治さん、いつ、登場するんだろう~?」と気になっていたせいもあるけれど、浄瑠璃にもイマイチ乗れない。と思っているうちに、最初の一時間が終了。

 そして、休憩をはさんで第二部が始まり、ようやく、清治さん登場!

 しかし、どうも、単調というか… 清治さんの本領が発揮されるようなすごい音曲じゃぁない。もちろん、何か所かは見せ場はあったものの、曲全体とみれば、ままったりとしていて、多分、観客が「清治」のタイトルに期待したものとは、かなりズレていたのではないかという感じ。

 そして、「何か違う」っていうのは、もしかしたら、観客だけではなく、舞台にいる人たち自身が感じていることなんじゃないかと思われました。
  
 何しろ千歳大夫、呂勢大夫のダブル大夫が、まったくシンクロしていない。二人が同時に同じ節を語るところも微妙にタイミングがズレているし…。ノリノリの時の千歳大夫は、顔を真赤にして、身体を楽器のようにして、全身で語っているのが観客にも伝わってくるのに、今回は、それが無い。相生座では、あんなに熱演していた呂勢大夫も、書いてあるものを読み上げるような語りで、観客を乗せてはくれない。
 
 多分、冷めた気分でいたのは私だけではなく、会場全体の空気が「あれ? 私、清治さん聞きにきたのに…」とちょっと期待外れな気分になっていたと思います。観客席も、まったく、熱気なし。


 最終盤は、早く終わらないかなぁ、夕ごはん何かなぁ…。という感じでした。

 ちょっと残念。来年、再来年と続けていいくには、相当、強力なテコ入れが必要です。