郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

映画『プライドと偏見』

2006年01月18日 | 映画感想
水曜日、レディースデイなので、観てきました。
キーラ・ナイトレイは好きですし、原作の古典小説、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』は、高校生のころに読んでいらい、結構、気に入っていますし。
うーん。なんといえばいいのでしょうか。
心配していたのですが、やはりちょっと、キーラ・ナイトレイは現代的にすぎましたねえ。

ヒロインのエリザベスは、向こう意気の強い女性ではあるのですが、なにしろ舞台は、19世紀初頭。フランスでいうならば、ナポレオン帝政の時期で、ドレスはエンパイアスタイルです。
オースティンは、自分と同じイギリスの田舎のジェントリー階級の娘を主人公として、この小説を書きました。
エリザベスの父親は小地主なんですが、当時のイギリスでは、男系長子相続、限嗣相続が行われていまして、娘は父親の不動産を相続できないんですね。娘ばかりだと、遠縁の男性が財産を継ぐことになって、父親が死んだ後、妻や娘たちは、土地からの収入の道を無くしてしまいます。
エリザベスは五人姉妹の上から二番目で、兄弟がありません。
つまり、釣り合う相手を見つけて結婚しなければ、父親の死後、面倒を見てくれる兄弟もありませんし、路頭に迷います。
オースティンが描いたのは、そういうイギリスの田舎の保守的な世界で、エリザベスは機知に富み、はっきりとものを言う女性ではあるのですが、けっして、型破りで破天荒なわけではなく、常識をわきまえた上で、意志の強さを見せるタイプです。

キーラ・ナイトレイは、容姿からして、野性的な印象があるんですよねえ。戦闘的、とでもいうのでしょうか。
それこそ、『嵐が丘』のキャサリンでもだったら、似合いそうなんですが。
実際、室内シーンではいま一つだった彼女ですが、屋外シーンはよかったですねえ。イギリスの田舎の荒涼とした風景に、ぴったりと似合いました。
妹の不品行を嘆いたりするあたりが、どうもしっくりこないんですよねえ。
でも、まあ、キーラ・ナイトレイは美しいので、こういうのもありか、という気もしないではなかったのですが、やはり問題は、ヒーローのダーシー卿なんでしょう。

いえね、最初に小説で読んだとき、小娘だった私には、ダーシー卿のどこがいいのやら、さっぱりわからなかったんです。
そりゃあ、金持ちで、容姿もよくて、と書いてはいるのですが、小説では容姿は見えませんしねえ。
それをわからせてくれたのが、コリン・ファースでした。
イギリスのBBCが製作した『高慢と偏見』で、ダーシーを演じたのがコリン・ファースだったのですが、全英の女性が熱狂して、テレビの放映時間には人通りが絶えた、とまでいわれています。
NHKのBSで放送があったそうなのですが、私は知りませんでした。DVDで発売されていることを知り、買ってみたんです。
たしかに、えー、ダーシーってこんなに魅力的だったんだ、と再認識させてくれるほど、すばらしいはまり役でした。
ですよね。『ブリジット・ジョーンズの日記』で、ご本人のコリン・ファースが、パロディまで演じているほど。
あんまりにも彼の演じるダーシーの印象が強烈すぎて、今回はだめでした。
イギリスの舞台俳優だという話で、けっして下手な役者さんじゃないんですけどねえ。
貴族的な尊大さ、というよりも、若さゆえの内気、に見えてしまうんですよねえ。

ブログに載せる写真を選ぶにも、どうも、室内のドレスアップシーンにはいいのがなくて、これになりました。
二人とも、いい表情なのですが、オースティンの描くエリザベスとダーシーでは、ないですね。
この二人で撮るなら、なんかもっと別の恋物語にした方が、よかったんじゃないんでしょうか。

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12 コメント

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TBありがとうございました (ミチ)
2006-01-19 09:25:57
はじめまして♪

私も原作のファンです。

コリンのはまり役であるというテレビドラマのDVDを購入しました!

本日届く手はずになっています(笑)

きっとステキなんでしょうね~。

ワクワク!

映画のダーシーも悪くなかったのですが、私の脳内イメージがすでにコリンになっているので、どうしてもね・・・。
返信する
ようこそ (郎女)
2006-01-19 16:16:06
おこしくださいました。

こちらこそ、ありがとうございます。



ぜひ、ご覧になってみてください。

もっとも、あれを先に見ないで映画を見た方が、よかったような気がします(笑)

もう、ダーシーはコリンと、わかちがたく結びついてしまいまして。
返信する
BBC版 (lyca)
2006-01-20 22:26:26
はじめまして。TBありがとうございました。BBC版はすばらしいですよね。原作のイメージをしっかり伝えてくれただけでなく、読み逃していたところをいっぱい気づかせてくれました。例の水あびのシーンなど、原作にないところもいいですねえ。昔、BSでやっているのをビデオにとって、画像がわるくなってるのにもめげず、何度も見ていたら、友達が見かねたのかDVDをくれました おかげできれいな画像でコリンのダーシーがおがめます(笑) たしかにキーラは嵐が丘のほうが似合いそう。
返信する
lycaさま コメント (郎女)
2006-01-21 00:34:24
ありがとうございます。

書いておられたこと、特に夜中のレディ・キャサリン訪問などには、私も茫然としました。

あそこらあたりから、かなり嫌気がさしまして……、おっしゃるところの、盛り上げるためのあざとさ、なんですよねえ。

なんか、詳しく書く気をなくしておりましたところ、的確に、詳しく分析しておられて、思わずTBさせていただきました。



そうでした! BBC版のよさ、というのは、原作にはなかったダーシーの側の心理描写が、上手かったことでしたよね。

コリンの演技だけでなく、演出もよかったんです。

ただいま、私のDVDは、友人に長期貸し出し中でして(笑)

お勧めの『いつか晴れた日に』、これから見てみようと思います

返信する
はじめまして (悠雅)
2006-01-21 10:56:28
郎女さん、はじめまして。

悠雅と申します。

仰ることにいちいち納得したものですから、

思わずコメントしてしまいました。



わたしもBBC版を観たひとりですが、

>貴族的な尊大さ、というよりも、若さゆえの内気



まさに、わたしが言いたかったのはそれ!!でした。

コリンは、堂々と目線を上げて、磁器のように硬質な尊大さを見せたのですが、

マシューは伏目がちで遠慮深く、ウールのようなソフトさを感じてしまいました。

これでは主題が違うんじゃないか、と感じたのです。

巧い俳優さんだとは思ったんですが…

良くも悪くも、21世紀の『高慢と偏見』だと思いました。



よくお邪魔するミチさんもこちらでコメントされていて、

「ああ、ミチさん、やっぱりDVD買われたのね」と

ここで確認させてもらいまいした(笑)



長々とお邪魔しましたm(__)m
返信する
悠雅さま ようこそ (郎女)
2006-01-21 14:01:21
TBありがとうございました。



書いておられるように、主人公二人が、21世紀の恋人たち、なんですよねえ。

でも、だったらなんでオースティンの原作で映画を作るのかと、私などは思ってしまっちゃいまして。



マシューは、それなりに魅力的だったのですが、ダーシー卿じゃない、と。

『嵐が丘』ならキーラはいいんですが、マシューはヒースクリーフでもなさそうですよね(笑)



映画のスピード感は、けっして悪くはなかったんです。同じような時代で、もっと別のストーリーがなかったものなんでしょうか。古典ではなく、現代の作家が過去を描いたような原作だと、私もしっくり見ることができたのだと思っているところです。
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納得です! (ちこ)
2006-01-21 20:03:28
郎女さん、はじめまして。

TBありがとうございました♪



そうなんですよね。

私もコリン・ファースのダーシーが強烈に

心に刻まれてしまっているので、やっぱりちょっと

違和感が拭えないんですねぇ。

私はキーラが大好きですが、野性的・戦闘的という

表現、すごく納得です!確かに(笑)

この作品も決して嫌いではないけれど、別物のお話

だったら良かったのになぁとつくづく思います。



こちらもTBさせていただきました~。
返信する
ちこさま ご訪問 (郎女)
2006-01-21 23:29:39
ありがとうございます。



主役の二人をのぞけば、キャスティングはBBC版にまさったかもしれないところ、マシューもいい役者さんだけど、ただ……といったところ、書いておられたことに、同感でした。

ほんと、別の映画で出会いたかったですよね。マシュー。



いや、ぜひ、旦那さまに言って差し上げてください。「容姿と性格のいい男、かしこい女が幸せになる話」だと。「男は容姿」が私のこの幕末ブログのテーマです(笑)
返信する
TBありがとうございました。 (foo)
2006-01-21 23:38:12
キーラはほんと、キャサリンが似合うでしょうね。

たけくらべの美登利とか(笑)

エリザベスはもうちょっと理知的で、でも可愛いほうが合うかもしれませんね。それと品も必要だし・・
返信する
fooさま はじめまして (郎女)
2006-01-22 00:14:38
コメント、ありがとうございます。

写真がいっぱいのステキな記事で、内容もきちんとまとめておられて、TBしていただいて嬉しゅうございます。



映画の演出も、ちょっと『嵐が丘』のようだった気がするんです。キャサリンのようなー、と思いつつ、見てしまいまして。

キーラは私も大好きなんですけど、どうも、でした。

パイレーツの続編に出ているんでしょうか? 知らないんですけど、出ていると信じて、楽しみにしているところです。
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